第357話:一対一での戦い
アメリディオは即座に
(やはり
今度こそ
位が上がれば上がるほど知能も比例するし、
≪ケイランガ、ランブールグ、もう一体潜んでいます。恐らく
あくまで一対一、他者と
もう一つ理由がある。システンシアを
「システンシア、ケイランガたちのところまで下がっていなさい」
案の定、システンシアは反論を返してくる。
「団長、私も共に戦います」
体力も回復していないシステンシアが一歩前に足を踏み出す。途端に足がもつれ、転びそうになる。
「その状態で
システンシアは
「アメリディオ団長、私は、私は、
言われなくても分かっているはずだ。アメリディオは小さくため息をつくと、明瞭に言葉にしてシステンシアに告げる。
「そのとおりです。足手纏いです。今の貴女では」
剣を持ったままの右腕を伸ばしかけたところで、ケイランガに背後から二の腕辺りを握られ、制止されてしまう。
「ケイランガ団長、離してください。私は、私は、行かなければ」
振り
「システンシア、貴女が行ったところで何もできません。アメリディオが言ったとおりです。しかも相手は
アメリディオは心の中でケイランガに感謝の念を送った。言いたいことを全て代弁してくれている。
(システンシア、何のために貴女を副団長に抜擢したと思っているのです。貴女には強くなってもらわなければなりません)
闇の中の
それはアメリディオも同様だ、先に仕かけるのはどちらか。
ようやくシステンシアを解放したケイランガ、すぐ後ろで控えるランブールグの三人が息を詰めて見守っている。
(この場所では
「ルーヴ・アレセ・エクティーレ
ラド・リヴ・ペデルオ・ヴーリーゴ」
アメリディオが先に呪文の詠唱に入る。
先ほどまでのアメリディオだけが理解できる独自の言語ではない。主物質界で一般的に用いられる魔術語だ。
「あれは、まさか」
ランブールグが
「ランブールグ、知っているのですか」
視線をアメリディオに向けたままのケイランガが尋ねかける。無言のシステンシアも聞きたそうにしている。
「
魔術師でなくとも誰でも知っている。飛翔魔術は扱いが非常に難しく、また大量の魔力を消費するため、高位魔術師の中でも限られた者しか行使できない。
「アメリディオはそこまでの高位魔術師ということですか。では、なぜ宮廷魔術師団に」
考えたところで答えはない。まずはこれから始まるアメリディオと
「
空に
詠唱が成就、アメリディオが即座に魔術を解放する。
「
広々した空間が宙には無限に
アメリディオは残存魔力量を考えつつ、最小限の力で防御結界のための詠唱を紡ぐ。
「エグズ・ブレーヴァ・レケーネ
ヴァラスウィ・オーリ=ジィ
光壁盾をかの者に授け守りたまえ」
結界魔術の中で、最もよく使われる
「多重光防護壁(プレミネンシオ)」
多重光壁によって、ケイランガたちと
(この程度の結界では、
宙に飛び出したアメリディオが間髪入れず、次なる魔術のための詠唱に取りかかる。
それを
魔術師にとって最大の欠点は、詠唱の前後に生じる
「さあ、我の前で詠唱してみせろ、強き魔術師よ。成就した暁には受けきってやろう」
背丈にしておよそ七メルク程度か、
(余裕ですね。しかもあの異様な体形は、何かを隠していますね)
背丈がみるみるうちに縮んでいく。その一方で横幅は増すばかりだ。
(膨張速度が
アメリディオもただ観察しているだけではない。空の優位性を最大に活かす。両腕を大きく伸ばし、左右の人差し指一本を用いて
「ディ・ハセニィ」
左右の正円がくり抜かれ、内部より十の魔術巻物が飛び出してくる。
「ナハ・リュス」
膨張が停止、
「ほうほう、このようなところでエルフ属の魔術師と相まみえようとはな。貴様、あの
答えを与えてやるつもりなどない。アメリディオは無視を決めこみ、十の魔術巻物を頭上で直列展開する。
「なかなかやるようだな。我を存分に楽しませてくれよ」
膨張した身体が一気に収縮、粘性液体が
アメリディオも迷わず一枚目の魔術巻物を解き放つ。
「ヴィーハーミ」
魔術巻物から無数の
結界の
水弾と光壁、双方が打ち勝とうと一進一退の攻防を繰り広げている。その
「ランブールグ、どう
ケイランガが簡潔に尋ねる。右手でプルフィケルメンを握っている。いつでも助力できる態勢だ。
「現状は互角です。互いの効力がいつまで持続するのか。それ次第では」
白銀光壁は魔術による
「
明らかに水弾の威力が
「温い、ですか。では、さらに熱くしましょう」
頭上で二枚目の魔術巻物がその効力を発揮せんがため、
「ピィリ・アレ」
白銀光壁を強化すべく、淡青光壁がアメリディオのすぐ前に立ち上がる。
結界が二重化されたことで、白銀光壁を突破した水弾が淡青光壁にことごとく止められている。
「ほうほう、即座の判断で結界を二重化したか。それにしても、貴様の魔術、視たことがあるな」
「ほうほう、これであったか。これはまた面白いではないか」
唐突に右腕を振り上げる。
「何をするつもりです」
(駄目だ。本能が攻撃するなと訴えかけてくる。なぜだ。
思考は一瞬、アメリディオは
振り上げた右腕を自らの体内に突きこみ、あろうことか一つの核を引きずり出してきたのだ。
「魔術師よ。今からよいものを視せてやろうぞ」
漆黒に染まる
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます