多分、駄文。
@hiramon_0218
第1話 平野の憂鬱編
「おい! 平野、頑張れよ!!」
帰りのホームルームが終わった瞬間、クラス中に響くコールのせいで、私はすっかり顔面蒼白となっていた。
私がLINEで桃子と連絡を取り始めたのは六月の頭からだった。高校に入って二か月が経ち、何となく高校生活に慣れ始めた時期だった。そんな時期に行われたのが宿泊防災訓練である。
この防災訓練は、放水活動や炊き出しなどの様々な訓練を行いつつ、学校に一泊するというものだ。
この訓練の意義は、防災意識を高めるため、というところにある。しかし、今思えばクラスメイトと仲良くなるため、という側面もあったのだろう。
また、この防災訓練はリアリティを持たせるためにスマホは使用禁止となっていた。そのために今の内に楽しんでおこうと、私と長谷川は「SNOW」を使ってアホなことをしていた。
今はもう喜んで使っている人間などいない加工アプリのSNOWであるが、当時の私達からすると画期的な発明品だった。
私達は変なフィルターをかけながら先生を盗み撮りしたり、お互いをモノクロに加工したりして楽しんでいた。そんな中、突然スマホにSNOWから通知が来た。
「MOMOKOさんから友達追加されました」
いきなりのことで少し驚き、思わず桃子を探してしまった。騒がしい教室の中で一人ポツンと座っていた彼女は、こちらを気にすることなくスマホをいじっている。
恐らく、教室内でアホみたいに騒いでいる私達を見て「あー、そういえばLINEであいつのこと、友達追加してなかったな」くらいの気持ちで友達追加したのだろう。
しかし、私は日ノ本一のチョロい男である。前々から意識していた桃子から友達追加されたことで「もしかしたらイケるのでは……?」と思ってしまったのである。
が、私の置かれている現状は、お世辞にも上手くいっていると言えるものではなかった。
というのもそれは、私がおめでたい人間であり、高校生活とは輝かしく素晴らしいものだ、と絶大なる期待を寄せていたことが原因であった。
アホな私は高校生になりさえすれば、すぐに彼女ができるものだと考えていた。彼女のいる毎日というのは手を繋いで一緒に登下校をしたり、屋上でお弁当を食べたりする最高に楽しいものだ、と勝手に夢想していた。
しかし、よく考えてみると、そんなバカップルみたいなことはとてもじゃないが、恥ずかしくてできないし、高校の屋上はプールだった。
というか、大前提として今まで碌にモテたことのないただの芋臭い男が、高校に入っただけで、急に彼女を作れるはずもないのである。
不都合な事実から目を逸らしているうちに、私は「彼女ができないのはふさわしい女の子が俺の周りにいないからだ」と開き直ってしまっていた。
そんな上から目線の考えが態度に出ていたようで、私は初っ端から活発的な女子の一グループから目を付けられてしまっていた。
このように私は自業自得とはいえ、彼女を作ることが容易ならざる状況に置かれていた。
しかし、そんな中でも私は色白で物静かに笑う桃子に恋してしまった。
重めのぱっつん前髪に、編み込みを入れた濡れ羽色のロブヘア。それに加えてパッチリした瞳、少しぷっくりした頬が可愛らしかった。白のセーターがよく似合うほんわかした雰囲気の桃子は、私のタイプにドストライクであった。
そんな女の子からアプローチ(?)を受けて、居ても立っても居られなくなった私は、防災訓練の翌日に早速、適当な口実をつけてLINEを送っていた。
多分、駄文。 @hiramon_0218
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