第6話 本家

一話を少しだけ加筆しました。

それと、これから、世界眼使用時は「た」という表現にします。by作者。



それから賢は手錠を装着し、車に乗せられた。

そして、車が走り初めて数時間後、賢は車から下ろされた。

「ほら、しっかり歩け」

そう言いながら賢の背中を叩く黒服の大男。柩が手配した本家の手の者だ。

「痛いな、やめてくれよ」

そう言いながら前を向くと思わず感嘆の息が漏れる。

賢の目の前にあったのは先の見えないほどの階段、否、様になる結界だった。

(なるほど、この結界が今まで僕のを欺いてきたわけだ)

とは言え、目の前に連れてこられて気付かない程の鈍感でも無いが。

それと、た感じ司達は僕とは1、2時間差でここに連れてこられているらしい。

そして、結界内に目隠しをされながら入り、

ある部屋に入れられた。そこまでは良かった。本当にそこまでは、だが。

「んで、なんで貴方がいるんですか?」

そう、僕は目の前の白髪白眼の美女──柩さん──に文句を言った。

「そりゃあ、ここは私の部屋ですしね」

あっけらかんと言う柩。

「……はい?」

意味が分からず、思考が停止しかけるが、何とか質問を捻りだす。

「いや、他の部屋無いんですか?」

この屋敷(?)はかなりの規模だ。流石に一つ二つ空き部屋くらいあるはず。

「確かに、部屋はありますよ。ただの部屋は。ですが、貴方を幽閉出来る程の部屋はありません。地下牢なら今すぐにでも用意できますが」

そんな物騒なことを言う柩。

(って言うか僕を幽閉出来る部屋ってなんだ。

この部屋よくたら、結界っぽいのはられてるし、結界がある部屋が無いってことか?)

「いやいや、流石に牢獄それは嫌ですよ。大人しく待ってます」

そう言いながら首を振る。

そんなやり取りをしていると、柩さんが聞いてきた。

「先程から気になってはいましたが、貴方、態度変わりすぎじゃありませんか?」

「え?いや、だって、少なくとも柩さんは司達の敵じゃないでしょ?」

何を当たり前の事を、と言わんばかりに返す賢。

「……ですが、貴方は今、拘束されているんですよ?その事について何も思わないのですか?」

再度、賢に質問を飛ばす柩。

「いやぁ、あの場面と情報で僕を怪しまない方が無理ですって。むしろ、柩さんにはちゃんと調べて僕の潔白を証明して欲しいと思ってます」

柩は気になった。何故初対面の自分にここまでの信頼をおけるのか。おそらく、彼もある程度、本家については知っているだろう。そして、本家は日本でも最大規模の魔術団体だ。そうともなればかなり黒いところも出てくる。それなのに何故そこに所属する自分を信じれるのか。純粋に気になった。

「加堂賢、何故貴方はそこまで私を信頼するのですか?いえ、信頼出来るのですか?」

そんな問いに、賢は愚問とばかりに即答した。

「柩さんが急に現れた時、朱禅院は、驚いてはいたけど、そこにマイナスの感情は感じ取れなかったんです。むしろ安堵とか、喜びとか、そう言う感情を感じたんですよ」

で生きてきたからだろうか、柩は、その言葉に驚きを禁じ得なかった。基本的に、この業界では、家族であろうとも手放しでは信頼出来ないからだ。そして、少し、嬉しくなると同時にすこし、妬いた。自らの友人アカリ達に良い友がいることへの歓喜と良い友への嫉妬。

「……そう、ですか、良い友人関係なのですね、貴方方は」

柩は、無意識にそう呟いた。

「……柩さん、貴女、友達少ないでしょ」

柩のどこか、妹の成長を喜ぶ姉のような、しかし、自分を羨むような様子を見た賢がそう言った。

「ハッハイ!?い、いますよ!と、友達くらい!」

「あっハッハッハッ」

柩の先程までとは違う、慌てた様子に思わず笑う賢。

「すっ、スミマセッ、いや、ここまでッ反応…ッするッとは、思…ッてな…カッ…クックックック」

賢はすかさず謝罪する。……これを謝罪と呼べるかは甚だ疑問だが。

「……そう言う貴方はいるんですか?」

拗ねた様な態度でぶっきらぼうに聞く柩。

「…三人くらいですかね」

柩の方ではなく、明後日の方向を見て呟く賢。

「でしょうね。貴方はいつもアカリ彼女等と一緒に居ましたし。まあ、私も二人しか友人いませんが」

両者痛み分けどっちもどっち。誰も得をしない話しなので話を変えようと柩が言った。

「…やめましょう。この話。気分が落ち込みます」

「激しく同意です。べ、別に友達作れないわけじゃ無いけどね?」

そう言い訳(?)する賢を呆れた目で見る柩。

「ところで、質問なのですが、貴方、神子様や、アカリ達も治療しろとおっしゃっていましたよね?」

いきなり身に纏う空気をガラリと変え、真面目に質問する柩。

「…なんだ?今更前言撤回とか言うなよ?」

賢も態度を硬化させて応対する。

「いえ、そんなことは言いません。ですが、分からないのです。涼子は確かに重傷、いえ、重傷だった、と言うべきでしょうね。少なくとも、あのおかしな光が消えた頃にはほぼ完治といっても良い状態でした。アカリも、確かに感じられる魔力がかなり低下していましたが、大きな傷は見られませんでした。神子様も、心的外傷はありそうですが、カウンセラーをつけたら大丈夫でしょう。ですので、貴方があそこまで念押しする意味がわからないのです」

賢を探るように見つめる柩。

(試されてるのか…?)

一方、彼は表面上警戒した態度を維持しつつ、内心では困惑していた。

(どういうことだ?司と涼川の分析に関してはあっているけど……)

朱禅院に関しての分析が、決定的に間違っている。

確かに、見た目だけなら、彼女は魔力の総量が少し減っただけの変化しかない。

しかし───

(まさか、神降ろしの札のデメリットを知らない?いや、でも、まさか)

あり得ないだろう、と即座に自分の疑問を否定する。それデメリットを知らないなぞ、自分の持つ核の二次被害を知らないに等しい。流石にその可能性はないと思いたい。とまあ、ここまで考えたが、一人で考えていてもどのみち答えはでないであろう事なので、目の前にいる当人に聞くのが早いだろう。

「……質問を質問で返すようで悪いんですが、本家貴女方は神降ろしの札のデメリット、知ってますか?」

「何故貴方が神降ろしの札について知っているのか問いたい所ですが、神降ろしの札を使用した過去の術者達はみな近い内に不審死を遂げています。それが何か?……!まさか!アカリが!?」

それは悲鳴と言って相違ない。

「はい、そうです。ですがその様子では、朱禅院を治療する術は本家貴女方も持っていないようだ」

「そん…な、なんで…?」

膝から崩れ落ちる柩。

だが、ここで乱入者があらわれた。

コンコン

そう扉をノックする音が聞こえると、ゆっくりと扉が開く。

「失礼するよ、姉さん。今しがた神子様やアカリさん達をこちらに送ってた部下から連絡があった。道中でアカリさんが倒れたって───ぇ?なんで姉さんの部屋に男がいるの?」

部屋に入り、賢と目があった柩の弟(?)の目に暗い光がともった。

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賢者、地球にて転生する あじたま @1ajn

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