第344話:三人と三姉妹と三美と 後編
眼前で展開される様を少し離れた位置からルシィーエットが真剣な面持ちで凝視している。
(よもやこのような方法があったとは。全盛期にまで
一人残った美の熱ことカラロェリが
≪我らが偉大な主様、熱を
人化状態のカラロェリは口調も
≪ディーナと共に
≪ヒオレディーリナ、聞きなさい。男は姉の力によって炎に、女は妹の力によって風に再構築される。そのうえで二人の魂を
本当にこれでよいのだろうか。今さらながらにヒオレディーリナは
ケーレディエズの想いは嬉しい。一緒にいられるならとも思ってしまう。一方で彼女は決して亡くなった妹の代わりではない。だからこそ、このままニミエパルドと一緒に安らかに眠らせてやることこそが正しい選択なのではないか。
≪核の崩壊の先に待つものが何か、よく分かっているでしょう。何よりも貴女の迷いは、我らが偉大なる主様の行為を踏みにじるものよ。事は既に決しているわ。
カラロェリの痛烈な言葉が胸に突き刺さる。ヒオレディーリナは本当に
≪そうね。これ以上、あの御方の手を
納刀していた
≪確かに受け取ったわ≫
カラロェリが差し伸べた右手で
≪私は貴女の
ヒオレディーリナが深く頭を下げている。これにはカラロェリも意表を突かれたか。
≪使いこまれた素晴らしい
これ以上の言葉は必要ない。カラロェリは
(貴男は本当にどんなことでも私の願いを叶えてくれる。ただ一つを除いて。だから、この苦しみが
≪主様、お持ちいたしました≫
≪こちらも始めよう≫
ケーレディエズとニミエパルドの肉体は完全に失われている。それでいながら、二人の姿形は完璧に維持されている。
美の風をもって透き通る
≪その方らは人としての肉体を失ったが
互いに見つめ合ったケーレディエズとニミエパルドが、レスティーに言われるがままに
≪最後の仕上げだ。その方らをディーナの
風と化したケーレディエズが、炎と化したニミエパルドがレスティーに対して深々と頭を下げてくる。
≪不要だ。頭を上げよ。その方らの望みは
左手で握った
≪よかったわね。ヒオレディーリナとの契約が消滅するまで、貴方たちはずっと一緒よ。さあ、
二人の心の中にイェフィヤの
≪早くしなさいよ。私たちの主様を待たせるんじゃないわよ≫
風と炎が手を
“Vaanop, duroirlge kraft oderagt.”
レスティーが
強く抱き合ったケーレディエズとニミエパルドが歓喜の表情を浮かべている。二人の瞳からは風が、炎が、涙となって流れ落ちる。二人の
≪貴男様のおかげで私たちの願いは叶えられました。心から感謝申し上げます。これからはヒオレディーリナと、お姉ちゃんと共に
二人の頭上で三美が
“Sofrsegliw gaijvk syjez lemnov.”
封印のための言霊が高らかに響き渡る。
≪貴方たちにとって、最上の幸せとは言い
三美が空高く舞い上がる。同様にケーレディエズとニミエパルドも自ずと上昇を始め、黄金に輝く剣身が
収束した刻にはケーレディエズとニミエパルドの姿は消え去り、三美だけが主の御前で
白銀の剣身に戻った
≪美しい光景であった。そなたたちの力を嬉しく思う。
三美の表情に見事な華が咲いている。
先を越されてなるものかとばかりに
やはり、こういった役目は
≪
「ディーナ、あの者たちを封じた
ヒオレディーリナは
何か言わなければ。そうは思っても、まるで言葉を忘れてしまったかのごとく、何も出てこない。
イェフィヤもカラロェリも薄々ながら、レスティーとヒオレディーリナの
レスティーも気にしていないのだろう。ヒオレディーリナの両の手のひらに
「そなたの命はそなたのものだ。だが粗末にするな。そなたは人族にあって最も大切な者の一人だ。失いたくない一人だ」
それだけを告げて行きかけるレスティーの背に、ヒオレディーリナはようやく言葉を投げかける。
「どうして、どうして、私を殺さないのですか。私は、今や貴男様の敵にも等しい存在なのですよ」
ヒオレディーリナの口をついて出た言葉は、本心から言いたかったことか
「殺す必要などどこにある。そなたがそれを
両
≪お姉ちゃん、私がいるから。私も、ニミエパルドも力になるから。だから、哀しまないで≫
ヒオレディーリナはケーレディエズたちとの関係を、主従ではなく対等と決めていた。だからこそ、
「ディーナ、どうしても私に殺してほしいなら、高度八千メルクまで来るがよい」
この場におけるレスティーとヒオレディーリナとの最後の会話だった。
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