第358話:高位の戦略と核の正体
アメリディオにこの
(駄目ですね。
冷静な分析ができるだけでも上等だ。
「
決して対等ではない。あくまでも格下の存在にかける言葉だ。
「読み取りも終わったところだ。待ってくれた礼に一つ面白いものを見せてやろう」
アメリディオは突きつけられた核から目が離せない。吸い寄せられていくかのような感覚だ。
核からは漆黒に染まった
(なぜです。
「ほうほう、貴様は有能なようだ。気づいたようだな」
飛び散った結晶の
「馬鹿な。自らの核を破壊するなど、正気の
アメリディオの反応が面白いのか、
浮遊状態の欠片はその場に
「我は
何を言っているのか、全くもって理解し
アメリディオは
「我慢できぬか。貴様だけではない。人は未知なるものへの恐怖心が
アメリディオは人差し指を
「ほうほう、これもまた面白い。攻撃性を廃した魔術、やはり同じであったな」
アメリディオが行使した魔術は一切の攻撃能力を有さない。その代わり、体内に
「何を言っているのです。この魔術をお前に見せるのは初めてですよ」
魔術が
矢は幾つかの欠片内を透過、乱反射を起こして四散した。
「馬鹿な」
アメリディオだけではない。
アメリディオは初見の魔術を
「我の核に自我が残っているなどあり
「ほうほう、ほうほう、そういうことであったか。ますます面白い」
一人合点がいったのか、高位はしきりに
おもむろに両腕を突き出し、宙に浮かんだままの核の欠片を全て吸収していく。アメリディオの魔術を阻んだ幾つかの欠片だけは残したままだ。吸収した欠片が
「全く
(圧倒的に不利ですね。核を一つ破壊した程度ではどうにもならない。恐るべき再生能力です。やはり完全に
言うは
たとえ、アメリディオにシュリシェヒリの目があったとしても、
「準備は整った。待たせたな、魔術師よ。では、早速始めようか」
体内に取り込まず、放置したままの幾つかの欠片を無造作に左手で握る。耳を覆いたくなるような悲鳴にも近しい不快音が
「ああ、ああ、そんな」
それ以上は言葉にならない。
アメリディオは敵を前にしていることさえ忘れたかのごとく、
「
アメリディオほどでないにしろ、
「私にも分かりません。
ケイランガの言葉が全てを物語っている。そもそも、
そのうえ、およそ百年前、レスティーが
現騎兵団の団長や副団長でさえ、つい先日、ファルディム宮で戦った
「では、あの
システンシアの言葉はそこで
彼が初めて見せる
「ああ、母上、母上なのですね。私です。アメリディオです」
アメリディオは完全に冷静さを失っている。普段の彼からは想像もできないほどだ。
今や
アメリディオと全く同色、印象的な瞳と髪が特徴だ。黄金色の中に
もう一つ、共通点がある。
「間違いありません。そのお姿、そして二振りの長細剣を
口から勝手に言葉が
冷静であれば理解できたはずだ。この状況で冷静になれという方が土台無理な話でもある。
アメリディオはタトゥイオドの里に生まれたエルフであり、代々優れた魔術師を輩出してきた由緒ある家系でもある。
とりわけ、実母のネシェミメリィーレは魔術だけでなく、剣術にも優れた魔剣士だった。その実力は歴代二位と称され、彼女が編み出した独自の二刀剣舞は誰にも真似できない剣技だったと伝えられている。
「私の可愛い息子アメリディオ、大きくなりましたね。母も貴男に会えて嬉しいですよ」
愛する母から名前を呼ばれたアメリディオは、無意識下でネシェメリィーレに向かって一歩、一歩近づいていく。
ネシェメリィーレは
二人の距離が
「母上」
アメリディオは流れ落ちる歓喜の涙で視界が
ネシェメリィーレは
「愛しい母に会えたわね。本当に馬鹿な子ね。これでお別れよ。死になさい」
アメリディオの口から大量の鮮血が
いつ抜剣したかさえ分からない。右手にした長細剣が容赦なくアメリディオを
「は、母上、どう、して」
ネシェメリィーレは応える必要もないとばかりに長細剣を勢いよく引き抜くと、無造作にアメリディオを大地に投げ捨てた。
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