第129話 もう高校生なんだわ
「楽しみだなー。アタシ初めてかも。友達に遊びに誘われたの」
「俺も中二の冬以降はなかったな」
お互い友人関係は極薄な人生だったからな。
恋人とデートの経験は多少あるのに友達との外出経験が少ないのは、恐らく異常な事だろう。
いつも通りの道を俺達はふわふわした足取りで進んでいた。
「そういえばさっきは何話してたんだ?」
「あー、特になんでもない」
「気になるんだが?」
先程渡辺君らにトイレに連れ込まれた時の話だ。
本当に大した話はしていない。
彼女とどこまで行ったんだよー的な、よくあるノリだった。
適当に誤魔化したが、まさかああいうノリに混ぜてもらえるようになるとは。
「怪しい」
「何がだよ」
「どうせえっちな話してたんだろ!? アタシがあんな事言っちゃったから!」
「ち、違うぞ?」
顔を真っ赤にしながらおかしなテンションで聞いてくる瑠汰に、何故か疑問形で返してしまった。
くそ、これじゃ俺が動揺してるのがバレバレじゃないか!
と、横で無言になり、もじもじし始める彼女に俺も居心地悪くなってくる。
恥ずかしがるなら最初から言わないで欲しい。
こういう反応も可愛いから困る。
「……でも、実際はどうなんだろ」
「何が?」
「その、みんなやってるのかなって」
「……」
俺達はさっき言ったように友達がいない。
周りの奴がどんな交際をしているかなんて、知る由もないのだ。
「……まだ高校生だぞ」
「もう高校生なんだわ」
ふと中学の頃の自分を思い出してみる。
高校生というものには憧れや期待感があった。
友達を作ったり、彼女を作ったり、それからその子と……。
うん。確かに、考えていたな。
ふと横を歩く彼女を見てみる。
若干根元が金髪なツインテールが今日も可愛い。
「でも嬉しかったな。まさかお前がそんなこと考えてくれてるとか」
「な、なんか言い方キモいぞ? それにその……君との事を考えるのは今に始まった事ではないと言うかなんと言うかっ」
「え? 後半なんて言った?」
「難聴ってたまに役立つんだな」
失礼な事を言いながらジト目で見てくる瑠汰。
何なんだ一体。
というか、結局質問には答えてくれないらしい。
「あーあ、アタシだけ恥かいた。あの後与田さんにどこまでしたのかめっちゃ聞かれたし」
「……言ったのか?」
「誤魔化したし! 普通に恥ずかしいんだわ!」
「そ、そりゃそうだよな」
どうやら俺達男子組と似たような会話が行われていたようだ。
男も女も考えることは同じなのだろうか。
「ってか、正直今はそんな雰囲気じゃないんだがって感じだし」
「……そうだな」
言われてすぐにショートボブのJKが思い浮かぶ。
意地悪い笑みを浮かべる妹と、猫耳のついた百点スマイル妹がくるくる回って交互にチラついた。
「今日萌夏ちゃん誘ってゲームしよっかな」
「喜ぶぞ多分」
「なんのゲームが良いかな。やっぱりすまぶらでタイマン?」
「お前はあいつの心を根元から折る気か?」
ただでさえ落ち気味なところに、友達からゲームでボコボコにされるストレスは計り知れない。
「君も一緒にやる?」
「あー、いや。遠慮する」
「そっか。じゃあ女子会だな!」
グッと拳を握り締めた彼女。
しかし、女子会っていうのは銃弾が飛び交う物騒な場所で行うものではないと思う。
相変わらず思考がゲーマーサイドに偏っている。
と、それはさて置き、萌夏も俺と少し距離を置きたいはずだ。
友達とゲームするときまで家族同伴では息が詰まる。
かくいう俺も同様だが。
最近は俺も妹も色々考え事が多くて疲れているし、たまには全部知っている友達と二人っきりで話したいだろう。
まぁ瑠汰はあいつの友達であるのと同時に俺の彼女だし、どうしても兄の影はチラつくのは仕方がない。
「明後日、楽しみだな」
「一緒に楽しもうな鋭登!」
「おう」
気分転換という点において、与田さんの提案は凄く嬉しい。
俺も週末は思いっきり遊ぼう。
◇
【あとがき】
たいっっっっっっへんお待たせ致しました!
約一か月半、更新を休止してしまい申し訳ございません!
三章の大まかなプロット自体はできているので、更新を再開していこうと考えております。
そして実はこの一か月間、裏で別作品の連載をしていました。
こちらもラブコメですので、興味がある方は是非!
↓
https://kakuyomu.jp/works/16817139555923935995
(既に一章本編は完結しております)
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