第3話 さて舞台は

 大河ユニガットの恩恵に恵まれた、王都ガデリウムを要すレントル王国は北は神在す山脈ローデウム、南に大平原ニルダム、東に龍河ユニガット、西に大漠海ワルルブに囲まれている。

 龍河ユニガットをレントル中興の祖、マルニト1世が長き150年も続いた治水工事の完成させ、その龍の息吹を留めることに成功したことにより、国は富み急激な発展を遂げる。

 ユニガットを介した東側の都市国家群との貿易の安定、西側諸国の陸路での交易により現在世界でも有数の大国になった。

 レントル王国は歴史も古く、遠く昔、開闢の5祖国の1国でもあると神話に記されていた。東にユニガット、西に大瀑海ワルルブがあることにより、外敵の侵略にあうことはなかった。

 だが大漠海があるとはいえ、巨大なロートギア大陸の4分の1ほどを国土にいる事と7つの民族が連なる事情でレントル王国は内乱が絶えなかった。

 

 その戦乱は実に約80年続いた。ただその戦乱は軍をより強固でより柔軟な軍団に創り変えた。

 先王ガラ3世は断鉄王と呼ばれ、内乱を次々収めていく、その名の通り、鉄を断つが如く。

 その二つ名にはもう一つの意味があり、ローデウム山脈を形成するグラム山より取れ鉄鋼石によりガラは製鉄技術に力を入れ、その成果による兵器製造を強兵とともに推し進めた。

 それにより世界有数の軍事国家となったレントル王国は各騎士団に個性的な装備を与え、強靭な軍団の完成に至った。

 その装備の最たる物が超大型高速砂漠用軍船レントオアルスである。レントオアルスの竣工により、大漠海ワルルブを越えての大規模派兵が可能になった。これまで砂漠を越えるのに砂漠船団を形成し渡海するのに数十日要していたのが一気にこれまでの5倍の量の派兵を1日で行えることが出来るようになったのだ。軍はレントオアルスにより、派兵され、迅速に各地を制圧していった。

 それにより10年前の青銅記568年に約80年に及ぶ暴風は終わりを告げ、ロートギア大陸は春風に包まれた。

 他の3大陸は小競り合いはあったものの、レントルのよう強大の国家により均衡が保たれていたり、都市国家間が連合を組み、大国と拮抗状態を生み出したり、仏の名の元治められていたり、大規模な戦争は起こっていなかった。

 そして青銅記578年。皇太子ルーデンスが17歳を迎えることになり、レントル王国はこれまで戦時により長らく絶えていた成人の儀を行うことにした。

 もちろん成人に儀とは表向きで皇太子ルーデンスの成人は祝うことで、招待国に国威を示し、友好度を測り、今後の戦略に組み込んでいく、外交的側面の方が大きかった。

 招待各国も世界有数の軍事国家に取り入ることで、都市国家は日頃から常に脅かされる侵略の忌避に、ある国は貿易路の承認により自国権益増大など、成人を言祝ぐなど行う側、呼ばれる側ともにそれほど重要な事ではなかった。それよりも他国にとっては次期王の見極め、その王の知己になることなど、ある意味今後の自国の立場を決定づける静かな戦争と捉えてもいいぐらいだった。


 そんな事情の中の良く晴れた日にそれは起こったのだった。

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