第3話 納豆人生の転機が......
「この前は、ゴメンね~」
数日後、保谷と映画を観る時に、先日の夕刻の電話の件を謝った典江。
「いいよ~、女の人の身体は色々有るみたいだから。もう大丈夫?」
「うん、心配してくれてありがとう」
納豆の誘惑に負けた事など話せず、後ろめたさを感じる典江。
その分、ホラー映画を観ている時に、何度も保谷の腕にしがみついて怖がる素振りをしてサービスした。
「うちの親がけっこう高齢だから、そろそろ孫の顔みたいって言うんだ」
「そうだよね、私もそろそろ高齢出産になりそうだし……」
映画の後のランチが、いつものファミレスと違い、ホテルのレストランに保谷が予約を入れてあったのが意外だったが、静かな場所で、この手の話をしたかったのだと理解した。
そう漠然と思いつつ、休日なのに三食とも納豆という、理想の納豆ライフを実現出来なかった事が心残りでならなかった典江。
「それで、典江、結婚してくれないか?」
「えっ、結婚……?」
結婚すると、自分の納豆ライフがどうなってしまうのか、不安でならない典江。
「自炊期間が長かったから、俺は家事も育児も協力するし、いいだろう?」
保谷が家事も分担してくれるという事は、納豆ライフにヒビが入りそうとしか思えない典江。
「でも……」
「貯金も有るし、典江は結婚した時点から、もう働かないで、家を守ってくれていいし」
その保谷の一言が決め手となった!
朝食の納豆は、もちろん許されるであろうし、働かないなら、これからは昼食も納豆を食べられるのだ。
典江は明るい笑顔でプロポーズを受けた。
そんな一日二食が保障された納豆ライフを夢見た典江だったが、実際には、結婚後は育児に追われ、なかなか理想の納豆ライフとは程遠い現実が待っていたのだった……
それでも、育児が一区切りついた頃には、きっと、またあの至福の時間が戻ってくるであろう事だけを期待して、生粋の納豆星人の典江は、今日も奮闘を続けている。
【 完 】
納豆星人の至福のヒトトキ ゆりえる @yurieru
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
カクヨムを、もっと楽しもう
カクヨムにユーザー登録すると、この小説を他の読者へ★やレビューでおすすめできます。気になる小説や作者の更新チェックに便利なフォロー機能もお試しください。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
関連小説
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます