第54話 エピローグ

 次の街に着いた。

 私の移動は、王妃様に指示を仰いでいるので迷う事もない。また、仕事も尽きないな……。

 本当に、今この世界はどうなっているんだろう……。魔物が多すぎる気がする。そういう時期らしいけど、まあ私は依頼を熟すだけだ。

 私は、地図を広げた。


「ここって、第三都市カシアナの隣街なんだ……。こうなると王国を半周したことになるわね……」


 ここで思う。


『メグのお店でシチューを食べたいな』


 ちょっと、寄り道してもいいわよね? 王妃様もそれくらいなら許してくれると思う。

 それだけの功績は挙げてると思うし。

 なにより、資金面で潤っているはずだ……。多分だけど。


 街の入り口地で衛兵にギルドカードを見せると敬礼された……。

 隊長の指示で、左右に衛兵が綺麗に並んだ。

 そういうのは要らなんだけどな……。A級冒険者は、面倒だ。


「ありがとうございます」


 アウレリアさんの真似をして、愛想笑いを行い、その場を後にした。

 そう言えば、以前これで勘違いさせてしまった事もある。気を付けよう……。





「……賑わっているわね」


 街中は、人でごった返していた。

 特に商人が多い。

 地図を見るけど、ここはまだ都市じゃない。街道沿いの宿場町のはずだ。

 ここで、声をかけられる。


「お嬢さん、この街は始めてかい? 今日はお祭りだから遊んで行きな」


 そちらを向く。露天商のようだ。


「ありがとう、おじさん。それと、飲み物を一つくださいな」


 貨幣を渡して、飲んでみる。

 知らない味だ……。王都でも飲んだことがない。美味しいかもしれないわね。


「どうだい? 最近はやり出した『みっくすじゅーす』というやつなんだ。流れの錬金術師が教えてくれてね。帝国まで売りに行った奴もいるほどだ」


 ふ~ん。流れの錬金術師か……。

 それと聞いてみるか。


「この辺に、害獣となる魔獣っていませんか? 依頼を受けて来たのですけど」


 露天商の表情が曇る。


「北の湖に魔獣が住み着いて、川が汚染されてるらしい。流行り病まではいかないが、体調を崩す奴が多くてな……」


「ありがとう、おじさん」


 助かった。これで冒険者ギルドに行く手間が省けた。

 それに、お祭りの日みたいだし、討伐していい報告に変えて貰おう。飾れば、お祭りの目玉になるはずだ。

 この街の統治者にも恩を売れるし、一石二鳥だと思う。


「ちょっと? 嬢ちゃん? 行くのかい? 冒険者みたいだが単独ソロじゃ無理だぞ?」


 手をひらひらさせて、私は目的地へ向かった。

 鎧を着ないとな。まあ、歩きながらでもいいか。





 私は、冒険者ギルドのドアを開けて中へ入った。


「いらっしゃいませ。本日はどの様なご用件でしょうか?」


 冒険者ギルドは、街のお祭りの日でも誰かいるんだな。関心する。


「これ、北の湖に住み着いていた魔獣の一部よ。討伐して来たの。素材は、先に倉庫に運んでおいたから確認してね」


 王妃様の手紙と、"王家の家紋の入った指輪"を出す。それとギルドカードだ。


「……承りました。少々お待ちください」


 この人は、慣れているな~。冒険者ギルドの受付嬢として申し分ない。

 その後、ギルド長が来て何時ものやり取りを行う。

 それと、今日は冒険者ギルドでは食事を摂らなかった。私もお祭りに参加したい。


「お祭りみたいだから、魔物は広場にでも飾ってね。それと王妃様から手紙は来ていない?」


「……王家からは、なんの連絡も来ていませんぞ?」


 良かった。暫く休憩にしよう。

 明日は、メグとミラに会いに行くのもいいかな。

 面倒な書類の手続きをして、冒険者ギルドを後にする。

 宿は……、埋まってそうだな。

 何時、王妃様から連絡が来るかも分からないし、今日は夜に移動しよう。最近は、夜間飛行にも慣れて来た。睡眠時間は、明日の昼に取ろう。


 街を散策する……。

 色々な出し物があり、見るだけだったけど楽しいな。

 お芝居みたいな、時間のかかる物は見れなかったけど、結構楽しめたと思う。

 それに、お腹も満たされた。


「……」


 ──ピク


 誰かが、私の名前を口ずさんだ。その言葉は、精霊の耳でハッキリと捉えた。

 その方向を向く……。ここで私の魔力感知に、何かが引っかかった。いえ、『何か』じゃない!

 私は、無意識に駆け出していた。

 人ごみをかき分けて進む。


「はあはあ、待って……」


 だめ! これじゃ、追い付けない。

 私は、霰魔法を起動させて、姿を消しながら飛翔した。



 ──パシ


 私は、地面に降り立ち、その人物の袖を掴んだ。

 視線が合う。


「……僕になにかご用ですか? 綺麗な……、お姉さん?」


 こいつ……。


「見た目を変えたって無駄よ。私の魔力感知の高さは覚えているんでしょう?」


 目の前の人物は、苦笑いだ。

 教えを受けていた時は、20代の学者って感じだったけど、今の姿は、10代前半だ。


「……今はショタの格好をして、女の子を誑かしているの?」


「あはは。酷いなリディア……」


 私は、ノアを抱きしめた。


「まだ、S級冒険者にも、国一番の剣士にもなれていなけど、やっと会えた……」


「うん、分るよ、成長しているね。頑張ったんだね、リディア」


「ノア、ノア……」


 一度ノアを引き剥がす。


「それと、依頼を受けてるんだけど! 昔から何をしてるのよ!」


「う~ん。見つかっちゃったし、まあ、聞くだけ聞くよ。それにしても、僕に関する依頼ってなに?」


 これで、私も進める。

 止まっていた時間が、動き出した。


「二度と逃がさないからね!」


 私は再度、ノアを抱きしめた。

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元貴族令嬢は出会いを経て~自分だけの属性を見つけて世界を飛び回る~ 信仙夜祭 @tomi1070

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