カエルたちのお話

かめさん

カエルたちのお話

 カエルが二匹おりました。ある日二匹は壺の中に落ちてしまいました。そこにはミルクがなみなみと入っていて、二匹は白い湖のようなミルクに溺れてしまのではないかと思いました。


 なんとか外に出ようともがきます。しかし、足をいくらジタバタさせても、外に出られません。壺の縁は想像以上に高いところにある上に、ミルクでは踏ん張りがきかないのです。壁に足を当てることができたとしても、つるりと滑ってしまいます。体も心も疲れてしまった一匹が言いました。


「僕はもう嫌になっちゃったよ。もう諦めよう」


「駄目だよ。諦めたらおしまいだよ。こうしてジタバタして居れば助けがくるかもしれないし、ミルクが固くなるかもしれない。そんな話を聞いたことがあるんだ」


「じゃあ君はジタバタしていればいいさ。僕は助けが来るまでに疲れ果てて死んでしまうと思うけどね。ほら、力を抜くとこんな風に浮くんだよ。この方が体力温存できるってものさ」


 そう言った一匹は体の力を抜き、お腹を膨らませてぷかりと浮かびます。そのままミルクの中を漂っていました。


 一方のカエルは諦めずジタバタし続けました。本来カエルにはもっと強い跳躍力があるかもしれないのです。狭いところに住んでいると、そこまでしか飛べないと信じ込んでしまい、やがて本当に飛べなくなってしまうのだそう。


 しかし、ここの天井は遙か彼方。どこまででも高く飛んでいけるのです。努力をし続ければ、何倍も高く飛べるようになっているかもしれません。跳躍力が高まれば、ふにゃふにゃの足場でも飛べるようになるかもしれません。



 一匹のカエルは努力を続けました。きっと壺の外まで飛び上がれると信じて。


「ねえ、ミルクを持って来てちょうだい」


「はあい」


 小さな女の子がキッチンに入ってきます。そして、背の低い机の上に置いてあるミルクの壺を覗きこみました。


「うっわ。蛙が浮いているよ気持ち悪っ。ママー。これ使えないよ、蛙入ってる」


「じゃあ、捨てておいて。後で買ってくるから」


 女の子は壺の中身から目を逸らしながらミルクを捨ててしまいました。



 中にいたカエルはどうなったかって? そこはご想像にお任せします。



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