同床同夢 ~ それぞれの、その後

第24話 同級生の再会

2022年4月10日(日)16時50分頃 岡山駅前のGホテル1階ラウンジにて


 養護施設よつ葉園の元入所児童である米河清治氏は、そのよつ葉園があった地の小学校の同級生で✕✕省の幹部を経て国会議員へと転身して間もない賀来博史氏と、数か月ぶりに岡山駅前のホテルのラウンジで再会した。


「米河さん、お久しぶり、と言っても、約半年かそこらか・・・」

「まあ、そういうことになりますな。賀来さん、何とかやれてる?」

「やってるよ。まあ、慣れや、これも。しっかし、米ちゃん、いろいろな意味で懲りている形跡が見えんなぁ・・・(苦笑)」

「何をもってそんなことを言うねん。簡単に懲りてりゃ、文筆業は務まらへんで」

「それもそうだな。で、何だ、君は、夢のエッセイなんか、よくまあ、書き倒せると来たものだ。こちとら、疲れて寝る日が多いせいか、それどころじゃないぜ」

「まあな、賀来ちゃん、あんたはそりゃ忙しい人やから、そうやろ。でも、まったく見てないってことも、ないとは思うけどな」

「だけど、いちいち、夢なんか覚えてられるかよ・・・」

「そうそう、天下の東大卒の貴殿ならご存知と思うが、「同床異夢」ってことわざ、ご存知よな」

「なんか、O大卒のコンプレックスみたいな言い方しているけど、それはまあ、米ちゃんのいつものギャグのようなものだからいいとして、そりゃ、もちろん知っているって。そんなもん、うちの業界ではどこでもそんなものだぞ。もう、実感ありますとかないですとかのレベルを通り超えて、それが常態やでぇ~」

「だろうね。で、さすがの貴殿でも、「同床同夢」なんて言葉は、知るまい」

「知っているわけ、ないだろう。わけのわからん作家大先生の頭の中まで、何が悲しくて分析なんかせにゃならんのだ」

「ええわ、別に分析していただかなくても。賀来閣下におかれては、どうぞ天下国家のお仕事をなさっていただければと存じまする」

「アホ作家に言われんでも、やっとるわい(苦笑)!」

「そりゃわかっとる(苦笑)。それはともあれ、これ、いや、マジでそういうことが起きたとしたら、すごいことかもしれんで。同じ場所で、同じ夢を観るなんてこと、起きたら、な・・・」

「あ、ごめん、ちょっと何か連絡入ったみたいでな。スマホを確認する」


 ここで、賀来氏はスマホで用件を確認し、それを処理した。

 そのついでに、スマホに入ってきたニュースを見て、思わず声をあげる。


「おい、米ちゃん、すごいことが起こったで!」

「何? 何が起きた?」

「あのな、ロッテのほら、佐々木君って投手、おるやろ、あの青年、なんか、完全試合をやったらしいぞ!」

「え?! どういうこっちゃ! それ、いつぞやの槙原投手以来やないか」

「そうだな。しかし、びっくりやな。まだ二十歳になって間もないやろ、彼」

「そうや。そのくらいの年齢で完全試合したのは、大洋の島田源太郎さん以来や」


 しばらく野球の話が続いたところで、賀来氏が話を戻した。

「で、米河大先生、貴殿は、「同床同夢」なんてまた、わけのわからんエッセイをお書きになっておられるが、ありゃあ、何なら?」

 滅多に岡山弁を出さない賀来氏だが、思わず岡山弁の語尾を入れて話しかけた。

「あ、あれ、わしの周りで起こった実話ね、ほどんど(苦笑)」

「そうだったのか。ちょっと、その話の裏話、聞かせてよ」

「ええで。ほな、少し話そう。あんた、時間は大丈夫か?」

「まだ大丈夫。東京まで3時間もあれば今日中に着くから。しばしお付合い願う」

「おっしゃ。ほな、いくでぇ~」


 米河氏は、その夢のことを話し始めた。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る