第2話 選択

 突然命を落とした17歳、死因は他殺。

意図せず望まない運命外の死には生還する権利があると生き返る可能性を与えられる。


生還の条件は10人の人間を殺す事

知り合いでなくとも構わない、赤の他人でも


「そうしなければいけないの?」


「しなくてもいいデスガ、そうなれば死神になってしまいますヨ。」

断れば死神となり、じぶんと同じように死んだ人のアシストをする羽目になる。


「どっちも嫌っ!」


「それほど嫌デスカ?

結構やりがいのある役割デスけどネ。」

目の前にいる男のように白状な態度を取るのは絶対に嫌だ、自分の人生をやり直す方が余ほど有意義だろう。


「私、生き返りたいっ!」


「そうデスか、わかりましタ。」

男がミサキに触れると、人のごった返す街の真ん中へと飛ばされた。蒸し返す人混みを誇る道路に突然身を置いてもこちらに視線を向ける者は一人もいない。


「アナタの姿は誰にも見えていまセン、死んでいるので当然デスヨネ。」


「ここって都会の真ん中でしょ?

式場の私はどうなってるのよ」


「いますよ、死体デスけどネ。」

魂のみを放り出された、出来るだけ人の多い場所へ。無駄に人が集まっていれば、10人を手にかける事など容易な所業であろう。


「サクッと殺っちゃいましょ、ネ?」


「簡単に言わないでよ...急には無理よ。」


「これだけの数がいるんデス、数人殺めても気付かれないと思いますけどネェ。」

両腕を大きく広げても、到底収まりきらない数に吐き気すらも覚える。死後の世界の住人ですら目に余る程の人数だ


「殺す人間は私が選ぶ、罪の無い人を私の為に死なせたくはないもの。」


「律儀ですネェ、頑張ってくだサイ。

わたくしはずっと見ていますカラ」


「…え、ついてくるの?」


「当たり前デス、生きるという選択をした時点でわたくしにはアナタを見守る義務がアル。最後まで見届けてますヨ、例え上手くいかなかったとしてモネ!」

命を拾おうが落とそうが自分次第、生きればサラバ死ねばようこそ。


「天国も地獄もありまセン

人生は選択の連続、ならば死も同義デス。どちらを選んでも失敗ではなく方向の転換、何も間違ってはいないのデス。」


「…よくわからないけどこれからずっとついてくるのね、死んでも面倒な事ってあるんだ」

せめて自由であれば楽しめたのに

後を尾けられては落ち着く事も出来ない。


「で、誰を殺すか決めマシタ?」


「..あなたはアシストをしてくれるのよね、なら行きたいところにも連れて行ってくれるのかしら。」


「魂だけなら可能性デスヨ」


「充分よ、直ぐに連れていって。」

指を鳴らせば何処へでも、魂の移動など造作も無い雑務である。


「では行きますよ、ホイナッ!」

絶対服従では無いが便利な程に言う事は聞く

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