第7話 地獄の健康診断

健康診断当日。

彼女との約束の日だ。

さて、どうしたものかな。

注射なんて見たら間違いなく泣くぞ。

どうすればいいんだ.......

って言うか、彼女が居なければ、

別に泣いてもばれないんじゃないか?

まあ、その時に考えよう。

とりあえず部屋を出ると、

たくさんの子供を連れた大人がたくさんいた。

子供の表情は、今にも泣きそうだった。

さて、肝心の彼女はいるのかな?

あれ?居ないぞ?

と言うことは、あまり泣いてもばれないんじゃないか?

善は急げだ。早く診察をするぞ。

「えー、では、診察番号一番の方。」

アナウンスをして、診療室へ向かった。

「では、注射の方をしていきます。

 右手を出してください。」

そういって右手を出してもらい、袖をまくった。アルコール付きのティッシュで拭き、

注射を構えた。

「すぐ終わりますからね。

 痛くないですから、口をしっかり閉めて、

 大声を出さないように。」

その事を告げると、涙目でこっちにうなずいた。

「いきますよ。」

注射を打った。すると、

「いっ、イギャーーーーーー!!!!」

鼓膜が破れそうなほど大声を出した。

「大丈夫です。もう終わりました。」

疲れきったようにぐったりしていた。

まずいな。さすがに聞こえたんじゃないか?

子供を送りながら、待合室へ向かった。

けど、そこには彼女は居なかった。

もしかして来ないんじゃないか?

じゃあ後は、心を鬼にして早く片付けるだけだ。

「次の方~」

同じことを何度も繰り返し、

「ギッ、ギャーーーーー!!!!」

「アッ、アギャーーーー!!!!」

録音されたテープのように、

同じように悲鳴が木霊する。

それでも、彼女は居なかった。

時間がたち、地獄の健康診断は終わった。

結局彼女は来なかったし、

これで大丈夫だろう。

外の空気を吸いに外へ出た。

深呼吸をしていると、誰かが蹲っていた。

いったい誰だろう?尋ねて見た。

「お腹でも痛いのですか?」

よく見ると泣いていた。

「どうしたんですか?

 とても痛いのですか?」

ふと思うと、見覚えのある方だった。

まさか.......

「櫛鉈さん.......」

櫛鉈さんだった。もしかしてここで

聞いていた?

「叫びが聞こえていましたか?」

泣きながら彼女が頷いた。

「なんで、嘘をついたんですか?」

泣きながら彼女は言った。

参ったな、どうすればいいんだ?

「それは本当にすまないと思っている。」

「あなたにはもうすぐ裁きが下されると

 願っています。」

「そうだね。僕はこれまで多くの子供の

 嘆きを聞き捨ててきた。

 それが僕の罪だ。いつかは裁かれる。」

「あなたにとって現実とは何ですか?」

意味深なことを聞いてきた。

目は真面目だ。真剣に答えよう。

「僕は、今この事起きていることだと

 思います。」

「そうですか。私の意見は違います。

 私は、現実とは過去だと思います。」

「過去ですか?それだと現実とは

 言えないんじゃ?」

「今こうして聞こえる言葉は、

 今より前にあなたが言い、それが耳へ

 伝わり、耳から脳へきています。

 その頃には、その時間は過ぎています。

 ですから、現実とは過去だと思います。」

なるほど、確かにそうだな。

今のこの景色も、僕が以前に見た景色で

あって、その景色が今みている.......

うーん。考えていると果てしないなぁ。

「それが、どうかしたの?」

「あなたは、もうすぐ考えてもなかった

 過去の罪の裁きが下ります。」

「それは予言かい?」

「いえ、宣言です。」

冷や汗が出てきた。

なんで、こんな年下に圧倒されるのか、

分からなかった。

「あなたは、近いうちに裁きが下ります。

 それまでお元気で。」

そして、彼女は去った。

フゥー。

ため息を立ててしゃがんだ。

まるで死刑宣告みたいだった。

いい思い出作っておけということか。

明日は、この村を、ぶらりと回っておくか。

そのまま部屋へ戻り、僕は寝た。

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罪と罪 事件編 りんご @110ringo

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