8、悪夢の魔王
ヒカリは気がつくと草原にいた、記憶が正しければヒートから貰った鍵を使って檻を開け、逃げるために廊下を走っていたはずだ。
「どうやら、意識を奪われて運ばれたようだな」
直ぐ近くにクロナもいた、どうやら同じタイミングで目が覚めたらしい。連れ去られた可能性が高いにしては、お互い拘束などはされておらず手足も自由に動かせたが。
「ヒカリ、クロナ、、、あれ!?」
ココロも近くにいたが何か様子がおかしい。
「どうしたの?」
ヒカリとクロナがココロの指差す方向を見ると、そこには異質な何かが立っていた。
それは頭から足先まで黒い包帯で覆われていた。しかしその程度ならば別におかしな所はない、ヒカリ達が異質さを感じたのはその雰囲気だ。目の前の人物から感じたのは、酷い殺され方をされた死体を見た後にその犯人に出会ったそんな感覚だ。ヒカリ達が感じた異質さの正体は絶対的な恐怖だ。
その人物はヒカリ達の目が覚めたことに気がついたのかこちらに振り向いた。その人物の顔を見た時ヒカリ達は更にギョッとした。その顔は一部分だけ包帯が無く露出していたが、その部分は顔の中心にある大きな目だ、顔の三分の一を占めるその大きな目はその者の放つ異質な雰囲気も相まって、魔族の見た目に偏見を持たないヒカリ達にも見た目で恐怖心を与える。
「お嬢さん方、目が覚めましたかな」
黒い包帯の人物は自分の異質さを理解しているのか、なるべく相手を怖がらせないようにヒカリ達に声をかけて来たが、ヒカリ達が感じたのは偏見への罪悪感ではなく、更なる恐怖心だった。
「逆効果だったか、安心しろ貴様等に危害を加えるつもりはない」
「、、、貴方は何者?」
黒い包帯の人物の言葉を信じたわけではないが、ヒカリはようやく恐怖心が薄れ、喋ることが出来た。
「我輩は悪夢の茶会・NO0、、、いや」
黒い包帯の人物は途中で名乗るのを辞めた。
「貴様等に名乗るのにもっとふさわしい名があったことを思い出した」
ヒカリ達には、そのもう一つの名に心当たりがあった。
「他の3人と並べて語られることは屈辱だが、この名以上に我が存在を知らしめる名もあるまい、我輩は四大魔王が1人、ナイトメア」
「四大、、、魔王!」
四大魔王の存在を知らない者は、この世界には存在しないだろう、それぞれが世界を滅ぼす程の力を持った個人だ。
「我輩は貴様等に頼みがあり連れてきた」
「ナイトメア様それは私が説明しましょうか?」
そよ風が吹き、気づけばナイトメアの隣にファッジが立っていた。
「ファッジ!」
先程まで恐怖で動けなくなっていた、クロナがファッジに飛びかかった。
「よくも、、、よくも姉さんを!」
クロナは闇属性の肉体強化による紫のオーラを放ちながら、ファッジに殴りかかる、攻撃が命中し、ファッジは吹き飛び倒れるが。
「クレアだけじゃなくて、ヒートにもそっくりだね、人の話を聞かずに殴りかかるとことかさ」
ファッジは何事もなかったかのように立ち上がる。
クロナの咄嗟の行動に恐怖が更に薄れたヒカリがクロナの援護に向かうが、そこにタイムラプスの植物映像を思わせる動きで地面から新たな人物がヒカリの道を塞ぐように現れた。
「悪夢の茶会・NO1、スコーン」
「そこをどいて!」
ヒカリは光属性の肉体強化による白いオーラを放ち、スコーンに蹴りを繰り出す。しかし、ダメージを受けたのはヒカリの方だった。
「しまった、ダンナ、こいつの足の骨、多分ヒビが入ったが計画には問題ねえか?」
ヒカリの攻撃が当たる瞬間、ヒカリの肉体強化は消えて変わりにスコーンの周りの植物が成長した。その結果、ヒカリは肉体強化の加速による勢いをそのままにスコーンの岩のように硬い体を生身で蹴ることになった。
「問題はない、あちらには優秀な治癒術師がいる」
ヒカリの足が炎に包まれ、炎が消えるとヒカリの足は治っていた。
「すげーな!、これなら計画にも使えそうだな」
「貴方達は何を企んでるの?子供達はどこにいるの?」
「ファッジ、情報の共有具合に1番詳しいのは貴様だろう、話してやれ」
「わっかりました」
ファッジは自警団側にも属していたので、ヒカリ達が知らない情報のみを的確に話せる。
「子供達はもちろん無事だよ、今は私達、
「なんだと!?人を魔物に変えることなどできるというのか?」
「出来るよ、それには光属性と闇属性の魔法が必要だけどね」
光属性と闇属性の魔力を持つ者は希少だ。だからヒカリとクロナを連れ出した。
「それなら何でココロまで」
「その方法は肉体の変化によるダメージが激しくて殆どがそれに耐えきれなくて死んじゃうんだよ、でもココロちゃんの治癒魔法を使えば変化のダメージを治してより効率的に魔物化を進められるんだ。それにしてもクレアにクロナちゃん達、仲良し3人組のことを聞いた時は本当に驚いたよ、鴨が葱を背負って来るってこのことかってさ」
「何で子供達を!?」
「あっ、それは大人だと駄目なのかってことかな、別に大人でも魔物に変えることは出来るけどさ、でも子供を魔物にする方が色々と残酷でしょ」
「何の為にそんなことを」
ヒカリは素朴な疑問をなげかける。
「我輩の存在を知ったなら、別に疑問に思うこともあるまいよ」
ナイトメアは言う、簡単なことだと。
「世界を、、、破壊するためだ」
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