新婚DJの院内放送 ~夢のデザートは出会いの地で

第63話 お経のリクエスト?!

大宮たまきのエッセイ 御経のリクエスト

1992年12月某日 函館市の梅小路病院にて


 私の故郷・函館市に里帰りして、小太郎こと夫・太郎君の叔父(大太郎先生)が院長を務める梅小路病院で、久しぶりに私たちの放送をすることになった。

 中学生の太郎君がDJデビューした記念すべき場所。

 そして同時に、私たち夫婦の出会えた場所。

 すでに楽隠居されている梅小路大先生も、子育てが一段落して、看護師として職場復帰した叔母の梅小路はなさん(夫である大宮太郎の母の妹にあたります)も、この「番組」を楽しみにしていた。


 私の壁新聞「うみの新聞(私が不定期で作って、あちこちに配っていたミニコミ新聞です)」の効果もあってか、リクエストもいくらか来ていた。

 その中に、かなり異質なシロモノがあった。


 先日、太郎君とたまきさん御夫妻より送っていただいた音源の中に、今年のドラフト会議の中継の光景がありましたね。そうそう、「うみの新聞」で紹介された記事、面白かったです。O大学の某サークル展示会場で起きたと言われる「御経事件」のてん末をぜひとも、皆さんにお聞かせください。

 これは、年忘れにはまたとない、素晴らしい爆笑ネタではないかと思われます。


 誰だぁ? こんなリクエストをよこしたのは・・・。


 よくよく見ると、大太郎さんこと梅小路太郎先生のリクエストだそうで。

 しっかし、太郎君の周りには、どうして、こうも変なシロモノをありがたがる男性ばかり集まるのかしら。

 ともあれ、久しぶりの函館での放送開始。


「皆さんこんにちは。お久しぶりです。岡山市の××ラジオから故郷函館に戻ってまいりました、大宮たまきと・・・大宮太郎です」

と、私たちが挨拶。


 実は、結婚後に大宮姓で「仕事」したのは、これが初めてだった。待合室は、地元マスコミと、私と太郎君の家族や友人たちも何人か集まっていて、この時点で、すでに拍手が沸き起こる。中には、口笛を吹いて冷やかす「視聴者」も。

「さて、本当にお久しぶりの、こちら梅小路病院での放送ですけど、今日はまた、色々なリクエストを頂けて、本当に、ありがたいです。ぼくが中学生の時、大先生と作ったリクエスト箱も復活して、うれしい限りです。皆さん、ホンマ、おおきに」

「太郎君、今日は面白いリクエストが届いていますよ」

「どんなんや?」

「御経のリクエストです。こんなの、この仕事についてから一度もなかったですね」

「あるわけないやないか、んなもん。誰や、こんなリクエスト寄越したんは」

「あなたの親戚じゃないの」

「畏れ多くも、梅小路病院の院長であらせられる、大太郎先生こと梅小路太郎大先生かいな。はあ、せやった、えらい、スンマヘン」


 太郎君、今日はどういうわけか関西弁が交じる。


「これはですね、その、何と申しましょうか、たまきちゃんとぼくが仕事でO大学の大学祭に行って、その時たまたま取材できた光景です」


 実際は、マニア氏から情報を得ていたのだけど、そういうことに。

 話はいよいよ、本題に。

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