第373話:勝利への思いと確信
セレネイアは右脚を正しく一歩分だけ引いて、
「いきなり試すつもりか。無謀というか、大胆というか、私には理解に苦しむが。それも含めてのセレネイアなのだろうな」
ヨセミナの
セレネイアは
カランダイオもアメリディオも、
二人の魔力と
≪アメリディオは言いました。貴女には、はっきり
魔力を伝って
(ならば、私も
セレネイアは瞳を閉じて視覚を遮断する。目で追う必要などない。全ては自然が教えてくれる。
今や
「まだ十分ではない。
ヨセミナはセレネイアではなく、
カランダイオは
カランダイオとアメリディオ、先に魔力が尽きるのは間違いなくアメリディオであり、そうなればたちどころに均衡が崩れ去り、
(アメリディオの魔力が限界に近づいています。それまでに必ず決着をつけるのですよ)
カランダイオもヨセミナ同様に、セレネイアが負けるなど、
主たるレスティーが
(貴女は着実に成長していますよ。だからこそ、最大の真価を示さなければなりません)
セレネイアが第一騎兵団団長の地位に就任してからというもの、未だに不満がくすぶっているのも
特に第二騎兵団からの風当たりは強い。タキプロシスなど、公然と批判を口にしているのは最たる例と言えよう。
カランダイオの思いを感じ取ったのか、セレネイアは僅かの間、視線を上げた。
この場にはそぐわないであろう、澄んだ純粋な瞳が
カランダイオにとって、いつまでも幼い少女だったセレネイアが、ようやく大人の女へと脱皮しようとしている瞬間でもあった。
一つは言わずもがな、上空二百メルク地点に立つヨセミナだ。そこにいるだけで凄まじい重圧を与え続けている。
もう一つは、たとえようもない違和感だった。ここにはいない何かが刺すような痛みをもたらし続けている。痛覚など完璧に遮断できるはずの
さらに、それの位置はもちろんのこと、目的さえ
(
≪セレネイア、いつでもいいわよ≫
セレネイアの気が瞬時に高まる。全身を覆った魔力が規則性をもって揺らめき、強さを増していく。
ここにいる誰もが、セレネイアの異様な魔力波を感じ取っている。何が異様なのか。
「魔力が色を帯びています。本当にあれはラディック王国第一王女セレネイア殿でしょうか」
ラディック王国と魔術高等院ステルヴィアは様々な意味で深い繋がりを有している。
当代賢者たるコズヌヴィオも、当然ながらセレネイアとは面識もあり、幾度となく談笑もしている。その際に感じた彼女の印象と、今とでは明らかに別人だ。
「どういうことだ。我が友のように優れた魔術師、我が女神もまた色を帯びているではないか。俺には無理だがな」
ワイゼンベルグの問いかけにコズヌヴィオが応える。
「身に
詳しく語るつもりはなさそうだ。ワイゼンベルグも軽く
「
ヨセミナの感嘆の声が落ちる。今度は風の流れをものともせず、カランダイオの耳にも届いていた。
(そのとおりですよ、ヨセミナ殿。何よりも血は争えぬ、ということです)
セレネイアは両脚を大地に固定したまま、右手にした
セレネイアを覆う碧緑の魔力が
「素晴らしいです。完璧な調和を生み出しています。魔力質が数倍に膨れ上がっている今、解き放たれる
コズヌヴィオがため息交じりに言葉を零している。
≪セレネイア、私を解き放ちなさい≫
セレネイアは後方に引いていた
同時にアメリディオの魔力が尽きる。
展開していた
「遅かったな」
「遅いですよ」
前者はヨセミナ、後者はカランダイオの声だ。同時に、こちらもまた上から落ちてくる。
「ば、馬鹿な。
セレネイアの身体は、疑う余地なく
突き出した
≪お前の
相変わらずの
「丸視え、だと。どういうことだ。我がそのような愚かな真似を」
恐る恐る、
≪
その証拠に
≪武具も魔術も、お前には通用しなかったかもしれない。でもね、それらの痕跡ははっきりと描き出されていた。思いという強い力によってね≫
「だから、私たちは彼らが残した軌跡を
セレネイアはひと際強く
≪妹たちがいなくても、今ならやれるわね。さあ、
セレネイアは深い呼吸によって最大限に集中力を高め、
「これで終わりにします。
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