その6 『アダザムンライ』(5作目・最終話)

・志遣 真新(しやる マタラ)(30)

 陣内千尋の部下。陣内千尋を殺した徒村を左遷しタ=イオワンの生き餌にすることで、徒村に復讐する機会を伺っていた。

 ビャクローと顔見知りの荒種を囮にビャクローを誘き出すも、まさかの荒種がビャクローを庇って銃弾に倒れたことで大きく計算が狂う。もともとの計画は、ビャクローにタ=イオワンの居場所を吐かせて殺害し、あくまで平和的に県警に協力し、事件のゴタゴタで徒村を抹殺する予定だった。仕方がないので手負いの荒種に交渉を持ちかけて自分が本部長の座に就き、対策課を解散させることで徒村を孤立させ、狙いやすくした。徒村以外に危害を加えるつもりはそもそもなかったが、事故とはいえ荒種を負傷させてしまった罪悪感から、胡子栗を危険な目に遭わせるわけにいかなかった。胡子栗への取ってつけたような好意は、胡子栗の過去を調べつくした折に、徒村に一方的に嫉妬しただけの可能性が高い。

 作中で言う「埼玉県警への借り」とは、元上司・陣内千尋の実子であるところの鬼立への間接的な借りという意味。

 徒村に利き腕を撃たれたが、最後の力を振り絞って後ろからヘッドショットをお見舞いするもビャクローに難なく弾かれる。命からがら逃走するも、ビャクローに首を切りつけられ出血多量で死亡。海に落ちた遺体はタ=イオワンが回収した。

 ビャクローが問うている場面があるが、本当に陣内千尋の復讐をしたかったのかどうか甚だ疑問が残る。




・龍華 彌能末(タチハナ やたすえ)(37)

 EDENシリーズにも登場。

 埼玉県警刑事。鬼立を唆して作らせた、対策略的通信犯罪非可逆青少年課準備室・室長。

 本名は別にある。キジ=ハンの息子。ちーろしか知らないが、スーザの従兄でセイルーの弟。ちーろの従弟でもある。

 後継者の座を我が物にしたいセイルーの独断で実家を追い出され、一変してごく普通の生活を送るものの、島から逃げたい徒村に交換条件として居所を突き止められ、母・キジ=ハンの手下の半獣に瀕死の状態まで暴行を受ける。そこをちーろに助けられたため、ちーろは命の恩人でかつ最愛の相手。恩を返したいがために絶対的立場の母を言い包めてまで警察官になった。ちーろが鬼立に執着しているのを知っていてわざと埼玉県警を選んだ。




・陣内 千色(ジンナイ ちーろ)(45)

 EDENシリーズにも登場。元探偵。

 ベイ=ジンの子。スーザの兄、セイルーと龍華の従兄に当たる。

 ベイ=ジンが陣内千尋の元に遣わしたいわば人質。兄のえんでと共に陣内千尋に育てられる。自分を利用した挙句、えんでを入院施設に閉じ込めた陣内千尋が心底憎い。

 えんでの凶行を止める目的もあって、陣内千尋に唆され探偵業を始めるものの、陣内千尋の実子である鬼立と大学の図書館で出会い「正義」の意味について考えさせられる。

 とある事件のあと路頭に迷っていたところを拾われ、そのままその家の御曹司の話相手兼護衛に就く。現在は御曹司に付いてフランスにいたが、陣内千尋の死とベイ=ジンの出現を聞きつけ緊急帰国。ベイ=ジンの後継者周りについて探ることを建前に、本音は、鬼立がゴタゴタに巻き込まれないように立ち回った。タ=イオワンが徒村を回収したことを聞き、再びフランスに戻る。

 左頬の大きなやけど痕や、左手中指が切断されていることに関して、詳細はEDENシリーズにて。



・鬼立 木彦(キリュウ もくひこ)(44)

 EDENシリーズにも登場。

 埼玉県警本部長。

 陣内千尋の実子。陣内千尋が死んだ際に志遣のお節介によって事実を知ることとなったが、正義の遂行以外に関心がないので大した感傷もなかった。自分の知らない父親が自分の知らないところで殉職した、ただそれだけのこと。

 対策課の研修が中止や延期されることくらいでちーろがフランスから急遽帰国する理由が不可解だが、協力してくれることは嬉しいので深く追求はしなかった。どうせ聞いたところで教えてもらえないだろうという諦めもある。




・陣内 千尋(ジンナイ ちひろ)(60代)

 EDENシリーズにも登場。

 ちーろの養父。鬼立の実父。徒村と志遣の元上司。

 警察庁におけるベイ=ジンならびにタ=イオワンを捕まえる部門のトップ。タ=イオワンの本拠地から生還したという自分のアドバンテージを売り込んだ徒村を部下として迎え入れる。しかし実際のところタ=イオワンを捕まえるつもりは毛頭なく、タ=イオワンが所属する組織と警察との間を仲介するだけの緩衝材でしかないことを看過した徒村によって射殺された。





・祭地 玄宮(さいち クロミヤ)(スーザと同い年)

 通称ゲングウ。自称、朱咲の双子の妹。祝多の正統後継者。祝多出張サービス三代目店主。

 後継者になった証として、幼い頃に眼球を摘出。眼球がないことを隠すため、サングラスをかけている。

 スーザとそっくりの外見だが、髪が黒く、全身真っ黒のコーディネイトが多い。

 スーザによると自分のスペアとのことだが、替えが利くという意味なのか、子宮のない自分の代理母という意味なのかは判然としない。

 もちろん4作目のゲングウとは別人だが、5作目において、ゲングウのフリをしたスーザでない場面が果たしていくつあったのか。考察の余地はあるかもしれない。





・ビャクロー(自称500歳)

 漢字表記は白狂。ゲングウに仕える爪と牙。ゲングウというのは正統後継者に許される名であり、ビャクローの役割は正統後継者を守ること。ゲングウに逆らったり、スーザに従ったり、一見滅裂な行動に見えるが、根底にあるのは後継者たるゲングウに仕えるというたった一つ。

 タ=イオワンやベイ=ジンと同じく、器を乗り換えることが可能。女体と男体のどちらにするかのこだわりは特になく、状況に応じて有利な方を取る。女性体でも男性体でも髪は真っ白。舌をべろんと出すのは挑発のような癖のような。

 怪我をしてまで自分を庇ってくれた荒種に報いるため、ゲングウの怒りを買ってまで、胡子栗に真相を告げる。見た目に反し恩や忠義に厚く、スーザの最後の選択(新作執筆予定)を見守るしかないのを心苦しく思っている。

 武器全般を手足のように扱えるが、ナイフや近接戦闘が得意。銃は本人に言わせると卑怯なので気に入っていないらしい。尚、裏設定だが、家楼シリーズのスゲの戦闘の師。





・ベイ=ジン(?)

 家楼ierowシリーズにも登場。

 スーザの実家における最高権力者。ベイ=ジンという名は、拠点の北京をもじって陣内千尋が付けた通称。

 何ヶ国語も話せるがわざと下手くそな通訳を連れており、相手を困惑させて話を有利に進めるのが手の内。気に入った男との間に子を成したあと、人体模型という永遠にする。

 志遣にはベイ=ジンとタ=イオワンの外観がまったく同じと説明されていたが、実は違う。家楼シリーズに登場するベイ=ジンは4章5節のみ。他はタ=イオワンの男性体と女性体。傍らに通訳を連れているかどうかで、本来のベイ=ジンかどうか見分ける一助になるかもしれない。




・セイルー(?)

 スーザの従姉。龍華の実姉。キジ=ハンの娘。

 徒村には、竜華青流(タチハナ=アオナガ)と名乗る。

 人魚を人工的に生み出す実験の為下肢を切断され、以降車椅子で生活する。

 後継者の座を独占するため龍華を追放したと云いつつ、実は獣と融合される前に逃がす狙いがあった。が、徒村の逃亡を手助けした見返りにキジ=ハンが龍華の居所を突き止めてしまい自らも罰を受ける。

 たった一人の弟を逃がしたことは誤りだったと思い知り龍華に対し激しい憎しみを向けるが、その憎しみが同朋の潰し合いでしかないことをよくわかっている。ので復讐代わりに命を脅かすこともしないし、求められれば海の上だろうが助けに来てくれる。恩を仇で返された徒村を2章で助けたのも、自分が「中立」だと主張するのも、醜い争いの呪縛から「中立」でありたいという決意の表れかもしれない。




・キジ=ハン(?)

 ベイ=ジンの妹。セイルーと龍華の母。

 拠点は上海。キジ=ハンというのは、ベイ=ジンという音に合わせて本人が付けた。本名は別にある。

 顔の左半分が焼け爛れたように変形しており、左眼はほとんど見えない。

 ベイ=ジンが人体に執着するのなら、キジ=ハンは人体と獣の融合を目指す。実の娘を使って人魚を作り出したり、部下は一通り何らかの獣と融合した成功例。失敗例はもちろん死亡している。

 徒村を逃がしたのは彼女の一存。ベイ=ジンに喧嘩を売るような真似をしてまで徒村の申し出に応じたのは、息子(龍華)の居所という交換条件が魅力的だったからというよりは、徒村本人を気に入ったから。逃げるのは遅かれ早かれ予測がついていたため、ベイ=ジンからもタ=イオワンからも特にお咎めのようなものはなかった。

 龍華を死の寸前まで暴行したのは、逃亡の罰や見せしめではなく、単に自分のペット(キメラ)の生殖器の使い勝手を試したかっただけ。結果として陣内が間一髪のところで止めに入ったが、そもそも殺すつもりはなく、暴行の末死んでしまったら仕方がないとだけ思っていた。

 ベイ=ジンは血のつながりを重んじるが、キジ=ハンはそうでもない。娘を人体実験に使ったり、息子をペットの玩具程度にしか扱っていないことからもわかる。キジ=ハンにとって人体は獣と融合するための材料に過ぎず、彼女が関心があるのはむしろ、人体でも獣でもない、或いは人体でもあり獣でもある“新生物”だけなのかもしれない。



・アダム(1)(スーザが胡子栗に預けた年)

 スーザの連れて来た赤ん坊。スーザは自分と徒村の子だと言い張るが、生物学的には、ゲングウと徒村の子。

 産まれてすぐスーザが育てたので、スーザを本当の母親だと思っている。胡子栗に預けられた早いうちに、重圧に耐え切れなくなった胡子栗から事情を説明されたので、自分の置かれた複雑な立場を小さいながら理解している。

 胡子栗のことを“ママパパ”と呼ぶのは、立場的にはママだけど本人が男だと主張するからパパでもあるし、そうか、ママパパでいいじゃん、ていう発想。ママと呼ばれるよりはずっといいので胡子栗はそう労苦なく受け入れた。

 スーザが迎えに来てくれるのをずっと待っていた。例えその先に待ち受けているものが、地獄よりつらい運命だとしても。




・輪湖きょうだい

 母親が男をとっかえひっかえ妊娠出産、結婚、離婚を繰り返しており、父親はそのたびに変わる。本編中では子どもらの言い分しか触れていないが、実は最初の男タ=イオワンが忘れられず、男を乗り換えているという裏事情。


長女:赤火(あかほ)

 第五子。小3。気が利きすぎるしっかり者。家庭環境のストレスから援助交際の女子グループを牛耳っていたが、ゲングウのひとことで眼が覚め解散を指示。アダムとこっそり連絡先を交換しており、アダムが胡子栗と荒種に残した手紙を代筆した。胡子栗のことは、アダムにならってママパパと呼ぶことにした。どんなに裏切られても、赤火にとって母親は世界にたったひとり。


四男:青水(あおみ)

 第四子。中3。個人主義で、兄弟間の会話はほぼない。リアルでの付き合いも軽薄で、友だちはネット上のみ。フライングエイジヤのメンバなので、創始者である胡子栗は憧れの的。高校受験対策のため塾に通うことを望んだ。


三男:白光(しろひ)

 第三子。高2。コミュ力が高く、自他共に認める顔面偏差値。短気なのが玉にキズだが、商品価値の高い外見を活かし、兄弟のために身体を売ってカネを稼いでいた。大人に裏切られ続けられることで世の中に絶望していた。胡子栗のことは、母というより「美人過ぎる近所のお姉さん」的な距離感で接している。


二男:黒土(くろど)

 第二子。19歳。長男がいなくなったあと、矢面に立って兄弟を守ってきた。最初こそ“まともな”労働をしていたが、白光に一晩当たりの稼ぎを聞き、馬鹿らしくなって同じく身体を売るようになった。兄弟が増えたので綺麗事を言っている段階でもなくなった。長男に止められなければ母親を殺していたと漏らす。胡子栗が瀬勿関に申し入れ、更生研の施設管理(雑務全般)職に就いた。


長男:黄林(きりん)

 第一子。年齢不明。黒土によると警察絡みで何かあったらしいが、死亡なのか行方不明なのか作中では明らかになっていない。が、正体は実は家楼シリーズのキナイ。父はタ=イオワン(男)。『来ない玄人か真っ冥』の登場シーンから逆算するとどうやら誘拐されたようである。




・教授 

 彼魔hymaシリーズにも登場。

 本文中に明記はないが、正体は北廉干支利(ホスガ・えとり)。詳細については上記シリーズにて。

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By-eveシリーズ登場キャラ表(完全版) 伏潮朱遺 @fushiwo41

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