第7話 勝負

「今からテストを始めるから2人1組で組んで先やる方を決めて散らばれー」


 教師がそう声をかけると皆それぞれ仲のいい相手と組み始める、響は一瞬どうしようかと思ったが、美玲が近くに来て「組も〜」と言ってくれたので響はそれに応じる。


「先やる?後やる?」


 美玲がそう聞いてくる。響は先ほどルールを聞いたが、もしものために後にやるべきだと感じた。


「先やってもらってもいいかな?ちょっと私自信なくて」


「分かったよ」


 美玲はボールを足にセットして、合図を待つ、後にやる人は座り、先にやる人の数を数えるため、響は地面に体育座りをする。

 周りも準備が整ったのを確認すると教師が声を掛けて、一斉に始まった。



「う〜……5回かぁ……」


「よく頑張ったよ!お疲れ様」


 美玲は2〜3回続けてミスしてを繰り返して、なんとか一度だけ5回まで繋がったのでこの記録になった。

 サッカーをやったことない初心者ならばそんなものだろう。あたりを見渡しても大体みんなそんなものだった、一部サッカーを部活でやっているであろう人が最大回数の30回までやってたり、おそらく他の運動部で運動神経の良さそうなひとが20前後まで繋げられている印象だった。


「次は四季ちゃんの番だね!頑張ってね」


 美玲はもう立ち直ったのかこっちの応援をしてくれる。響は「うん」とだけ答えて、ボールをセットすると、孤花がボールを蹴りながら近づいてくる。


「四季さん、私と回数で勝負しません?私が敗けたらさっきの発言を許す。私が勝ったら、響先輩と何を話していたか教えて、そしてもう先輩に近づかないで」


 そう一方的に話してくる孤花、それにこっちが応えようとするが、それに被さるようにさらに一方的に話してくる


「今までは部活のマネージャーとして多少関わりがあるくらいだから良かった、しかもあなたから話しかけるわけじゃなくて、大体は先輩の方からだったから我慢してた、だけど今回はあなたから会いに行ったそうじゃないですか、しかもイメチェンまでして、そんなにアピールまでして!」


 これは完全に誤解で、四季の体にはその孤花が惚れた響がいる、しかもイメチェンをしたのも響で会いに行ったのも響だ、だが入れ替わりの事情など孤花は知らないし予想できようもない。


「分かった、受けるから……」


 もしここで断ろうものなら孤花はさらに暴走するだろう、受けるしかない。だが負けるわけにはいかない、これからも入れ替わりについての話し合いは必須だ。


(サッカーは苦手じゃないけど、どうも頭でやろうとしていることに体が追いつかないんだよな)


響は運動神経がよく身体能力が高いためほとんどのスポーツをこなせるし球技は得意な方だ、それゆえに、そのどちらも大きく劣る四季の体とのギャップがあり上手く扱えないのだ。

 

「後半組始めるぞー、3.2.1スタート」


 そう教師が声を上げて始まった30秒間のテスト。響はボールを足で上げてリフティングを開始する……が一回も出来ずにボールは明後日の方向へ飛んでしまった。

 響きがボールを追いかけながら、ちらっと見るとリフティングを連続で成功させている真剣な姿が見えた。

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