inu

@anernone

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今日もいつもと変わらない。朝となりで寝ている人間たちを起こす。こうすることで俺は朝飯にありつける。そのあとはこの家のもう一人の人間の相手をする。この家には三人の人間が住んでいる。中年の男女と若い男の3人だ。普段は朝食のあと中年の二人がどこかへ出かける。若い男も昔はどこかへ行っていたが最近はいつも家にいる。俺は暇ではないがこの男は毎日暇そうだ。どうやら「学生」から「ニート」へと変わったらしい。普段はこの家に近づく猫たちの監視で忙しい俺だがそんな忙しい日々にも暇はある。そういう時はこの男の相手をしている。人間の相手をするときは落ち着きが大切だ。ごく稀に取り乱して腹を見せることもあるがそんなのはごく稀だ。普段の俺は凛とした態度でこの男の相手をしている。はずだ。そんなこんなで日中を過ごして日が暮れると中年の男女が帰ってくる。たいていは女が先に帰ってきて俺の晩飯を作る。作るといってもいつも同じ飯だ。茶色くて乾燥しているつぶつぶのやつだ。これを食べて少しして俺は寝る。これが俺のいつもだ。

 そんな日々を何度か繰り返していたある日。

3人がもめていた。晩飯のあと俺は満腹の心地よい気持ちで眠気を待っていたところだった。なにやら若い男のことでもめているようだ。「お前はなにがしたいんだ?」中年の男が尋ねる。若い男はバツが悪そうに押し黙っている。いくらかの沈黙の後、中年の女が若い男を庇うようなこと言ってその日の話は終わった。それ以降も何度か同じような話し合いがあったが特に内容は変わらなかった。と思う。正直、食後の眠気であまりその話を聞いていなかったけれど。そうして三人の話し合いが日常になってきた頃。俺は若い男に病院へと連れられた。特に体調は悪くなかったが定期健診とやらのために連れてこられたようだ。病院はきらいだ。俺の天敵である猫の匂いで気分が悪い。そんな不快な気持ちを我慢し、医者の診察を我慢しやっとのことで家路についた。その家路で男が俺に何やら語り掛けてきた。しかし、その時の俺は病院を終えた解放感でいっぱいで男の言葉は何も聞こえなかった。

 また普段の日常を繰り返して迎えたその日、

男は昼間に家を出た。俺は特に気にしなかった。また「学生」にでも戻ったのだろう。そう思っていた。だが男は幾度日常を過ごそうとも帰ってこなかった。

 この家の男女が中年から老年へと変わろうとしていた。最近は俺も寝ている時間が増えた。なんだか体の調子も悪い。嫌いな病院に行く回数も増えた。もうそろそろ日常が終わりそうな気がしていた頃、家に青年が来た。お前も年を取ったな。そう言ってその男が俺をなでる。ああこの男はあの若かった男か。あの頃よりも自身に満ち溢れた様子だ。なぜだかほっとした気持ちになる。そして俺はこの男になでられることが好きだったのだとようやく気が付いた。

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