魔王ロールプレイを辞めた転生者と、秘書ロールプレイを続ける幼馴染み

今日から俺が勇者

第1話 心が痛え→なら心を変えるしかないじゃない

 秘書から報告が上がった。

 我が魔王軍の女幹部が全員離反した、と。

 それも全員が勇者側に寝返るという最悪の形で、と。


 ……そんなのってないじゃん。

 魔王は強ければ良いんじゃないの?

 強さこそがカリスマなんじゃないの?

 カリスマがあればモテるんじゃないの?

 結局女が見てるのは顔なの?


 ……つれえわ。

 もうなんというか心が痛い。

 今まで精一杯虚勢張って魔王ロールをしていたのがバカみたいだ。

 あーあ、おしまいだ。

 バカ女どものせいで全部おしまいだ。

 よく思い出してみればしょうもねえ女どもだった。

 居なくなって寧ろ清々したわ。


 はぁあ、もう魔王やーめた!


 **********


 無駄に豪華な執務室で魔王様が膝から崩れ落ちたと思ったらすぐに立ち上がり、「もう魔王やーめた!」などと言いだした。

 どうせいつもの駄々っ子だと流しそうになったが、幼馴染みとしての勘が強烈な違和感を感じとった。

 そしてその感じとった違和感が正しいことを証明するかのように、魔王様が自らのマントを脱ぎ捨てた。


 コレはマジなやつだ。


 今まで嫌だ嫌だと言いながらずるずると続けてきた魔王業が今まさに終焉を迎えようとしているのだ。

 正式に魔王に着任する以前より、飯を食う時も風呂に入る時もベッドで眠る時も、一度たりとて手離さなかったマントを、己が魔王であるという証明を、そして私達魔族の誇りを、至極あっさりと脱ぎ捨てた魔王様は執務室の床に寝転がった。


「なあ、なにがわるかったんだろーな」


 天井を見詰める魔王様の瞳は黒く濁っており、この問いに何の意味も含みも持たせず、そして返答も望んでいないのだということを理解した。


「魔王様は何も悪くはないのです。国民への施策は上手く進んでおりますし、また貴方自身の強さも翳りは一切なく、寧ろ日を重ねる毎に強大になっているのでございます。故に魔王様、貴方は何も悪くないのです。

 本当に悪いのは私で御座います。あのような輩を魔王軍幹部として推薦した私に全ての責任があるのです。強さのみを基準とするのではなく、容姿の端麗さとの均衡を図った上で幹部を選出すべきだと、寝言を垂れ流した私に全責任があるのです。」


 だが理解した上で私は、秘書ではなく彼の幼馴染みとしての私は、全く感情の載っていない言葉を告げた。

 これで、少しでも彼の気が紛れれば。

 ただそれだけを思って。


 **********


 ……痛えよ。

 良心が痛え。

 今度は幼馴染みにここまで言わせてしまったことに対して悶える。


 だって、君一切悪くないじゃん。

 裏切ったアホ女が全部悪いんじゃん。

 なんなら君の発言を聞いて幹部を美人揃いにした俺の方が悪いまであるよ。

 俺の見る目がなかったのが1番の原因だよ。


 そう反論したいと思ったが、そもそもこの幼馴染みは俺を慰めるためだけに自らを卑下しているのだと分かっているので口をつぐむ。


 天井を見詰めたまま一旦思考を切り替えようと試みる。

 多分今の女々しい気持ちのまま彼女の顔を見たら、魔王の役割も折角作り上げた国も何もかもを全てを投げ出して彼女を攫って故郷に帰ることになるだろうから。

 俺が女々しい男だとしても彼女は着いてきてくれると信じているが、やはり俺も男だ。

 そんな情けなさすぎる姿を見せたくない。

 もう既に手遅れかもしれないが、まだ大丈夫だろうという希望的観測を行う。

 それならばせめて初志貫徹する程度の気概を見せねば!


 全身のバネを用いて立ち上がり、傍に投げ捨てたマントを手に取る。

 そして埃を手で払い除け、バサリと音が鳴るようにマントを羽織る。


「これより我は真の魔王となろう。今までのような生温い魔王ごっこではなく、真に世界を統べる魔王となろう。味方には地獄を、敵にはそれ以上の絶望を。死が唯一の救いとなる世界を作り上げようぞ!

 そして二度とお前が自身を卑下する必要のないような世界を作ると今ここに約束する!!」


 魔王軍幹部最後の女性となった我が最愛の秘書にそう告げた。

































 ……秘書に思い切り頬を叩かれて正気に戻った。




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プロットとかないので適当に書きます。

もちろんストックもないです。

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