5、風の気まぐれ

 ヒートがヒカリ達を閉じ込めてる部屋に入ると、ヒカリ達は慌てて何かを隠すような動作をしていた。


 「お前等、今、何を隠した?」


 「な、何も隠してななないですよ」


 ヒカリは慌てた様子で誤魔化すが、その慌てぶりは白状しているようなものだった。


 「まぁいいぜ、どうせお前等じゃ、まだこの檻は壊せねぇからな」


 「壊すなんてとんでもない、それよりもヒートさんはどうしてここに?」


 クロナが質問する。


 「言うまでもないだろう、見張りだよ」


 「えぇ、でもあたし達、レディですよ、見張りが男性っておかしくないですか〜」


 「何がレディだ、このお転婆どもが!」


 「!?」


 ヒカリ達は例え図星だろうと、流石にお転婆発言は見逃せないと反論しようとするが、その勢いで後ろに隠していた、木刀が出て来てしまった。


 「「「あっ!?」」」


 「それで良く反論しようとしたな、というかどっからそれ用意した、武器の類はクレアの奴が没収したはずだが?」


 「たまたま、偶然、檻の中にあったんですよ、わお、不思議」


 ヒカリが不自然に誤魔化そうとする。


 「こんな所にこんな物があるなんて気付きませんでしたよ、ははは」


 クロナもあくまで、知らなかったていで話しを進めるが。


 「そうそう、普段から武器を持って戦わない、治癒術師のあたしが武器を隠し持ってたわけじゃないですよ〜」


 ココロは誤魔化そうとして全部を話してしまった。


 「はぁ、クレアには黙っといてやるから、こっちに渡せ」


 ヒカリ達はクレアの名前が出たからか、あっさり木刀をヒートに渡す。


 「そういえば、何故、見張りが姉さんではなく、ヒートさんなのですか?」


 レディどうのは冗談にしても、こういう時の見張りなどは基本、クレアが担当することが多い。そもそもヒートは普段、別の地区の担当なので、顔を合わせる機会事態が少ない。


 「まぁ、交代制ってことだ、今は俺の番だが、その内クレアと替わる」


 「誤魔化さなくていいですよ、クレアさんから聞いてますから、他の皆さんは敵のアジトに向かったんですよね〜」


 「何だ、クレアの奴、そこまでお前等に話してたのか、そうだぜ俺以外の勇気の象徴ブレイブ・フォースが全員で敵のアジトに攻め込んでる所だ、俺はここが手薄にならないように留守番ってとこだな」


 「えぇー、勇気の象徴ブレイブ・フォースが全員集合して、敵のアジトに!」


 「お前、何驚いてんだ?、、、まさかクレアから聞いてたって嘘か!?」


 「へへへ〜」


 ココロは情報を聞き出すために咄嗟に嘘を付いた。クレアの名前が出るとヒートは甘くなるので、勝算はあったが、我ながら上手く言ったとココロは誇らしげだ。


 「お前等、木刀を隠し持ってたのを黙ってる話しは無しだ」


 「話しが違いますよ、“兄さん”」


 木刀の件がクレアにバレるのはまずいと思ったクロナは、ヒートの甘さを引き出すために雑に媚びを売る。


 「あのなぁ、お前等、勘違いしてるかもしれねぇが、俺は別に、、、」


 ヒートが言いかけた時、ヒートの連絡端末に通信が入る。


 「どうした、ファッジ、アジトに突入する時の連絡はクレアの担当だろ」


 相手は勇気の象徴の1人ファッジだ。


 「それが、それが、大変なんだよ!」


 ファッジは慌てた様子で連絡をしてくる。


 「落ち着け、何があった!」


 「罠だったんだ、敵に囲まれて、クレアとグランドとも逸れちゃったし、連絡も取れないの!」


 「他の奴から連絡はなかったぞ、勇気の象徴ブレイブ・フォースが3人もいて、何でそんなことになるんだ!?」


 「いたんだよ、四大魔王が、それに、それに、敵の幹部も私達と互角かそれ以上に強くて、どうしようヒート!?」


 「わかった、今から俺も向かう、それまで何とか凌げ」


 ヒートは通信を切る。


 「ということだ、俺は向こうに行かなくちゃいけなくなった」


 「姉さんは無事なんですか!?」


 「無事に決まってるだろ、あいつを誰だと思ってんだ!」


 ヒートは檻の中に鍵の束を放り投げる。


 「これは?」


 「その中にその檻の鍵も入ってる、それをお前等が持ってれば、他の奴は檻は開けれねぇ」


 そう言って、ヒートはクレア達の元に向かった。


 「これ鍵を開けて、付いてったらまずいよね〜」


 ココロは言うが。


 「あぁ、私達が言っても足手纏いになるだけだ」


 こういう時に率先して付いていこうとするクロナが付いて行くことを否定する。先程のマカロンとの戦いで実力差を理解していたからだ。


 ヒカリ達が自分達の力不足に落ち込んでいると、部屋に誰か入ってきた。


 「いやー、上手くいってよかった」


 「何で、何で、貴方がここに!?」


 クロナは動揺していた、何故なら相手はここにいるはずのない人物だからだ。


 「ファッジさん、確か敵のアジトに向かってピンチのはずじゃ」


 部屋に入ってきたのは、先程、ヒートに助けを求めていた勇気の象徴ブレイブ・フォースの1人ファッジだった。

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