第27話 犯人は、君じゃないのか?

 ところで、そのような夢を大宮さんご夫妻に見せた一番の犯人、それこそ君あたりの言葉で言うところの「A級戦犯」は・・・、米ちゃん、君以外の誰でもないのではないか? あ、もちろん、これはいわゆる「刑事犯」としての「被疑者」ってわけでないことは言うまでもないが、ある意味、君も罪づくりな奴だな・・・。


 賀来氏のその弁に、米河氏はさして表情を変えるでもなく、答える。


「まあ、それはわしも、わかっとる。あの人たちにとって、中学生のころから当時に至るまでの約10年弱ってことになるけど、どちらにとっても、特にたまきさんのほうがその傾向は強いと思われるが、わしの言動ってのは、良くも悪くも、影響を与えてきたのかな、と。これが、わしなりの総括やけど・・・」

「ということは、それ、「犯人」の「自白」ってことで、いいのか?」

「まあ、そういうことになるわな。日本国の刑事法にこんな行為を罰する規定はどこにもないけど、そういう問題じゃ、なくて、ね(苦笑)」

「とはいえ、君の存在は、大宮さんご夫妻、太郎さんにとってもたまきさんにとっても、それぞれの人生に、大きな影響を与えているのは、確かじゃないか?」


 残っていた黒い液体を飲み干し、チェイサーの水を少しすすって、米河氏は、答えた。先の質問の回答が得られるまでの時間は、物理的にはさほどのものでもなかったが、両人にとっては、いささか長いと思うに余りあるものがあったようである。


「それは、認める。もっともそれは、私にとっても、あのお二人それぞれの存在は、決して小さいものでは、ないけど、な」



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