第3話
俺の横に座っているのは、夢で見た少女――紬がほんわかした表情で座っている。
いやもしかしたら夢で会った少女のそっくりさんかもしれない。
ほんとにこの子が重力を操れるのだろうか?
「……どうしたの?」
と、俺の視線に気が付いたのか、紬は口元を緩ませ俺を見た。
「あ、いや……」
俺は紬から視線を外す。
「夢で会った少女と同じなのかって思ってる?」
「ど、どうしてそれを……」
「ははっ、表情でわかるよ。その少し考えてるような顔でね」
……そういえば、俺は考えていることが表情に出やすいって誰かが言ってたな。
「たしかに信じがたいけど、ほんとだよ」
紬はそう言って笑顔を俺に見せた。
「……まだ信じられない?じゃあこれはどうかな」
「――重力を操れるからって怖くもなんともない」
夢の中で俺が少女に放った言葉だ。
「な、なんでそれを……っ」
「だから言ったでしょ?夢の中の少女と同じだって」
いや、しかしそんなバカな……そう思っていると、授業終了のチャイムが鳴った。
「ふぅー、これからお昼休みだね。よかったら私と一緒にご飯食べない?」
「あー……うん、紬がいいっていうなら」
「それじゃあ決まりだね。ちょっとお手洗いに行ってくるから待ってて」
どうして俺だけが紬と話せるのだろうか。
周りの人なんか、紬が見えてないみたいに、全然話とかしていない。
「なあ、あの子、普通の人じゃないよな……」
紬がクラスからいなくなると、数人ほどのグループからそんな話が聞こえてきた。
「うーん、そうかな……僕は別にどうだっていいんだけど」
「……やっぱりちょっと変わってるよな。あの子」
「どこが?」
「なーんていうか、そんな感じしない?」
「……いや、僕にはよくわからないよ」
紬にはちょっと違う雰囲気があるのかもしれない。
まあそれって、人それぞれだから仕方ないんじゃないかな……?
「それで、お前はあの子とよく喋ってたみたいだけど」
とそこへ、前の席にいた祐斗が俺の方を向いた。
「ま、まあ……あの子と仲良くなりたいなって思って」
「ふーん……だけど、なんか雰囲気が違う気がするんだよなあの子」
またそのことか。
だからどう違うのかを言ってほしい。
「うまく言えないけど……ちょっとだけ殺気があるというか」
「紬にそんなのがあるとは思えないけど……」
「個人的な意見だよ」
なぜ紬に殺気があるんだ?
「――お待たせ」
とそこへ、お手洗いから帰ってきた紬が俺の後ろに立っていた。
「……ははっ、まあ頑張れよ」
祐斗はそう言って、数人数グループに混ざっていった。
この子に殺気が……?いや、そんなの感じないけど。
まあいいか。とりあえずこの子とご飯を食べよう。
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