第45話 この(これら)の夢って、結局・・・?
ぼくの話を、たまきちゃんはかなり興味深そうに聞いていたようだ。
あえてそう言うのは、いくら中学生のときからお互い知っている仲でしかも夫婦であると言っても、目の前に相手がいるわけじゃないから、そう述べているまで。
「結局、この夢って、というか、これらの夢って、何なのかしらね?」
彼女の問いに、ぼくは即答できるだけの自信はなくなっていた。
少し考えて、やっと、こんなことを言うのが精一杯だった。
そうだね、これは言うなら、「異床同夢」と「異床異夢」の間にあるような夢ってことになるかもしれない。
夫婦とはいえ別人が、同じ構図の夢をそれぞれの場所で見せられる。
その意味では、異床異夢といえる。
しかし、個々の夢については、対象となる人物は同じでも、内容はまったく違う。
その意味では、異床異夢ではあるけれども、異床同夢の要素が高い。
もっとも、確かにぼくらは別の場所で寝ていたかもしれないが、夫婦という意味では、単に物理的な位置という意味ではなく、夫婦というつながりをベースに考えてみれば、同じ方向に向かって歩いている「同志」、これ、何だかあのマニア君あたりには、阿呆主義者の戯言とか言われそうだけど、社会主義者や共産主義者の良く使う言葉だよね、この「同志」って言葉。
そういう言葉でくくれる関係性を持った者同士であることには違いないわけで、まあ、今となってはこんな奴はイヤと言われてもしょうがないとは思うけど、それはさておき、先に述べた通りの仮定を適用するならば、別の場所で寝ていても、「同床」と解釈することも可能ではある。これは屁理屈とまでは言えないだろうし、実態からかけ離れているとまでも言えまい。あくまで、物理的な距離があるだけのことだ。
となってくれば、これは、「同床同夢」の範疇に入ると言える余地も出てくる。
さらに言うと、別の内容であるとの趣旨を入れれば、元通りの「同床異夢」であるという解釈をする余地もないわけじゃないでしょう。
結局のところ、この夢の本質は何なのかは今一つわからないままではあるけど、別の場所で違った構図の夢を見たというところで、「異床異夢」というのが実態に合うかなと、ぼくは考えるけど、どうだろう?
「表面的には確かに、「異床異夢」だと思うわね、私も・・・」
たまきちゃんは、そんな答をよこしてきた。
そろそろ、お互いの仕事の準備をしないといけない。
ここで電話を切ることにした。
この後ぼくらは、それぞれこの日の身支度を始めた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます