真昼と片口 3/3


 その日は満開の桜の木々が片口の入学を祝福しているような日だった。顔も名前も知らない無数の生徒が校舎へ向かう流れに片口は身をゆだねていた。その時片口は聞き覚えのある声に呼び止められた。

 あるはずのない呼びかけだと分かっていたが、自分の身に染みた習性が彼を振り返らせてしまった。


「片口」

「真昼」


 校舎の入り口の前でお互いに立ち止まる二人。決して間違いではない。目の前の真昼は自分の記憶と寸分たがわぬ姿をしていて、周りの生徒と同じ真新しいセーラー服が真昼の存在を証明していた。

 やっと会えたと言わんばかりの安堵の顔を浮かべている真昼は片口との距離を狭めてくる。見覚えのない生徒たちの中に浮かび上がる真昼の姿が、片口に押し付けられていた。

 焼けつくような痛みがそこから強烈に広がっていく。


「どうしてここにいるんだ?」


 片口の声は自分のものとは思えず、それを自覚したときに自分の体が一斉に騒ぎ出す。その悲鳴にも似た警告のような衝動を、片口は抑えきることができなかった。

 返答を聞かずに彼女に背を向けて歩き出す。真昼が追ってくるのが肌で理解できた。無数の生徒たちの流れの中で逆らうように二人は歩き出していく。

 その距離は変わることはない。二人の速度が一致しているということが、二人の呼吸が揃っていることでもあるようだ。


 片口が離れだした理由を、片口自身は知っている。離れだしたのは衝動的だが動いているのは自分自身だった。だからこの選択は正しいと思っていた。けれど真昼を振り切ることができなかった。


 真昼の存在を感じてしまう。彼女の息遣いとか足音とかがずっと続いてくる。それから逃げるように片口は生徒の流れから抜け出した。

 前も後ろも見ずにがむしゃらに走る。真昼から逃げるように校舎の裏に周り、そこからたまたま目についた横道に進む。


 舗装されていた学園の道とは対照的に山道その者で木の根に足を取られそうになるも、何も言わずに逃げていった。

 真昼から逃げているという自覚さえ薄れていった時に、不意に目の前が開けて片口は陽光に包まれた。


 山道を進んだ先には見晴らしのいい景色が広がっていた。深緑の光景が眼下に広がり、その遥か先には遠い都市部がミニチュアのように動いている。揺らぐことのない水平線を境に空の一色がゆったりと広がっていた。


 校内で見るとは思いもしなかった景色に足を止められていると、背後から彼女の気配が近づいてくる。


「片口……」

「真昼」

「……」


 再開したときから二人の距離は変わらない。真昼が一歩近づく。片口は今度は逃げなかった。真昼も隣に立ち、片口と同じものを見る。


「いい景色」

「そうだな……」


 片口の頭の中に多くの言葉が沸き上がっては、泡のように消えていく。聞きたいことは山ほどあった。なぜここにいるのかというのももとよりだが、それとは別に確かめてみたいこともある。


 けれど何も話し出すことができなかった。真昼と同じ景色を見て時間がただ過ぎているのを感じていく。このようなことをすべきではないと思っているのだが、同時に自分の中で思いもしなかった考えが浮かんでいる。


 だが片口は言い出すことができなかった。もう少し踏み出せば言えるかもしれないが、自分が自分を止めていた。


 言うべきことは言うべきことなのか? 本来なら確かめることのなかったものだ。なら言わなくてもいいだろう。そういう都合のいい考えにやがて変わっていた。

 

 真昼の視線に気づく。彼女も自分と彼の視線がぶつかるのを見て、それをきっかけに真昼が言葉を紡ぎだす。


「あのさ、さっきの片口に聞かれたことだけど……」

「いいよ。知っているから」


 その言葉を最後に真昼は何も言わなくなった。 




 真昼がいなくなったと聞いた時に、まず心当たりがある場所と聞いたのはその場所だった。根拠や理由があるわけではない。でもそこ以外に思いつけなかった。


 山道を進むと木々から伸びる枝葉が月を隠し、完全に闇に閉ざされる。一人だという認識が浮き彫りになり、出てくる時に受け取った懐中電灯の光だけではその思いを払拭するには心もとなかった。


 この先に真昼がいると仮定して、なぜその場所に居るのだろう。片口はそれに思案を巡らせたが、結局は明らかになることはなかった。考えることもやめた。直接話せばいいのだろう。


 そう決めたからだ。

再度自分に言い聞かせると、片口の前のあの時の場所に到着した。


 足元から眼下に広がる絶対的な闇。そこから遠くには満天の星々を囲むように月が白い穴をあけていた。地上には地平線付近に見える都市部が地上の星のように灯りを点々と散りばめている。

 昼に見た時とは違うもう一つの景色を前に、片口は圧倒されていた。

そして孤独はただただ強くなる。


「真昼」


 自然と彼女の名を呼ぶ。返ってくる言葉はない。やはりここにはいないのだろうか。自分の勘は当てにはならなかった。自嘲気味に肩を落とした時だった。


「片口?」


 後ろから呼ぶ声は真昼のものであるのは間違いない。それもすぐ真後ろだった。真昼の手が、頭が片口の背に触れている。


「いつそんな近くにいたんだよ」

「片口が来たのを知ってゆっくり歩いてきた」

「真昼」

「待って」


 振りかえろうとしたのを真昼の声が止めた。背中に触れる感覚は変わらないが、片口は動けなかった。


「真昼。早瀬先輩が探していた。何していたんだ。ここで」

「考えていた」

「何を?」

「どうしてここに来たのか」

「この場所にか?」

「違うの。どうしてこの学校に来たのか」


 真昼から聞こえてきたのは意外な言葉だった。


「僕がいるからじゃないのか?」

「いや、それはそうなんだけど、でも片口が思っていることとはちょっと違くて……」

「何が?」


 震える声から真昼が何を抱いているのかを、自然と片口は類推しようとしていた。けれども、そのすべてを見通すことはできなかった。

 迷いのような真昼の戸惑いが彼女の手を震えさせている。片口はそれを自分が止めるべきかは決めあぐねていた。

 そして片口は待つ。真昼が何を言いたいのか。


 暗闇が取り巻く中に二人でたたずんでいて、永遠のような時間の繰り返しが続いているように思えば、時間が止まっているような閉塞感があるようにも思えた。

 けれど不思議と片口は待つことをやめようとは思わなかった。


 待つということが今の彼女が望んでいるのだと理解できるようになった。真昼の手の震えが徐々に小さくなる。

 そしてその時が訪れた。


「決めてたの……。片口から離れた方がいいって。私がゴーストになってから、片口の私を見る目が辛そうだったから。自分を責めているように見えて……。私がそうさせているように見えて……。何も言わないけれど私でも分かるよ。そんな顔していたら、言っているのと一緒だから……」

「僕は……別に……」

「そんなことないよ。片口のことは知っているもん。ずっと今まで一緒にいたのだから、片口がどう変わったのかなんて簡単にわかるよ」


 真昼は片口を理解していた。片口は真昼の言ったことに驚かされていて何も考えられなかった。

 真昼のことなら理解していると自負さえしていたが、片口は自分の中の真昼を見ているだけで、目の前の彼女を見ようとしていなかった。


「だからこの学校を探して、勉強を始めて、そしたら片口が同じ学校を受ける予定だというのを知ったの。すごい偶然だと思ってとてもびっくりした。勘違いかと思っていたけれど、それで入学式に出会ってやっぱりびっくりした」


 真昼の息を吸う音が届いている。かすかな震えが片口には大きく聞こえていた。


「あなたを自由にしたくてこの学校を選んだのに、ちっとも考えたように進まない。だけど……」


 真昼の手の震えが徐々に大きくなる。比例してのどの震えも、肩の震えも、彼女はあふれでるものを抑えきれなかった。


「やっぱりあなたがそばにいる自分が、これ以外考えられないよ……。自分が決めたことなのに……決めたことを守ることに自信がない。私は……ダメだね……。

 片口が居ないと何もできないのは知っていたのに……そんな自分を捨てようとしたのに……最後のところで捨てたくないって傾いちゃう……」


 真昼の胸中はごまかしのないありのままのものだったのだろう。それをありのままに伝えられて、片口は自分を偽っていることを認めざるを得なかった。


 真昼も考えることは片口と同じだった。同じ考え方で同じ場所へ行き着いていたのだろう。その偶然はやはり偶然とは呼べないつながりがある。そのような実感を片口はかみしめていた。


 しかし、だからこそそのつながりをおいそれと手繰り寄せてはいけないのかもしれない。そして真昼が知るべきことを話さなければならない。片口の覚悟が彼に語り掛けてくる。


「真昼がどう思っているのかは理解したよ。どうしたいのかも。ずっと誤解していた。僕を追ってきたのかと決めつけていた。

 真昼の胸中を知りもしないで距離をとっていたのは、完全に僕の間違いだ。

 今真昼の気持ちを否定するつもりもない」

「片口……」

「でもそれは真昼がゴーストになったのは僕が元凶だとしても同じことが言えるか?」


 片口は目を開く。目の前には真昼がいる。二人に対して月明かりが平等に降り注ぐ。だがその意味は二人にとって明確な違いを持つ。

 ゴーストは傷が消える。すでに死を迎えることはない。それとは別にゴーストには人間との違いがもう一つ存在する。


 月明かりによって浮かび上がる真昼は、すでにその違いを如実に象っていた。

 あれほど透明だった真昼の顔は頭から噴き出した血によって黒く濡れている。肌は血の通っていないためか青白く、それゆえ血の色がより濃く浮かび上がるものだった。


 映像や想像で知ったものとは違う。

 すぐ目の前に死というゆるぎない形がありありと姿を見せていた。人間とは超えられない違いに、分かっていても片口の頬に冷や汗が伝っていく。


 ゴーストは月光に照らし出されると死んだ瞬間の姿が映し出される。それがゴーストをゴーストとして、超常的にしている象徴だった。


 片口は持ってきた傘を開くと、それを真昼の上に掲げる。物理的に月光を遮ると、真昼はさっきまでの姿から遠ざかるようになる。傘の下で真昼は全てを理解したような表情を浮かべていた。


「この姿……片口も怖く感じてしまうでしょ?」

「それでも僕は見るべきなんだ。真昼をそうしてしまったのは僕だから」

「私の死因は誰も教えてくれなかった。家族に聞いてみようと思っていたこともある。でもこの姿を偶然両親に見せちゃったことがあるの。

 私を見た二人は、驚きはしていたけれど受け入れてくれた。

 でも最後に残ったのは私をこうさせてしまったことの悔恨の表情だった。

 それが嫌で……もう聞くことはやめた。私が我慢すれば私には両親を悲しませることはできなかったから……」

「真昼」


 真昼はぐっと息をのんだ。のどから出かけたものを抑えて片口を見上げる。

 瞳の淵には微かに恐れが見え隠れしている。それでも真昼は視線を落とすことを選ばなかった。

 真昼は恐れを抱きながらもそれと立ち向かうことを選んだようだ。

 そして片口もその視線をきっちりと受け止めたとき、その恐れは自然となくなっていく。


「私の死に片口はどのように関わっているの?」


 真昼が知らないことだ。知らないままでいいと片口は考えていた。だがもうその話題から遠ざけることはできない。片口は既に一つの選択を手に取っていた。


「年が明ける直前の大晦日だった」


 片口は振り返り月を星を見上げながら、あの時の記憶をさかのぼる。思い出そうとするといまだに鮮明によみがえる。


「その日は連日続く大雨が止んで、雲一つない完璧な星空だった」


 瞼の裏によみがえる記憶が、片口を滑らかにしゃべらせている。


「だから僕は真昼を連れて初日の出を見に行くことにした。真昼も話を聞いたら乗り気で、僕と真昼の両親も快諾してくれた。覚えているか?」


 真昼は首を横に振った。


「深夜に二人で裏山の中腹当たりまで登ったんだ。山道は十分整備されていたし、それほど急な勾配が続く道でもない。夜ということはあったが、準備はしていた。それで僕は真昼の手を引いてそこへ向かったんだ」


 特別な日だと思っていたから、場所も普段選ばないようなところを選んでしまった。あの時の悔恨が今でも片口の体を流れている。それが時間を経てもその時の記憶を鮮明なものにさせていた。


「山道はここみたいに木々が空をふさいでいたけれど、中腹では切り開かれていて、町が一望できた。崖のように切り出した地形で高さがあったが、柵があるから危険ではなかったと思っていた」

「片口……あの……」

「最後まで聞いていてくれないか?」


 真昼は片口の表情をうかがって思わず口をはさんだのだろう。だが片口はそれを止めた。真昼の口を閉ざすつもりはなかった。言葉通りの想いを真昼は受け止めてくれた。ごくりと喉を鳴らすと真昼はうなずいた。


「予定通り日の出前の時間に到着できて、二人で待つことにした。寒かったけれどそれは気にならなかった。二人で隣り合って座りながら夜が明けるのを待って、そしてその時が来た」


 目を閉じると今でもその光景が思い浮かぶ。落ちていきそうなほどの雲のない空。音が失って二人きりと思ってしまいそうな時間。


「あの時の景色は今でも覚えている。地平線から闇が切り開かれるように陽光が走ると、これまで夜一色で停滞していたような時間が一気に進むのを感じた。

 これまでにない一日が始まる。そう予感させるのには十分は光景だった」

「私もそれをみていたの?」

「もちろん。そのときの真昼も喜んでいて、日の出が見えたときにそのまま走って崖はしの柵に手を付けてみていた。今思うとそれがいけなかったんだ」


 瞬きする程度のかすかなな沈黙の一瞬で、片口と真昼はお互いの視線と心情を交差させた。彼女のぶれない視線がすべてを物語っていた。だから片口はつづけることにした。


「その柵が外れて支えを失った真昼はそのまま崖へと落下していった。最初何が起こったのかわからなかった。けれど、真昼が居なくなって一人になった時にようやく事実として理解できた。

 正直そこからはよく覚えていない。気が付くと写真の中の真昼がこっちを見ていた。真昼の両親は何も言わなかったけれど、別人かと思うくらいやつれていて、僕はどうしてここにいるのかも理解できなかった。いや、自分自身が拒んでいた」


 頭では理解することを拒否していた。けれど頭は考えることをやめずに様々な思考や想像が片口の中を駆け巡っていった。その速度に追い回されそうになりながらも、彼は一つの結論に達する。

 それが終わりではなく、そこからまた始まりだったのだろう。


「思考も何もまとまらなくて、それでも一つだけ分かったことがある。あの時真昼を誘わなければこのようなことにはならなかった。それだけが確固たる真実だった」

「でも……私は……戻ってきたよ」

「戻ってきても、それは変わらない。ゴーストだからとかじゃない。真昼はゴーストになっても僕の知る真昼だよ。それは嬉しかった。でもその真昼を僕が落としたのは間違いない」


 それが事実なのだと胸の中で言い聞かせる。揺れ動く自分の胸中をその言葉で押さえつけていた。手にしていた傘を真昼に手渡す。傘の影の中に隠れる真昼を置いて、片口は一歩後ろに下がった。


 真昼がどのような顔を作っているのかは片口には見えない。昔は背丈が同じぐらいだったためか、同じ目線だったことをふと思い出した。それが今はこんなに違いがある。


 いつもこれまでも一緒だと思っていた。


 けれど二人は気が付かないうちに異なる視野の中で生きるようになっていた。そう思うと片口の胸の揺らぎが落ち着きを持ち始めた。冷える胸に手を添えながら、片口はその言葉で終わらせることにした。


「これで分かっただろう。僕が真昼に何をしたか、自分が何をされたか。それでも真昼は昔のようにありたいのか? そんなことできるわけないだろう。だからこうなるのが最適なんだ」


 真昼のそばを通り過ぎて一人で戻る。戻る先は、片口の日常。真昼のいない世界だった。そう固く心に決めることができた。彼は満足していた。

 けれど誰かが彼の服の裾をつかんでいる。


 誰かというのは考えるまでもない。白く血の通っていないような指の先には、真昼が片口を見つめていた。


「ずるいよ」


 真昼の口からこぼれたその言葉を片口は何も理解できなかった。聞き間違いなどではない。けれどどうして真昼がその言葉を選んだのか、明確な理由が想像もできなかった。


 呆けた顔をしている彼を真昼はまっすぐな目で見つめていた。


「分からないって顔をしている。どうして?」

「真昼がずるいっていうのが分からないから」

「そうだよ。あなたは私のことが分かっていないじゃない。なのに私がどう思っているかとか、私がどうなればいいとか決めちゃうの?」

「それは……」


 真昼の言うことに何も言い返せなかった。真昼はそっと片口の胸に寄り添う。自分の体を片口の胸にうずめると、声を震わせながら続きを吐露する。


「だから……ずるいよ。でも私も同じようなことを考えていた。自分の中だけで結論を作って、あなたとの距離を遠ざけていた。片口のことを見ようともしていなかった。

 あなたは今でも私を見てくれないの?」


 片口は何も言い返さなかった。だが胸の中にいる真昼を遠ざけようとも思っていなかった。月明かりが遮られて姿が見えない真昼の存在が分かるのは、片口の胸の感触だけだった。


「片口が私のことをどれほど想ってくれているのかは知っているよ。痛いくらい分かっている。私の死因を作ったことに直接は関わりがないとしても、片口は自分を責め続けるのでしょうね。その結果がここにいることだから……。だけど……」


 真昼の顔が視界に現れる。


「片口の傍にいたい。だから片口の傍にいさせてよ。もう互いに分かった気でいるのはこれまでにしたいよ」


 涙がにじむ真昼の双眸が夜の中で煌々とした灯を帯びていた。その目が全てだった。

 語ることは語った。それで終わると思っていた。でも真昼は片口の予想しない答えを選んだ。意外な結果が広がり想像しなかった今が待っていることをどう受け止めたらいいのか。

 

 片口は悩んでいた。でもそれもすぐに終わる。すでに答えは真昼が示してくれていたから。悩むことさえ必要なかったのだろう。


「全く……僕も真昼も同じことを考えていたから、お互いに間違い続けていたなんてな……。自分がどうかしていたのを気づけなかった。なんて愚かなんだろうな」

「そんなことない」

「真昼。僕を肯定してくれるのは嬉しいけれど、でも僕は傍にいたいとは言えない。真昼を変えてしまったのは僕のせいだから。それは訂正できないことだ」


 片口のゆったりとした言い方が自分の本心を伝えていることを明らかにする。その言葉に流れていくように真昼を見た。


「でも真昼が望むなら、僕は傍にいる」


 そして同じ口調のまま真昼に伝えた。彼女は何も言わなかった。その表情が全てを語っていた。


「離れたくなったら離れてくれていいよ」

「そんなことない」

「嫌いになっても構わない」

「そんなことない」

「そうか……それじゃあ帰ろうか」

「うん」


 隣に真昼が立つ。気が付くと月は雲に隠れ再び闇が姿を現し始めていた。

懐中電灯を向けると、二人の進むべき道であるかのように光が闇を切り裂いていく。

光に照らされて隣の真昼の横顔が片口の眼前に近づいていた。

 

 見慣れているはずなのに、その姿が片口の瞼に強く焼き付いていた。


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カラフルゴースト /´ω`У´ω`\つっくばサーン♪ @lain11

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