第8話決着

 綺麗なフォームで両足交互に低い位置で速いテンポで回数をこなす孤花がみえる。孤花は努力家だ、きっとこのためにも練習をしたのだろう。

 響も負けじとボールをセットし直して始めるが2〜3回で何度もミスをしてしまう。


「四季ちゃん頑張って!」


 計測をしている美玲の応援の声。

 響は一度深く深呼吸をしてもう一度始める、右足のみでボールを上げ続ける、いかにもサッカー初心者のような動きで回数を重ねる。

 計測をしている美玲が8...9...10と声を出しながら数えてくれる。

 その頃数メートル離れたところで「30!」と声が聞こえて、孤花が30回達成して、リフティングをやめたことが伝わった。

 響はそのままリフティングを続け、20回を超えたあたりで左足に違和感を感じた。


(これ以上続けると攣るかも知れない、左足だけに負担をかけすぎた……)


 これが響の体ならなんの問題もなかっただろう、だが普段から運動不足の四季の体にはたったこれだけの運動で悲鳴を上げるほどだった。


「あ、やば、あっごめん!!」


 そこで不幸な出来事が起こる。近くでリフティングをしていた他のクラスメイトがミスをしてボールがこっちに飛んできて四季の体にはあたり、不安定なリフティングをしていた響は26回で途切れてしまう。


「勝ちは勝ちね」


 そう後ろから孤花の声が聞こえる。振り返ると孤花は不敵に笑っていた。

 その表情なら響は少しイラついた。


「私、負けず嫌いなの」


「あら、今まで私に対して無抵抗だったのに、先輩と何かあって自信を得たの?でももう時間はないわよ」


 それを証明するかのように教師が「残り10秒」と声を上げる。


「時間切れになっても、その時続いていれば、それが終わるまでは継続していいルールだったよね!美玲ちゃん!」


「え、あ、確かそう言ってたね先生」


 突然話を振られ驚きながらも答えをくれる美玲。響はもう一度ボールをセットし最後のリフティングの準備をする。そして1回目を初めたタイミングで「1分経過!今続いてるやつは最後までやれー」と声が聞こえる。


「もう、慣れた」


 そう誰にも聞こえない程の小声で独り言を呟く響。


「凄い!」


 そう美玲の声が聞こえる、しかしその声は美玲だけではなく他の女子たちからも聞こえてきた。今時間は終了し、今や美玲以外はリフティングのテストを終えていたので、クラスメイトほぼ全ての視線が集まる。

 響はその圧倒的な運動センスで四季の体を完全に使いこなしてきた。響は両足、両膝まで使い30回を終わらせた。

 が、まだ終わらせず31回目のリフティングをして終えた。


「これでぇ、はぁはぁ、私の勝ち!」


 響は体力の限界が来ながらも孤花に言った。孤花はとても不満そうな顔をしていた。なぜかその顔を見てざまぁみろ、と喜びの感情が湧いてきた。響はそれを振り払い教師に回数を伝えに行った。

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芋な女子と入れ替わったので美少女にする話 はす @tigerSun

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