第7話 メグ、俺は君のマスターじゃない

 あの日メグを掴んでから、あっという間に三日が経過した。

 ポストに入れるための封筒にメグの居るスマートフォンを持って、俺は病院を退院した。

 心配するお母さんを先に帰らして、俺は封筒を近くの海に持って行った。


 その日の波は荒かった。風は吹いていなくて、ただ波の寄り返す音が耳に残った。


「俺はメグのマスターじゃない。」

「まあ、そうだけど」


 砂浜で俺は叫んだ。メグは寂しそうに返事をした。

 病院を出てきた時に見た青空と同じだった。ただ、太陽が雲に隠されたのか周りは暗く影ができていた。


「マスターになる資格なんてない。」

「そんなこと、」


 俺はメグを無視して続けた。


「だけど俺は感じたんだ、メグが一番信頼できるって。」


 ケミカルソーダ社の返送担当番号までしっかり書いてあった封筒を引き裂いた。

 メグが見えるように、目の前で。


「だからメグ、俺は君の"相棒"になろうって決めた。」


 俺は封筒を裂き続けた。

 引き裂いて、引き裂いて、砂と同じになるくらい引き裂いた。

 贖罪だとか、許されないだとか、間違えてもそんなこと思わないように。


「マスター、、、」

「だから、メグ。俺はマスターじゃない。」


 メグが画面の中で泣いていた。

 雲が太陽を隠すのをあきらめて、僕らの周りには明るく白い砂浜が広がっていた。


「メグ、、、」


 しばらく返事がなくて、少し心配をしてしまう。

 今度は、メグが遮るように大声で叫んだ。


「よろしく、相棒!」


 メグが笑った。嬉しそうに、楽しそうに。

 スマートフォン越しでもかすかに聞こえたメグのシンオンは、今まで聞いたことないぐらいきれいに高鳴っていた。


「おうっ!」


 そういって俺たちはこの日を境に、相棒になった。







 "捨てられた"メグと、"捨ててしまった"俺の物語は、まだまだ続く。



         --------------第一章 出逢い fin-----------

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廻る新木 異球志秋 @ikyuusiaki

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