異世界生まれ地球育ち

未読シー

第1話 引っ越し…郷帰り…カルクル…?

「お爺ちゃんとお婆ちゃんが引っ越したらしいわよ」


 その言葉を聞いたボクは勉強を止めて大声で「え!?おばあちゃんたち引っ越したの?!」と叫んだ。

「そうみたい、さっき連絡来たのよ。…それと~」

 お母さんがボクをにやにやしながら見つめてきた。

 こーいうときはたいてい、ボクにとってハッピーなお知らせが来たことを告げる合図だ。

 もしかして爺ちゃん婆ちゃん家に行くだったりして

「その引っ越し先にご招待されましたー」パチパチ

「やったーー!!」

 ふざけ気味に何度もピョンピョンと跳ね回って、これくらい嬉しい!ってことを教えてたけど…母さんはボクの頭をガチッと掴んでにこやかに「ホコリがたつし、子供じみた真似はやめなさい」と言ってきた。

「夏休みの宿題終わらせないとダメだからねー」ていう追い討ちもかけてきた。

 心はしょんぼりだけど、お婆ちゃん家に行くためにここは我慢した。

 そしてその日のうちに日記とか読書感想文、自由研究以外の宿題をすべて終わらせたボクだった。

 ちゃんと全問正解なのでこれにはさすがの母さんにも流石ねと誉められた。

 後はご飯食べてお風呂入ってはーみがいて寝るだけ。

 それをするだけで久しぶりにお婆ちゃんと爺ちゃんと会えるんだ。

 明日が楽しみなお陰か、ご飯も美味しかったしお風呂も気持ちよかった。

 …ねれなかったらどうしよう


 そんなことを考えながら、ボクはぐーすぴと気持ち良さそうに眠るのだった。



 ▽▽▽


 朝!


 清々しい朝にお早ーございます!

 朝御飯を食べてる途中、まだかまだかと待てと言われた犬みたいにそわそわしてたら鬱陶しかったのかお母さんにすこし怒られた。

 はぁ、いっつもそうだよねお母さんは…そうやってスーパーハイテンションなボクを萎えさせて…「デザートいる?プリン」いるー。母さん最高ー


 さて、歯もちゃんと磨いたんだしもうそろそろお婆ちゃん家に行きましょうそうしましょう!

 ボクが急かすと母さんが「はいはい」と了承してくれた。





 …………ということで!



「やって来たぞー!おばあちゃん家」


「車の中で飛び回らないの!!」

 まーた怒られたよ。

「いいじゃんだって二年ぶりの婆ちゃん家だよ?」

「二ヶ月ぶりね」

 それくらいに思えてたってだけです、比ゆってやつだよ比ゆってやつ。

 ………というかちょっと待って

「………あれ?……あ!!」

 思い出した!

「パンツでも忘れた?それともスマホ?」


「全然違う」

 呆れたボクは答えを言う

「引っ越したんじゃないの?婆ちゃん達」


 引っ越したのに行き先がいつもの東北の婆ちゃん家だよ?ついついいつもの感じで楽しみしていたせいで引っ越したこと忘れてたけど、結局あれは嘘だったのだろうか。


「お婆ちゃん家から行けるのよ。引っ越し先に。」


 ???


 ますます訳が分からなり、悩みすぎていたボクの目を覚ましたのは到着したという合図だった。

 いや、うん。やっぱりなんの変哲もないいつものお婆ちゃん家じゃん。

 建ってから何百年も月日が流れたような、茅葺き屋根の一軒家。

 半開きのドアから流れ出る美味しそうな匂いが食欲を刺激します。

 大声でお婆ちゃんを呼ぶと、出てきたのは爺ちゃんだった。

「おお、来たか来たか。お久しぶりじゃなアキ坊に朔。元気にしてたか?」

 ボクの爺ちゃんは、一言でいうとおかしい。

 なんせ色んな珍しいものを集めたがる骨董屋をやっているからだ。

 どうやって手にいれたか分からない沢山のお金にものを言わせてアンティークとか、お酒とかを集めている。

 そんな爺ちゃんは容姿もまたおかしくって、ボサボサした真っ白い白髪と人差し指くらいに伸ばしたお髭、今年で79とは思えない真っ直ぐな姿勢は衰えてることを忘れさせる。なんというか、バランスが悪い

 そんな爺ちゃんの今日の帽子は…濃い青色の皺寄せ帽子ですか…

「ほほう…この帽子に目をつけるとはお目が高いのう。」

「いやべつに変な形してるなぁっておもって見てただけなんだけど」

「遠慮は要らんから貰っとけ。いつの日か役立つときが来るぞ」

 そんなわけあるか。

 心のなかでチョップを食らわした俺は、そそくさと家の中に入るのだった。


「おばーちゃーん!!来たよーー!!」


 台所から血だらけの前掛けを引っ提げ、大好きなおばあちゃんが顔を見にやって来た。


「おやおやアキちゃん、見ない内にこーんなに凛々しくなって…ご馳走用意しとくから待っとき」

 おばあちゃんは、爺ちゃんとみたいに変じゃない。

 ただ一つだけおかしなのがある。

 それは、料理するとき。

 もう…ヤバイ、思い出すだけで鳥肌がたってきた。

 カンフーする人みたいにブンブンと刃物を回すあの姿は…言葉で表せないほど派手で怖くて、そしてカッコよいのだ。

 嬉々とした表情で僕たちを歓迎してくれたおばあちゃんは台所に戻り、多分だけど鶏の下処理を再開した。

「見ない内にって…まだ会ってから二ヶ月しか経ってないでしょお母さん」

 なにかぼやいていたお母さん、多分ツッコミでもいれたんだろう。




 さて、そんなこんなでおばあちゃん家にやって来たわけだが、早速気になっていたことを暇そうな爺ちゃんに聞いてみよう。


「爺ちゃん爺ちゃん」

「おう、どうしたどうした?」

「引っ越したって本当?…あ、郷帰りだっけ?」


 この質問に爺ちゃんは悩んだ。なんで?


「変にあやふやだからよくわかんないんだよね。本当はなんなの?」

「それはじゃな…まぁ、うむ………これから行くからすぐわかるじゃろうて。」

「これから??」

「うむ、そうじゃよ。飯食ったら孫と一緒に行こうと思っていたのじゃ、故郷にな。」

 へーー、なんか色々と変な気持ちもするけど…うまく言葉にすることができなかったから、僕はうなずいてわかったことにした。結局この意味の分からないなぞの答えが後で出るらしいし今は分からなくてもいいや。降参降参白旗白旗~。

 …場所だけは知りたいな。

「それって何処なの?」


「カルクルという所じゃ」

「カルクル?何処それ、外国?」

 だったら余計に今までのヒントの意味が分からなくなってくるけど…もしかして嘘ついてる?

 うーーーーん……頭が痛い。いや、頭痛が痛い…

 こんなんじゃごはんいっぱい食べれないよ~





「美味しかった~、おばあちゃんの唐揚げ最高~。」

「ほらアキ行くわよ」

「うん、美味しかった~」

「ボケないでよそんな唐揚げごとき…「なんか言った?朔」いえ、何でもないですよお母さん」


 なんかバタバタしてる、「どうしたの?」「だから、行くのよ、お爺ちゃんとお婆ちゃんの故郷に」

 え?……ホントに今から?



 外にでると、さっきまで無かったおっきな鉄扉があった。

「なにこれかっこいい!!爺ちゃんの骨董品!?」

 なわけあるかい。フッと笑われた僕を爺ちゃんは担ぎ上げた。

「種ちゃん。先行ってええか?」「構わないさね」

「うわぁ!?怪我しちゃうって爺ちゃん!降ろして!」

 爺ちゃんは僕の言葉なんか無視して、タッタカタッタカと走る。

「ほれ行くぞーーーー!」


 後ろ向きだったからわからなかったけど、多分僕は爺ちゃんに担ぎ込まれたまま、扉のなかに入っていったんだと思う。


 扉のなかは、ミルク色のトンネルだった。


 所々で水に溶かした絵具、色は…虹色の上半分くらい、みたいなのがふわふわとゆらゆらしてて綺麗。

 しばらくすると爺ちゃんが走るのを止めた。

 爺ちゃんが何かとお話をするためだった。

 お話の相手は…あちゃあ、ついにボケてしまったか爺ちゃん…そこにはなにもいないよ。


「孫に未知なる感覚と体験を…そしてこの世界に幸福を……」

 ………!!?爺ちゃんがなにか呟いた瞬間、眩しい光が現れた。


「ほれ着いたぞ、アキ坊。カルクルじゃ」


 ゆっくりと片目から開ける…いったいカルクルとはどのような場所なんだろう

「…………………」

 言葉がでなかった


 絵本のような、素晴らしい世界だった


 口をあんぐりと開けている僕に爺ちゃんが感想を聞いてきた。





「どうじゃ?」



「…ぬ、ぬぅえぇぇぇあーー……」

 

 僕はどさりとその場に倒れた僕は、力の抜けたアホのような声で叫ぶ。




 わーーけわかんないよこれー↓↑↑↓↓↑??

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