第6話 栄光は善意のみ、悪意は害をなす
あの後、俺たちはすぐにホームにあった医務室に運ばれた。そして、治療の傍ら警察の事情聴取を受けた。
あと1秒でも遅かったら死んでいたという状況下でメグを助けたことを褒められ、緊急停止ボタンを押そうとした人間が野次馬の波にのまれて遅くなっていたことを伝えられた。
「この世界は悪意と善意によって成り立っていて、君たちは善意があふれていたから善意によって命を繋げた。だからその善意を大切にしてくれ。」
「もし君たちでは対処できない大きな悪意が迫ったら連絡してくれ。必ず助けるから。」
聴取の中で仲良くなった刑事の柏木さんがそう言って、俺たちを褒めてくれた。
結局そんなに大けがではなかったのだが、念のため病院に運ばれて検査を受けた。
行く先々、どこもメグと俺を褒める人間ばかりだった。
嫌だったことといえば、お母さんにメグを拾ったことがばれたことだけ。
「自分の命も、他人の命も、どっちも大切だから何とも言いようがないけど大切にしなさい」
お母さんは怒っているんだか褒めているんだかわからないことを口走って、泣きながら俺を抱きしめた。
生きているってこういう事なんだな、って感じた。
「あれ、」
なぜか胸が痛んだ。
メグを入れていた方じゃない、何ともないはずの胸が痛んだ。
その日は結局忙しくて、学校は休んだ。
あの日以来、初めて学校を休んだ。
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