14、墓荒らしの悪夢
レジェンドが杖を剣に見立て構えると、いつのまにか杖が剣に変化していた。そして轟音が鳴り響く、レジェンドが超高速でナイトメアとの間合いを詰めた音だ、ヒカリ達が反応した時には既にレジェンドが剣を振り抜いた後だった。
「嘘だろ!?早いなんてもんじゃないぞ」
ナイトメアは超高速の剣撃をかわすことが出来ずに切り裂かれた、、、が当然これだけでは終わらない。ナイトメアの体は液体のように脈動し、切り裂かれた傷が塞がっていく。
「流体の体か、懐かしい技じゃのう」
ナイトメアの魔族としての固有魔法は流体の肉体だ、水面にどれだけ攻撃を当てても意味がないように、ナイトメアには打撃も斬撃も通用しない。
「じゃが、その技の対処方は既に知っておる」
レジェンドは再び、超高速の剣撃を放つ、更に今度は先程よりも凄まじいスピードで、先程轟いていた轟音は聞こえず音すらも置き去りにする一撃だった。
「お前の魔法は常に流体でいることは出来ない、ならば流体に変化する前に叩き切ればいいということじゃな」
「そんな弱点の対策を我輩がしていないとでも思っているのか?」
レジェンドが放った、先程よりも速い剣撃をナイトメアはあっさりと体を流体にしてかわしていた。
「相手の技の弱点を知っているのはお互い様だ、貴様の攻撃は速いだけで単純だ、構えを見ればどんな攻撃が来るか読むことは容易い」
「悪いがワシも自分の弱点の対策ぐらいはしておるよ」
突如、その場に轟音が鳴り響いて、ナイトメアの体が切り裂かれた。
「ぐおう!?」
ナイトメアはダメージを感じた瞬間に自分の体を流体にすることによって致命傷を避けたが、それでも皮膚が浅く切り裂かれていた。
「“雷刃ニ閃”、雷は光が輝いた後に遅れて音がやってくる、ワシの技は実体を持った残像を先行させ相手を切り裂き、その後に本体のワシが改めて相手を切り裂く技じゃ」
「だが一度見た技ならば、構えを見れば避けることが出来る」
「確かに1連続だけならそうじゃろうな、、、じゃがそれが2度も3度も何度も続けばどうじゃろうな?」
レジェンドは予告通りに構えを見て攻撃を見切る余裕がないほどの連撃を放つ、ナイトメアは流体化の魔法を解除出来ないでいた。ナイトメアの魔法は大きく魔力を消費する。
普段は必要なタイミングでだけ流体化することによって魔力を節約していたが今はそうは行かない、もし流体化を解除すれば超高速で切り刻まれてしまうだろう、だが解除しなければ直ぐに魔力切れを起こして流体化そのものが出来なくなる、ナイトメアの敗北は火を見るよりも明らかだった。
「言ったはずだ、我輩はあの時とは違うと」
レジェンドが剣撃を放った瞬間に地面から勢いよく樹木が生えて、レジェンドの体を吹き飛ばした。
「なっ!?」
「まさか、、あの魔法は!?」
クロナには、ナイトメアの使った魔法に心当たりがあった。ナイトメアが今使った魔法は先程までスコーンが使っていた相手の攻撃の魔力を植物に変換して受け流す魔法だ。
「それだけではない」
先程レジェンドの剣撃で与えた傷が癒えていく。
「ナイトメア、おまえさんは回復魔法は苦手だったはずだろう?」
「ヒーラよ、貴様に比べれば誰の回復魔法でも幼稚に見えるだろう。我輩だって人並みに魔法を使うことだって出来る、回復魔法だけじゃなくな」
そう言ったナイトメアの周りには幾つもの水の塊が滞空していた、滞空している水の塊から水の刃が触手のようにうねりレジェンドを狙う。レジェンドはその水の刃を全て切って対処する。
「お前の魔法は流体化と肉体強化だけじゃろう、全く出来なかったわけじゃなかったが、こんなレベルで使うことは出来なかったはずじゃろう?」
「今の我輩に才能による魔法の制限は存在しない、もちろん水属性に限定されるがな」
この場に居るナイトメア以外の者は知らなかったが、魔法の得意や不得意による制限に引っ掛からなくなるのはファッジの魔族としての固有魔法だ。
だがナイトメアはこれだけに止まらなかった、ナイトメアの大きな目から煙の涙が流れ、その涙は小さなナイトメアへと次々に変わっていく。
「何じゃか気持ち悪いのう」
「あれは確か魔女の森で戦ったマカロンって人が使ってた魔法」
「確かに四大魔王のナイトメアとしては貴様に勝つことは難しいようだ、、、だが悪夢の茶会・NO.0としては話は別だ、悪夢の茶会NO.0としての我輩の魔法は我輩に忠誠を誓って死んでいった、悪夢の茶会の会員の固有魔法を使うことが出来る、、、それが我輩の新たな力だ」
草原の植物達が、水の刃が、小さなナイトメアの分身達が、一斉レジェンドに迫る。地面の全てが、空中に滞空する水の塊が、この場に存在するあらゆるものがレジェンドの敵となる。
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「ヒーラさん!」
「どうした小娘?」
「小娘じゃなくてヒカリです。ヒーラさんは私達を守るためにここにいるんですよね?」
「ほう、おまえさん気付いていたのか」
「気付いたも何もあからさま過ぎますよ〜」
「それでどうした、守り方に不満でもあったか?」
「そういう訳ではないのですが、私達の方は大丈夫なのであちらの加勢に行った方がいいのではないかと?」
ヒカリ達の指摘に対して、ヒーラは特に反応を示さずにまた傍観者に戻った。
「、、、あのう、ヒーラさん?」
「ジャンケン」
「えっ?」
「私はどっちがナイトメアと戦うかのジャンケンに負けたんだ、だから私にはあいつが生きてる以上ナイトメアと戦う権利はない」
「権利って!そんなこと言ってる場合じゃ」
「ヒカリと言ったな、悪いが私等はおまえさんとは違う、目を見れば分かるおまえさん世界を滅びないと思ってるだろう」
「はいっ!」
「随分と元気のいい返事だな、まあいいか私等は世界が滅びると思っているからな、どうせあと3年の世界だ、やるべきことよりもやりたいことだ」
「、、、つまり、、どういうことですか?」
「あいつは1人でぶっ飛ばしたい」
身も蓋もない理由だった。
「それに、、、それにだ、あいつは仮にも伝説の英雄殿だ、おまえさん達が思ってるよりも弱くはない」
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「ナイトメアよ、確かにお前の魔法は厄介じゃのう」
レジェンドは雷撃の魔法を放ち、草原の植物を焼き払う。それに巻き込まれてナイトメアの小さな分身達も消えた。
「無駄だ!分身も植物も何度でも呼び出せる」
その言葉通りに、ナイトメアはすぐさまに電撃のダメージを植物に変えた。更に煙の涙を流して新たな分身も生み出す。
だがレジェンドはそれでも構わずに電撃を流し続けた。ナイトメアはその電撃を植物に変換し続けた、植物が焼き払われては生えてを繰り返しやがて、電撃が止んだ。
「貴様!何のつもりだ!?」
電撃が止んだ理由はレジェンドの魔力が切れたからだ、レジェンドは残った全ての魔力を使い電撃を流し続けた。
「敗北を悟り自棄になったか?」
「違うのう、魔力を使い切らなければ使えない技があるんじゃよ」
「!?、、、何だこの魔力のオーラは、、いや本当に魔力なのか?」
先程までもレジェンドは肉体を強化するために、風属性の緑のオーラを纏っていたが、今は魔力がなくなりオーラを纏えるはずがなかった。しかし、ナイトメアは確かにレジェンドがオーラを纏っているのを感じていた。
「まさか!?この魔力は!」
「無属性の魔力だよ」
この世界に確認されている魔力の属性は火、水、風、土、光、闇の6種類だが、実はこの6種類以外にも魔力の属性が存在すると言われている。それが無属性だ、無属性が確認されていないのには理由がある、他の属性は生まれつきに持って生まれるのに対して、無属性は修練の結果、習得出来る特殊な魔力だ。
「ワシには才能がなくてのう、無属性の魔力を習得するには本来の魔力を捨てなければいけんのじゃ」
火、水、風、土の4属性にはそれぞれ相性が存在する。光と闇の2属性は4属性の全てに強い、だが無属性には得意な相手が存在しない、その代わりに苦手な属性も存在しない。つまり魔法の属性による相性を無視して攻撃することが出来る。
例えば、スコーンの魔法は土属性の魔法を変換出来ないが土属性以外には無敵だ、この魔法を破るためには本来ならば土属性の使い手が必要だが、無属性はそういった属性の縛りに引っかからない。
「これでお前の流体の体も植物による受け流しも無意味じゃ」
「舐めるなよ、それはつまり貴様の雷の魔法がなくなったということだ、その魔力も風前の灯だろう、そんな状態で我輩に勝てるとでも思っているのか」
「思っているさ、だからこうやってお前の前に立っておるんじゃ」
2人はもう言葉を交わすことはなかった、ナイトメアは新たに煙の涙で分身をだし、それを再び自身で吸収した、そうするとナイトメアの筋肉が膨れ上がった、更に肉体強化の青いオーラも今までよりも、より輝きがます。
レジェンドとナイトメアはお互いの正面から渾身の一撃を放つ。レジェンドはナイトメアの渾身の殴打を左手を犠牲にして受け流し、剣でナイトメアの大きな目を貫いた。
レジェンドが剣を引き抜くと、ナイトメアの大きな目に空いた穴からは先程までの煙の涙とは違う、黒いガスのようなものが流れ出た。
「ワシの勝ちのようだな、ナイトメアよ」
「残念だが、、、そのようだ」
「お前はこのまま消えるだろう、だがその前に聞いておきたい」
「何だ?」
「お前、何で今回は逃げなかった、お前はワシ等と遭遇しないために、派手に動く時は常に危険察知の出来る仲間を側に置いて行動してたはずだ」
レジェンドの言う通りでナイトメアはレジェンド達との遭遇を避けるために、自らが動く時にはファッジに危険察知をさせてレジェンド達との遭遇を回避していた。だが今回は違った何故かナイトメアはヒートとの戦いをファッジに任せて遠くに行かせていた。
「お前は終わりにするつもりだったんじゃろう、勝敗の方は知らんがもう疲れておったんじゃ、どうせ終わる世界を滅ぼすことにな」
ナイトメアからの返事はなかった、気付けばその場にはもぬけの殻となった、黒い包帯だけが残っていた。
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