第6話

「・・こんばんわ」

「えっ・・あぁ、、こんばんは」


夜の挨拶に戸惑いながらも返してくれた。

最近はタメ口が多かったから、久々の敬語に戸惑い、怒ってるのかなと思い、様子伺いの“こんばんわ”


「、、お疲れ様でした」

軽く会釈して、彼の横を通過し、宿に足を踏み入れた。


「えっ、、⁈」


驚いている声を無視して、スタスタとフロントに行き、ルームキーを受け取るとさっきよりも更にスタスタと部屋へ向かった。


物語の世界ならここで私の腕を掴み、、となるところだが、彼はそんな大胆な事はしない。


私は何事もなかったように部屋に入り、鍵をかけた。


、、普通、、に出来たよね、、


部屋で緑茶を一杯。

ふぅ、と一息吐いて、目を瞑った。

、、“大丈夫、普通に出来た”、、


浴衣に着替え、大浴場に向かった。


出張先で泊まる場所が温泉宿って、

すごい会社だなー、、

意図的に彼の事を考えないよう、、

考えないよう、、頑張って温泉を満喫した。


温泉に浸かってる時は好きだが、汗がうまく出ない私は体温調節がヘタで、いつまでも暑い。

出た後の温泉は嫌いだ。


真っ赤な顔のまま、のれんをくぐると同じ浴衣を来た彼が立っていた。


「真っ赤っかじゃん!」

彼は笑った。


「温泉入ったばっかなんし、当たり前じゃんか!」

私は夜風に当たりたくて、宿の外に出た。

彼は無言で後ろをついてきた。


横には並ばず、一歩後ろに。

無言のまま歩いた。

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