第54話 エピローグ
次の街に着いた。
私の移動は、王妃様に指示を仰いでいるので迷う事もない。また、仕事も尽きないな……。
本当に、今この世界はどうなっているんだろう……。魔物が多すぎる気がする。そういう時期らしいけど、まあ私は依頼を熟すだけだ。
私は、地図を広げた。
「ここって、第三都市カシアナの隣街なんだ……。こうなると王国を半周したことになるわね……」
ここで思う。
『メグのお店でシチューを食べたいな』
ちょっと、寄り道してもいいわよね? 王妃様もそれくらいなら許してくれると思う。
それだけの功績は挙げてると思うし。
なにより、資金面で潤っているはずだ……。多分だけど。
街の入り口地で衛兵にギルドカードを見せると敬礼された……。
隊長の指示で、左右に衛兵が綺麗に並んだ。
そういうのは要らなんだけどな……。A級冒険者は、面倒だ。
「ありがとうございます」
アウレリアさんの真似をして、愛想笑いを行い、その場を後にした。
そう言えば、以前これで勘違いさせてしまった事もある。気を付けよう……。
◇
「……賑わっているわね」
街中は、人でごった返していた。
特に商人が多い。
地図を見るけど、ここはまだ都市じゃない。街道沿いの宿場町のはずだ。
ここで、声をかけられる。
「お嬢さん、この街は始めてかい? 今日はお祭りだから遊んで行きな」
そちらを向く。露天商のようだ。
「ありがとう、おじさん。それと、飲み物を一つくださいな」
貨幣を渡して、飲んでみる。
知らない味だ……。王都でも飲んだことがない。美味しいかもしれないわね。
「どうだい? 最近はやり出した『みっくすじゅーす』というやつなんだ。流れの錬金術師が教えてくれてね。帝国まで売りに行った奴もいるほどだ」
ふ~ん。流れの錬金術師か……。
それと聞いてみるか。
「この辺に、害獣となる魔獣っていませんか? 依頼を受けて来たのですけど」
露天商の表情が曇る。
「北の湖に魔獣が住み着いて、川が汚染されてるらしい。流行り病まではいかないが、体調を崩す奴が多くてな……」
「ありがとう、おじさん」
助かった。これで冒険者ギルドに行く手間が省けた。
それに、お祭りの日みたいだし、討伐していい報告に変えて貰おう。飾れば、お祭りの目玉になるはずだ。
この街の統治者にも恩を売れるし、一石二鳥だと思う。
「ちょっと? 嬢ちゃん? 行くのかい? 冒険者みたいだが
手をひらひらさせて、私は目的地へ向かった。
鎧を着ないとな。まあ、歩きながらでもいいか。
◇
私は、冒険者ギルドのドアを開けて中へ入った。
「いらっしゃいませ。本日はどの様なご用件でしょうか?」
冒険者ギルドは、街のお祭りの日でも誰かいるんだな。関心する。
「これ、北の湖に住み着いていた魔獣の一部よ。討伐して来たの。素材は、先に倉庫に運んでおいたから確認してね」
王妃様の手紙と、"王家の家紋の入った指輪"を出す。それとギルドカードだ。
「……承りました。少々お待ちください」
この人は、慣れているな~。冒険者ギルドの受付嬢として申し分ない。
その後、ギルド長が来て何時ものやり取りを行う。
それと、今日は冒険者ギルドでは食事を摂らなかった。私もお祭りに参加したい。
「お祭りみたいだから、魔物は広場にでも飾ってね。それと王妃様から手紙は来ていない?」
「……王家からは、なんの連絡も来ていませんぞ?」
良かった。暫く休憩にしよう。
明日は、メグとミラに会いに行くのもいいかな。
面倒な書類の手続きをして、冒険者ギルドを後にする。
宿は……、埋まってそうだな。
何時、王妃様から連絡が来るかも分からないし、今日は夜に移動しよう。最近は、夜間飛行にも慣れて来た。睡眠時間は、明日の昼に取ろう。
街を散策する……。
色々な出し物があり、見るだけだったけど楽しいな。
お芝居みたいな、時間のかかる物は見れなかったけど、結構楽しめたと思う。
それに、お腹も満たされた。
「……」
──ピク
誰かが、私の名前を口ずさんだ。その言葉は、精霊の耳でハッキリと捉えた。
その方向を向く……。ここで私の魔力感知に、何かが引っかかった。いえ、『何か』じゃない!
私は、無意識に駆け出していた。
人ごみをかき分けて進む。
「はあはあ、待って……」
だめ! これじゃ、追い付けない。
私は、霰魔法を起動させて、姿を消しながら飛翔した。
──パシ
私は、地面に降り立ち、その人物の袖を掴んだ。
視線が合う。
「……僕になにかご用ですか? 綺麗な……、お姉さん?」
こいつ……。
「見た目を変えたって無駄よ。私の魔力感知の高さは覚えているんでしょう?」
目の前の人物は、苦笑いだ。
教えを受けていた時は、20代の学者って感じだったけど、今の姿は、10代前半だ。
「……今はショタの格好をして、女の子を誑かしているの?」
「あはは。酷いなリディア……」
私は、ノアを抱きしめた。
「まだ、S級冒険者にも、国一番の剣士にもなれていなけど、やっと会えた……」
「うん、分るよ、成長しているね。頑張ったんだね、リディア」
「ノア、ノア……」
一度ノアを引き剥がす。
「それと、依頼を受けてるんだけど! 昔から何をしてるのよ!」
「う~ん。見つかっちゃったし、まあ、聞くだけ聞くよ。それにしても、僕に関する依頼ってなに?」
これで、私も進める。
止まっていた時間が、動き出した。
「二度と逃がさないからね!」
私は再度、ノアを抱きしめた。
元貴族令嬢は出会いを経て~自分だけの属性を見つけて世界を飛び回る~ 信仙夜祭 @tomi1070
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
カクヨムを、もっと楽しもう
カクヨムにユーザー登録すると、この小説を他の読者へ★やレビューでおすすめできます。気になる小説や作者の更新チェックに便利なフォロー機能もお試しください。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
関連小説
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます