第3話 ありがとう



頼りないお兄ちゃんでごめんね

でもマシロのことは大好きなんだ…



そう考えていたら無意識にマシロの部屋の前にいた。



「ん?ソウか。マシロの部屋には入っちゃダメだぞ。」


「なんで?」


「ソウにマシロの熱が移ったりしたら大変だからな。しばらくは我慢だ。」


「そっか…早く元気になって欲しいな。」


「そんな心配そうにしなくても、またすぐに元気に遊べるから、な?」



わかった。

マシロが元気になるまでは我慢するよ。




マシロと一緒にいれなくなってから毎日考えるんだ。

ぼくはマシロと違うからみんなの言葉は分かってもお話は出来ないし、何よりぼくの言葉は皆には届かない…

それに守ってあげることもできない。










ぼくも人間だったらよかったのに












なんで僕はみんなと違うんだろう








パパもママもマシロも大好き

ぼくを家族にしてくれた大好きな人達

色んな友達がいたけど、狭い箱の中から救ってくれた大事な家族


でもぼくは弟であるマシロを守れなかった

こんな頼りないぼくなんてお兄ちゃん失格だよね




ごめんね。





それから数日後、マシロの熱も下がって元気になった


やっとマシロに会える!


でもこんな頼りないお兄ちゃんには会いたくないかな…

嫌われちゃうかな

そうなったら嫌だな




「ソウ!!」



!!

マシロ…

何となく身構えちゃう




「この前僕が熱出したときパパに教えてくれたんでしょ?ありがとう!!」





今、ありがとうって言ったの?

ぼく何もできなかったよ?

パパが帰ってこなかったら助けられなかったのに

ぼくの事嫌いにならないの…?



「やっぱりソウは僕のお兄ちゃんだね!」



お兄ちゃんでいていいの?

本当に?

なんだか視界が歪んできちゃった



「なんだよソウ、足にすりすりしちゃって。なに嬉しいの?」



そうだよ、嬉しいんだ

だってマシロが家族だって言ってくれたんだ

こんなに嬉しいことはないよ



「そうだ、今日は僕も元気になったし一緒に外に行こう?」




外?

いつもぼくが窓から見てるだけだったお家の外だね!

行こう!!

まさかマシロと一緒に外に行けるなんて思ってもいなかった。

ほら、早く行こう!



「待ってよソウ!そんなに急がなくても外は逃げないよ!」



だって待ちきれないよ、マシロとお散歩だよ?

楽しみに決まってるじゃん!!







キィーーーーーーッ





一瞬何が起きたのか分からなかった

だんだんと意識がはっきりしてきて分かる






痛い




ものすごく体が痛い





そこでやっと大きな固いものと当たったんだってわかった

ママにもそれには気を付けろってさんざん言われていたのに

皆に怒られちゃうね


そうだマシロは?


良かった

無事みたいだ

マシロが無事ならいいや

ぼくの事家族って言ってくれてありがとう



「ソウ!ソウ!!嫌だよ、なんで…僕は君を助けることが出来ないの!?」




マシロ、そんなに泣かないで

ごめんね




大好きだよ
















あれ?まだ目の前がチカチカするけど、目の前にマシロの顔がある気がする…?

気のせい?



「ママ!パパ!ソウが目を覚ましたよ!!」



あれ、ぼく…生きているの?

これは夢?




「目を覚ましてくれてありがとう。痛い思いさせちゃってごめんね。僕の大事なお兄ちゃんなんだから勝手にいなくなっちゃだめだよ。」




ごめんねマシロ

そうだよね




弟を勝手に残していなくなれないよね。

僕を助けてくれてありがとう。









-Fin-

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僕は君を助けることができない 銀じゃけ @silver_syaaake

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