第364話:槐黄の宝珠と謎の飛翔体
(私を
ケイランガは吸収される寸前、無用となった
ケイランガの全身が
目も
(絶対に
ケイランガは最後の力を振り絞り、
今や、およそ五メルクあった
ケイランガの伸ばした手がまさに根核に触れようとしていた。
◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
「ケイランガ、あれを使ってしまったのですね」
彼が止まったことで、横並びで歩くワイゼンベルグもまた必然的に動きを止める。言葉はない。黙したまま、友の横に並ぶまでだ。
少し前方を行くエレニディールもまた足を止め、
「行きなさい、コズヌヴィオ。貴男は貴男の
エレニディールは深謝のために頭を下げ、視線を前方に戻す。
「私は私の行くべき道を。コズヌヴィオ、ワイゼンベルグ殿、武運を祈っていますよ」
二つの同音が空間に走る。
「エレニディール、貴男にもご武運を」
エレニディールは
「我が友よ、共に来てくれますか」
ワイゼンベルグは表情一つ変えず、当然だとばかりに言葉を返す。
「何を
コズヌヴィオが
「友が一緒で心強いです」
魔術転移門の先に待つ者が強敵であることなど、ワイゼンベルグには分かっている。
コズヌヴィオとは短いつき合いながらも、彼は高位の魔術師にありがちな、感情を
だからこそ、表情をひと目見て理解したのだ。
(俺よりもはるかに強者でありながら、力を貸してやりたいと思わせる。これがコズヌヴィオ殿の魅力なのであろう)
「ええ。敵は
二人の姿が魔術転移門の中に消えていく。漆黒の空洞に溶けこむと、再び硬質音が鳴り響き、空間が閉じられていく。
コズヌヴィオは推測ではなく、確信している。敵は
ケイランガとランブールグの矢に付与した特殊な魔術は、確実に機能していれば
しかも、ケイランガは絶体絶命に
(ケイランガ、貴男は仲間のために自らを犠牲にできる。敬意を払うべき尊き行動ですが。
◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
急速に
「我の
体内に吸収した後、ゆっくりと同化するつもりだった。もはや、その余裕はない。
(必ず、必ず
ケイランガは必死に
強い信念のみで手を大きく開き、さらに指先を限界まで伸ばす。
「我の勝ちだ」
触れる寸前だ。
(もはや私は助からない。ならば、命の
宝珠はケイランガの命の全てを
その力が発動しようとした
凄まじい衝撃が四方へ
衝撃の影響は
(い、いったい何が起こった。どうして私は
ケイランガは大地に転がったまま動けないでいる。激痛のあまり、思考もまともに働かない。
蒸気を噴き上げている飛翔体からゆっくりと
「し、死ぬかと思った。
風渦が去った後、そこには一人の姿がある。独り言を呟きながらも、既に
「ほぼ壊滅状態だな。王国の精鋭たちも
冷静に状況を分析、
「ならば、私の
ようやく
粘性液体の大半を失い、
時間が経過すればするほどに
「ほうほう、かなり強いな。だが、今さら一人増えたところで結果は同じだ。ただ
眼前に立つ者は、ここまで相手にしてきた者たちよりはるかに強者だ。それでも己には届かない。それが
「やれるものならやってみるがよい。王国との義により助太刀いたす」
切っ先が十セルク下がる。右手首のみがしなやかに踊り、今度は水平位置を超えて三十セルク持ち上がる。動きはそれだけだ。
「馬鹿な。何だ、この剣技は。まさか魔術か」
粘性液体の再生によって身体が創られていく
武具による生半可な攻撃なら、直撃を食らったところでさしたる影響もない。それが魔術ともなれば別だ。魔術は無から有を生み出す力であり、強力であればあるほど絶対に直撃を避けなければならない。
「この程度で何を驚いている。まだまだ序の口だぞ」
引き千切られた粘性液体が再び集結し始めている。言葉を
(さすがに
そのとおりだ。
「もう一つ忠告だ。こちらにばかり意識を向けていてよいのか」
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