『入道雲はどこまで』





 毎朝お母さんはニュースを見ている。わたしはニュースなんて興味ないわ。なにやら難しい話をしているらしいけれどわたしには全く関係ないもの。

 わたしは学校のある日、いつも決まって七時に起きるの、そして絶対に五十五分にはお家を出るのがわたしの日課。八時に出ても朝のホームルームには間に合うのだけれど、五分早く出るとお友達のマリちゃんがお家の近くを通るの、わたしはマリちゃんとお話しするのが大好きなのです。だから絶対に五十五分。

 その五分前の更に五分前、ニュースでは誰が決めたかもわからない占いというやつをやっているわ。お母さんはいつもそれを楽しそうに見ている。

「…一位は乙女座です!今日は小さな幸せが多い日でしょう!残念最下位は水瓶座です、人間関係で衝突する事も。ラッキーアイテムは青色のストール…」

「あら、あんた今日最下位らしいよ。青色のストールでも持ってく?」

 お母さんが意地悪顔でにやにやとこちらを見てくる。

「そんなものいらないわ!わたし占いなんて信じないもの。ばっかみたい。」

 そう、わたしは占いなんて信じない。そんなくだらない事で一喜一憂できないわ。なんでみんな占いなんて信じるのかしら。

「いいの、青色のスカーフなんて無くても。だって今日の天気は晴れだもの。お空さんがご機嫌な日は決まって良いことしか起きないの。お母さんもいい加減占いなんて信じるのやめなよ。」

 わたしはそうお母さんに言い放ち、そうこうしているうちにテレビの左上に書いてある時間が五十四分になっていた。

「わたしもう行かなくちゃ、マリちゃんが来ちゃう。行ってきます!」

「はいはい気をつけていってらっしゃい。」

 そうしてわたしは勢いよく玄関のドアを開け、眩しい太陽さんの光が瞳孔を茶色に照らした。

「何がいい加減占いを信じるなよ。あんたのお空さん事情の方がよっぽどおかしい事言ってるわよ。」

 独り言のように呟きながら、確かに今日はいい天気だなと、ただぼーっと窓越しに空を仰いだ。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

短編 ナノナイヒト @tamaki_kouichi

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

フォローしてこの作品の続きを読もう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ