第3話 特製アボカド丼

 俺は、普段、特に料理はたしなまない。

 いつも、コンビニやスーパーで、総菜や弁当を調達して、家で食べていた。


 ところがだ……


 そのアボカド自体に何かの魔法にかかっていて、指示しているが如く、自分の両手が、自分のものと思えないほどテキパキと機敏に動き出した。


 そういえば、あの時、アボカド魔人が、特製アボカド料理を伝授するって言っていたな……


 買い物をしていなかったのに、冷蔵庫には、甘エビやホタテやマグロやイクラや明太子などの海鮮が保管されてあり、台所には長芋も置いてあった。


 さいの目に切ったアボカドと、頭と尻尾や取り、殻を剥いた甘エビ、ホタテの貝柱を4等分し、マグロのぶつ切りを丼ご飯の上に色合い良く並べた。

 下ろした長芋は明太子と昆布醤油で味付けをし、海鮮とアボカドの乗ったご飯に適量かけた。

 中央にイクラをトッピングし、千切り海苔を全体にまぶし、ワサビを添えて特製アボカド丼の出来上がり!


 海鮮の効果か、長芋のとろろの効果か分からないが、確かに、不思議と、見た目上は美味しそうに見えなくも無い……


「頂きま~す!」


 ちょうどお腹も空いていたせいか、思いの外、抵抗無く、どんどん口の中に運ばされて行く。


「う、旨い!」


 こんなにアボカドが旨い物だったとは!

 ワサビや長芋とろろとの相性も抜群じゃないか!


 俺は、今までずっと、この美味しさに気付かずにいたとは……

 人生を無駄に過ごしたような思いに駆られてしまう!


 これからは、食わず嫌い返上しなくてはな!


 それ以来、俺の冷蔵庫の野菜室には、所狭しと色んな色付き具合のアボカドが貯蔵されるようになった。

 会社では、女性社員達に混じって、オリジナルアボカド弁当を披露したり、レシピ自慢をするようにまでなったせいか、会社での俺の株も上がった!

 週末には、そんな女性社員達と一緒に、女子会のようなノリで、飲み会に行くようになった。

 そのうちの一人、三屋みつや佳子よしこは、今や俺の初めての彼女に!


 俺の人生をこれほどまでに輝かしいものに導いてくれた、アボカド魔人には、感謝しかない!

 


             【  完  】

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アボカド魔人からの条件 ゆりえる @yurieru

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