るり子、安住の地へ 2
玄関を入ってすぐに左手に小さなシンクがあり、8畳ほどのダイニングと繋がっていた。
ただダイニングとして使っている様子はなく、大きな事務机が3つ向き合って置いてあった。
ホワイトボードには表が書いてある。
何の表だかるり子にはわからなかった。
「るり子さんはこっちのお部屋で休んでください」
事務所みたいになっている部屋の隣に和室があり、王子様が手招いた。
るり子はドキドキしながら和室に入った。
ちょっとカビ臭くて埃っぽい。
でも名古屋の実家よりずっときれいに片づいている。
床の間には『愛はどこにある?愛はここにある。ここは愛ある家』という文字が有名な詩人のような文字で書かれた色紙がたてかけてある。
「これ、みさをの作品?」
るり子もその人のカレンダーを買ったことがある。
その詩を読むと何もない日常にも小さな変化が生まれるような気持ちになった。
悲しい時も苦しい時も、その人の言葉が励ましてくれた。
愛はどこにある?
愛はここにある。
ここは愛ある家。
「あ、それは僕が書きました」
若沢が照れて頭をかいた。
まあ、素敵、とるり子は思った。
名古屋にはなかった愛がここにはあるのね。
「今日は疲れましたね。ゆっくり休んでください」
若沢は出て行った。
ここは王子様の家ではないようだ。
るり子は押し入れから布団を出した。
カビ臭くて埃っぽい布団に包まると、るり子はなんだか愛に包まれているような気持ちになった。
成り行きでここまで来てしまったけれど、明日はまた来るのかもしれないわ、とるり子は思った。
もう名古屋には戻れない。
いつ明日がなくなるかわからない。
でも、明日がある限りるり子は生きてみようと目を閉じた。
ヘルパーるり子は今日も駆けつけます! 村山レオ @kiri
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
フォローしてこの作品の続きを読もう
ユーザー登録すれば作品や作者をフォローして、更新や新作情報を受け取れます。ヘルパーるり子は今日も駆けつけます!の最新話を見逃さないよう今すぐカクヨムにユーザー登録しましょう。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
関連小説
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます