第7話

カラン、カラン、、カラン、、カラン、、


宿で借りた下駄の音が会話のない二人に代わって、会話している。


カラン、、カラン。


私が止まれば、彼も止まる。


「謙虚なのか大胆なのか、姿丸見えのストーカーですね」

振り返り私は彼に言った。

「・・・」

何も返答がない。暗闇で顔も見えない。

私は少し歩き、また立ち止まった。

彼もまた同じ動きをした。


街灯の灯りで顔が見えた。


「、、なんか返してよ、、」

「、、上手い返しが思いつかない、、」

「上手くなくてもいいの!何か言ってよ!」

「“なんか”、、」


彼はこうゆう屁理屈的な一面がある。

基本、愛おしい気持ちはあるが、たまにイラッと本気でする。


そして、いつも我慢比べは私が負ける。


「何でここに?いや、違うわ、、


、、何で私に出張行かせたの?」


「・・・」


「自分の代わりに私を推薦したか、、したんでしょ?なんで?」


「出来ると思ったし、、」


その後、何か言いそうだったが間に耐えられず話し出してしまった。



「、、出来るって思ってくれたんだ、、」


あ、ヤバい。


「そりゃ思ってるよ‼︎俺よりも社交的なのは◯◯さんだし、話し方も例えだって分かりやすいし、優しいし、親切だし、気が利くし‼︎」


「フフ、、なんか、プレゼンとは関係ない事まで展開してるよ、、笑、、、でも、ありがとう、、

でも、、ごめんね。期待に応えられんで、、」


あぁ、、、限界だ。

声に出してしまったら止められなくなってしまった。


「いや!ごめん‼︎俺が悪い。俺が全部悪いから泣かないで」

困らせてしまうのは分かってた。


「、、ごめん、、アラフォー直近の涙は見苦しいね、、」

止まれ!と思うほど、涙は止まらない。



「見苦しくなんかない。」

視界が暗くなった。



「こうゆう事、、出来る人なんだ、、、」

「、、◯◯さんだから。」


言葉はぶっきらな言い方だけど、優しいハグ。


温かく大きな彼の体からは、言い方のぶっきらとは正反対なくらい優しかった。


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策士か。計算か。天然か。 @koButa87

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