第67話 リュン殿下の来訪 2
授業が終わり、教官が教室から出て行ったとたん、アジェンナ人の生徒達がいっせいにマルの方に駆け寄り、机を取り巻いた。
「あなたはアジェンナ王子様なんですか!」
級友達にいきなり改まった調子で話しかけられ、マルは吹き出しそうになった。
「まさか! リュン殿下がそう言ったのは何かの冗談だと思うよ」
「すごく真剣そうだったよ。冗談っていう風には見えなかったけど」
カサン人の生徒達も、遠くの方から「一体この小柄なアジェンナ人の同級生は何者なんだ?」という風にマルを見ている。
「本当に、本当だよ! 王子だなんて! どうしてそんな事言われたのか分からないよ」
その時、マルをぐるっと取り巻いていたアジェンナ人の生徒の壁の向こうからモク・イアンが言った。
「アジェンナ王家は昔からピッポニアとの繋がりが深いと言われているが、君、まさか……」
マルは、「自分は王子どころか物乞いなんです」と真実を言うわけにもいかず、ぶんぶんと頭を振った。しかしマルを取り巻いていた生徒達は、「さあ、どうなんだ」という風に息を詰めて黙り込んでいる。
「アッハッハッハッハ!」
いきなり笑い声を立てて沈黙を破ったのはシンだった。皆の視線はいっせいにシンに注がれた。
「そりゃあ、リュン殿下がハン・マレンを王子だって思うのは当然さ! こいつ、いかにも『王子様』って感じだもんなあ~! でもな、驚くなよ! 本物の王子は何を隠そう、この俺さ!」
周りはいっせいに笑いの渦に包まれた。
「いや、それはあり得ないね。猿顔でがさつな君が王子だなんてあり得ない」
モク・イアンが嫌味を言った。
「そうだな。せいぜい漁師か肉屋といったとこだな」
「いやいや、もっと賤しい、妖怪ハンターか何かの倅かもしれないぞ!」
マルはシンの袖を引き、教室の外に出た。あと一秒でもその場に留まる事は耐えられなかった。
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