第4話
どうしてこの子としゃべる人がいないのか。
この子としゃべっているのは俺だけ。
なんというかみんなには見えてないような感じ。
この子に殺気が?いやそんなの感じないけど。
「また私の顔見てる……ちょっとそんなに見られたら恥ずかしんだけど」
と、対面で座っていた紬が口を開いた。
「あっ、ごめん……」
紬と目が合うと、俺は瞬時に目をそらした。
「何か考え事?」
「ええと、まあそんな感じ」
いや実際は考え事ではない。
この子がほんとに重力を操れるのかと疑問になっていた。
「とりあえず、ご飯食べようよ。アーンしてあげる」
紬は自分のお弁当に入っていたハンバーグを俺に突き出してきた。
「い、いや、大丈夫だって。というか、それ紬のだろ?」
「いいの。私、あんまりお腹空いてないから」
「……」
「ほら、食べないとハンバーグのソース落ちちゃうよ?」
食べないという選択肢はないらしい。
「……分かったよ!」
少し腰を浮かし、紬のハンバーグを食べた。
「おいしい?」
「ん、おいしいよ。これ、自分で作ったの?」
「まあ、うん」
へぇ、紬って料理できるんだな。
俺はあんまり料理はできないが。
「それじゃあ明人のご飯、私にもちょうだい」
「えっ?なんで?」
「私があげたんだから、当然でしょ?」
「あ、ああ……そういうこと」
とりあえず、お弁当の中に入っていた唐揚げを紬にあげることにした。
「これでいいか?」
「うん、なんでもいいよ」
俺が箸で唐揚げを取り、紬の方にあげると、紬はパクっとすぐにその唐揚げを食べてしまった。
「……食べるの早くない?」
「んー?もうちょっと遅い方がよかった?」
「……いや、何でもない」
その後、なんやかんやあったが、とりあえず昼食を終了した。
「ふぅー。お腹いっぱいになったね。まだ時間はあるから、もうちょっとここにいようよ」
「紬がいいなら、いいけど」
「えへへ、ありがと」
にこっと笑顔になる紬。その顔がめちゃくちゃかわいかった。
重力を操る少女とかっていう非現実的なことが起きておる ティーノ @vixli23
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