第17話 効率重視・情緒排除の人間故の反動

 かつての国鉄こと日本国有鉄道およびその前身の鉄道省時代も含め、昔の車両というのは、もちろん例外もありましたけど、存外、長持ちするものです。

 ただし、新幹線のような長距離を最速で突っ走るようなものは、別。


 さて、昭和40年に制定された大蔵省の政令によれば、鉄道車両、特に電車の減価償却期間は13年とされております。

 もっとも、それは13年で買換えろということを意味するわけではなく、持たせようと思えば持たせられるし、リニューアルなどすれば、それでまた減価償却が始まるわけで、そこはまた、話が少しばかり変わってきますけどね。とはいえ、本体自体がそれ以上維持されているというのは、それだけでも奇跡というもの。


 現在の381系電車は、登場から今年で40年。そう、あの気動車「やくも」が走っていたのは、もう、40年以上前ってことになるのです。

 あの181系気動車にしても、現在の381系電車にしても、しかし、長持ちしております。さすがに181系のほうは、既に全廃されて久しいですが、約10年前まで山陰近辺で走っておりましたからね。あと、播但線の「はまかぜ」にも使われていました。


 さすがに、これ以上リニューアルのような小細工は効かなくなってきましたので、新車置換が迫っているわけでありますが、その新車は、コンセントも各席に備えられ、インターネット接続も全線において可能とのこと。

 今どきね、これないと、仕事にならんからなぁ・・・。


 その反面、列車食堂なんて、今や完全になくなってしまいました。

 それどころか、車内販売さえも、新幹線を除いて廃止する列車が続出。駅やその近くで何なり買っておくれ、ってこと。乗っても最大4時間程度やから、ま、言った先でどうぞ、ってことになりますわな。列車移動中に途中の駅で弁当を買ってとか、そんなこと、まず考えりゃしないし、されてもない。

 

 きょうびは、恐ろしいほど効率が重視される社会になってしまいましたね。


 私にとっては、実はそのほうが普段においてはありがたい。

 昔ながらの手法とか、情緒論や郷愁論を問答無用で排除し、次へ次へと進めていくような手法というか人生を送ってきた人間ですよ。

 だったら、旅情とか、そんなくだらん寝言など排除の一番手に入りかねないところがあろうと思われる人もありましょうが、それは確かに、一面ではあたっています。

 しかし、では自身のことをそれだけで切り捨てつつ進んでいるのかというと、必ずしも、そうじゃない。

 なぜか、昭和の鉄道、あるいはそれ以前の鉄道というものをしっかり研究しておるのですが、それは単なる郷愁ではなく、その当時で最も優れていたものは何かということを突き詰めるべく、研究対象にしているという側面もありますね。


 進歩熱と言いますか、「効率重視」「情緒排除」という姿勢の強い人間であるからこそ、逆に、かつての食堂車を懐かしむというか、そういう「反動」的な何かもまた、それに応じて強いのかなと。

 私自身は、自らをそのように「総括」しております。

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