第2話 アボカド魔人参上!

「学、お前か~! アボカドをバカにしたのは!」


 誰だ、俺を呼ぶのは……?

 なんか、暗くて、よく見えないが、何者かの気配だけはする。

 それも、かなり大き目の存在……


 多分、俺の身体の10倍以上は有りそうな大きさと質量感が迫っている!

 

「見つけたぞ~、学め~!」


 俺は、目を疑った!


 目の前にいるのは、正視に耐えない、黑い巨体。

 アボカドが何かの作用で突然変異したのか……?

 20m近くは有りそうな超巨大化したアボカドが、なぜかそこに佇んでいた!


 それも、ただあの形状で、単純に巨大化しただけではなく、手と足が、昆虫のように計6本、頭と胴体である巨大アボカドから突き出ていた。


「お前は、アボカド魔人か?」


 あれっ、どういう事だ……?


 俺は、予め、この巨体の存在を知っていたかのように、応じていた。

 アボカド魔人……?


 確かに、魔人と言われたら、魔人なのかも知れない。

 でなきゃ、こんな巨体になって、手足を6本も飛び出させないだろう。


「この愚か者め~! 万能食材であるアボカドをバカにしおって!」


 そう言って、アボカド魔人は、俺の身体を倒して乗っかって来た。


「うぐっ、重い、苦しい~!」


 臓器が潰れて息苦しい。

 そりゃあ、自分の何十倍も有りそうな重さがのしかかってきているのだから、俺なんか一溜ひとたまりも無い。


「はははっ! どうだ! アボカドをバカにした事を反省するか?」


 反省など、したくない!

 そんな事を唐突に言われて、納得できるわけなんかない!


 けど、反省しないと、このまま、俺は虫の息となって、すぐにでも果てるだろう。

 このまま、一生を終える……?

 まだ、結婚どころか、彼女すらいた事も無いというのに!

 それは、あまりにも不甲斐無い。

 

「反省します! 反省しますから、俺から降りて下さい!」


「いやいや、反省だけではまだ甘い! お前に、特製アボカド料理を伝授してやるから、それを食べて、アボカド嫌いを返上するのだ!」


「え~っ、アボカドを食べなきゃならないのですか~?」


 交換条件で、アボカドを食べる事を要求してくるとは……!

 そればっかりは、ムリだ~!


「当然じゃ! さもなくば、ここで命尽きるのみぞ!」


「え~い、背に腹は代えられない! 食べます、食べますから!」


 その返答によって、俺は瞬時にアボカド魔人の重みから解放された。

 と、同時に、ベッドに横たわっている事に気付かされた……


「なんだ、夢だったのか? 妙にリアルな余韻が残っているが……」


 なんだか右手に違和感が有る……

 何かを握らされている事に気付き、布団から右手を出した。

 右手に握られていたのは、紛れも無く、熟れた黒いアボカドだった。


「夢ではなかった……マジかよ……」

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