Brain RE:Right

 バイト帰り。

 今日はシフトが午前だけだったので、帰る前にちょっとこの辺りをうろついている。




 夏本番。

 照りつけてくる太陽がやけに元気だ。


「暑いなー」


 文句を言いつつ、群青色の空を見上げる。



 この色は、私にとって大切だった人が好きだった色なのかな?

 なぜかそんな気がする。



 青さに少しだけ寂しさを感じてしまう。

 胸の奥の方がまた痛む。

 少し前までの私なら、この痛みは、大切なことを思い出せない私が背負うべき罰なのだと考えたと思う。

 でもね、今はちょっと違うんだ。

 この痛みは、きっと、証明なんだよ。

 私にとってその人が、かけがえのない人だったっていう証明。

 確かに、頭ではその人のことを忘れてしまったかもしれない。

 でも、きっと心には、現像されたフィルムみたいにずっと残っているんだ。


「だからね、心配しないで。私の心は、あなたのことを忘れたりなんてしないから」




 気づくと、川沿いまで来ていた。

 日本の夏特有のじめじめした風が、容赦なく私の身体にぶつかってくる。

 視線の奥の方では、もくもくと入道雲が上がっている。

 急に雨とか降られたら大変だな。

 だから帰ろうと思ったけど。


「まだだいじょうぶか」


 空に向かってぎゅー、って手を伸ばす。

 ちょっと前からの日課。

 こうしてたら、私の北極星ポラリスさんと繋がれてる気がして。



 ……え?

 昼間なのに北極星が見えるわけないって?

 わかってないなあ。

 昼間でも、星はずっとそこにあるんだよ。

 私にとっての北極星ポラリスは、ずっと。


 ……なんて。

 でも、そう考えると、ロマンチックでしょう?



 手を伸ばしていると、自然と笑顔になっていた。

 私は、今はまだ見えない北極星ポラリスに向かって叫んだ。



「私はーーーっ‼ やりたいことをやりたいように、してるよーーー!!!」



 これでいいんだよね、きっと。









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Brain RE:Right TRUE たいらかおる @i-pe

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