heat shock

出射精

第1話

第1章


「おれソープ初めてなんよ」

声が微かに震えていた。

「だからせっかくソープに来たんだから、と思って滅多にできないマットプレイっていうのを体験してみたいなって思って今日来たんよ」

口から言い訳がましく言葉が滴り落ちてくる。だが本当は違う。ソープに来てせっかくだからマットプレイをするのではなく、マットプレイをするためにソープに来たのだ。気恥ずかしさのために、素直になれない自分がもどかしい。それでも嬢は「それならうちに任せといて」と、はにかみながらこっちを見た。部屋の扉が閉まる。外の世界と切り離された、風呂とベッドしかない異空間とも呼ぶべきその部屋は、僕から気恥ずかしさという感情を剥ぎ取って、理性を保つことさえ忘れさせた。これから先起こるであろうことに心が躍動していた。

「じゃあ服脱ごっか」

そこで一瞬我にかえる。まだ距離感を測り損ねている僕は、「うん分かったー」と「はい。」という2つの言葉が同時に出てきそうになって喉元につっかえてしまった。ほんの少しの間をおいて、「はーい」と返答はしたものの、その声の響きは余裕のなさを露呈していた。嬢には余裕があるように見せたかった。おれはまだまだ余裕だぞ、と。初めてのマットプレイといえども心の余裕は常に持っているところを示したかった。つまるところ、主導権はあくまでも自分のものだと示したかったのだ。しかし嬢はその隙を見逃さなかった。不敵な笑みを浮かべながら「大丈夫だよ」と囁かれ、僕は抵抗する術なく堕ちていったのだった。


第2章


身に付けているものは何もなく、服と一緒に迷いを脱ぎ捨てた。 目の前には、裸の、艶やかな曲線で描かれたシルエットの女の子がいた。手のひらで包めそうな胸の膨らみや、緩やかなくびれ、そして美しい尻。僕たちはただの商売関係にあるはずなのに、それ以上の関係であったと錯覚してしまいそうだった。僕はただの客、相手はプロの従業員だ。だが、お互いが全てを晒したとき、眼前にいる人間はプロの従業員からひとりの女の子へと変貌を遂げたのだった。僕は、60分だけ、この目の前にいる女の子と本気で恋に落ちようと心に言い聞かせた。遂に、始まるのだ。

目が合う。目で笑う。刹那、力が抜けたように目を閉じ、唇を交わせる。舌を絡ませながら、腕を背中に這わせる。生温い鼻息の熱が頰に伝わっていく。身体がさらに熱を求めていた。徐々に腕は下がっていって、僕は尻を優しく鷲掴んだ。なんて柔らかいのだろうか。今にも男汁が絞りでそうだ。その瞬間、自分の陰部にも暖かな人肌を感じた。2人で陰部を弄り合う。ものの3分だったろうか。その時間は、まるでゆりかごの中で寝ているような安堵感と幸福感で満ちていた。

昂る気持ちをなんとか押さえつけ、湯が半分ほどに張った風呂に入った。意外にも、僕が風呂に入ると、今にも溢れそうになりながらもお湯は浴槽の縁目一杯に揺れて、溢れまいと耐えている。その絶妙とも言える湯量に、心がシンクロしてしまう。意識すればするほど、心は揺れる。もうお湯が溢れてしまいそうだ。そうしているうちに、女の子は水銀色をした分厚く大きなマットを用意してローションを曳いていた。ああ、もう限界だ。浴槽の縁に水が一筋伝っていく。まるで酸素を得た魚のように、そこから水は勢いを増しながら流れ出る。浴槽の中の僕の心は、今にも破裂しそうなくらい膨らみを増していた。


第3章


人肌より幾分か温かいローションが満遍なくマットの上に広がっている。その上に僕は腹を被せて、女の子に言われた通りに伏臥位になる。女の子は僕の足先の方を向いて背中に跨った。自分の目で直接何が起こっているのか確かめることはできなくなってしまった。背中にいる女の子を繊細に感じるために僕は目をそっと閉じた。背中の上で女の子はいたずらな笑みを浮かべている。それはこどものように無垢な笑顔で、とても愛狂しいものだった。

口を僅かに開いて、足の指を口に含む。左足の指5本に透き通って粘り気のある唾液が纏わりついている。それから指の間を弾力の強い舌が這っていく。こそばゆさと気持ちよさの間を行き来していくうちに、徐々にこそばゆさは消えていった。この感覚に最も驚いたのは他でもない自分だった。右足の小指に唾液が伝うときには、それは陰茎そのものともいえるほど敏感になっていた。

僕は一度足を下ろし、再び女の子は向きを変えて、背中一面にローションをたっぷりと塗りたくっていった。まずは肩から、そして肩甲骨をなぞりながら腰に降りていく。腰から続く緩やかな坂道を登り、女の子の手はついに尻に辿り着いた。左右2つの丘をそれぞれ登った官能的な手は徐々にその峡谷へと迫っていく。ローションが流れ込む峡谷にある、滝壺へと指先が優しく触れたその瞬間、気がつくとその峡谷に僕の声がやまびことなり響いていた。

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