宝石の舞うパーティー
シャルローゼさんに霊魂珠を使った空間固定魔法について話した。彼女曰く
「おー! それは便利ですね! 宝石を飛ばしたら綺麗になりそうです! ダイヤモンドダストみたいに!」
とのこと。興味を持ってくれてよかった。
「クリスマスパーティーの時はそんな風に飾りつけしようか?」
「いいですね! ……暁家には宝石が沢山あったり?」
「まさか。家は一般家庭だからなあ……。精々、プラスチック製の宝石くらいしか用意できないかな。シャルローゼさんの家にはダイヤとかゴロゴロあったり?」
「ゴロゴロとはないですね。昔の王族じゃないですから。でも、お祖父ちゃんが色々な宝石を集めていたので、そこそこの量があると思います」
「すっげーー! うーん、姉さんに言えば、人工ダイヤモンドを作ってくれたりするかな?」
ダイヤモンドの結晶を合成する装置がある事にはあるはずだ。実際、工業用の砥石などには人工ダイヤモンドが使われている……と姉さんが言っていた。とは言え、大きなサイズのダイヤモンドを人工的に作る事って出来るのだろうか?
「暁君のお姉さん、大きな大学に通ってますものね。もしかしたら、ダイヤモンド合成装置も持っているかもですね!」
「ありそう、ありそう。とは言え、あってもカット出来ないから、綺麗な宝石にはならないか?」
ブリリアントカットだっけか? なんかそんな感じの名前の形に切られて初めてダイヤモンドはその美しさを発揮する。
「それは『変形の魔法』を使えば何とかなりそうじゃないです? ダイヤモンドがいくら硬いと言っても、魔法の効果の方が勝つと思います」
「確かに! じゃあ、人工ダイヤモンドを量産すれば、クリスマスパーティーの飾りつけもばっちりじゃん! 早速、姉さんに頼んでみるよ!」
「出来るって返事が来るといいですね!」
〔カズヤ〕
姉さんの研究室に、人工ダイヤモンドの合成装置ってある?クリスマスパーティーの飾りにしたいんだ!形は魔法使っていい感じにするつもりだから、いびつな形でも大丈夫なんだけど 10:30
既読
〔ケイコ〕
それだったら、最初から魔法でダイヤモンドを合成すりゃいいんじゃないか?黒鉛とダイヤモンドの熱化学方程式は
黒鉛=ダイヤモンド-2kJ
だ。つまり、12gのダイヤモンドを合成するのに必要なエネルギーは500カロリーくらいだ。魔法で水を沸騰させることと比べても遥かに小さな値だ。
だから魔法を使えばダイヤモンドを簡単に合成できると思うぞ。早速私の方で試してみるよ 11:13
〔ケイコ〕
<写真>
出来てしまったよ。イメージを固めるのが難しかったけどダイヤモンドと黒鉛の結晶構造を意識すれば、黒煙をダイヤモンドに変える事が出来たよ。魔法ってすごいな……。
14:57
〔カズヤ〕
なるほど。そんなことも出来ちゃうのか。魔法ってある意味恐ろしいな…… 15:13
既読
「だそうだ」
シャルローゼさんと途中で会話に加わった紗也に姉さんから届いたメッセージを見せる。写真には直径1cmほどの大きさのダイヤモンドの写真が写っている。かなり大きいな……。父さんと母さんの婚約指輪を見せてもらったことがあるが、直径は精々5mmほどだったと思う。
「おっきいわね! 売り出せば、大金持ちじゃない?! いや、そんなずるい商売はしないけど」
「かなりの大きさですね。3カラットくらいでしょうか? とすると、三百万円はしますよ!」
「まあ、人工ダイヤモンドである以上、そんなに高い値段はつかないんじゃない?」
「でも、魔法を使えば、分子構造のレベルで弄れるんですよね? 天然物と区別がつくでしょうか?」
「「……」」
魔法が廃れて良かったと思った瞬間であった。
ダイヤモンドの合成もそうだが、化学への理解が進んだ現代において魔法で出来る事がかつてよりも広がっていると考えられる。魔法を使える素質がある人の割合なんかが不明だから何とも言えないが、仮に魔法の存在が広く知れ渡ったら、様々な物の価値に大きな影響を与えうるだろう。改めて、魔法の影響力を思い知ったのだった。
◆
「という訳で、今日はクリスマスパーティーに備えて、イミテーションダイヤを作ろうと思う!」
「「「わーー! パチパチ」」」
その週の土曜日。姉さんと紗也、そしてシャルローゼさんと共に、クリスマスパーティーを彩る宝石を作る事になった。なお、ガラスを変形させて作る予定である。
せっかくだし、ダイヤモンドを使って『ダイヤモンドの舞うパーティー』を演出しようかという案も出たのだが……。なんとなく「それはしないでおこう」という結論に至った。まあ、シャルローゼさんはともかく、俺達一般人がダイヤモンドを大量に持っていると、色々不味いだろうしなあ……。
実際、ダイヤモンドを作るよりも、ガラスを変形させる方が簡単だ。沢山作りたいし、ダイヤモンドの製作はまたの機会にという事で。
姉さん曰く
「硝子はアモルファス、つまり決まった結晶構造を取らない。だから、まるで液体のように自由に形を変える事が出来るんだ。だから、魔法での変形もそんなに集中しなくても行えるみたいだな」
とのこと。ちょっとよく分からなかったが、取り敢えずガラスは変形に適した素材だそうだ。
「どんな形に変形させたらいいんだろ? 宝石ってどんな形だっけ?」
「参考資料を印刷しておいた」
「流石姉さん。あ~そうそう。こういうやつ、こういうやつ!」
様々な宝石のカット例が載せられた資料が手渡された。
「ブリリアントカットにも色々な形があるんですね。オーソドックスなラウンド型だけじゃなくてオーバル型とかハート形とか!」
「ステップカット……。エメラルドとかってこのカット方法が使われている印象があるわね。あ、エメラルドカットって別称もあるのね」
その後、霊魂珠を使って、宝石を空中に浮かべてみた。今回は宝石一つ一つが自転するようイメージしてみる。さあ、どうなる……?
「成功だな」
「キレー!」
「綺麗ですね!」
成功したようだ。ガラスは空中に浮かびながらクルクルと回っている。回転しているので、キラキラと瞬いているように見える。綺麗だな。
クリスマスパーティーの飾りつけは、これで決定だな!
※なお、両親には「姉さんの最新技術」と言ってごまかす事になった。
「実家のシャンデリアを思い出しました~! でも、シャンデリアよりも、こっちの方が可愛らしいかな?」
「「「?!」」」
流石お金持ち。実家にシャンデリアがあるのか。シャンデリアなんて、ホテルのロビーくらいでしか見た事が無いよ……。
俺の先祖は魔法使いだったようだ 青羽真 @TrueBlueFeather
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