第341話:哀しき結末と真の望み
ヒオレディーリナの視線がルシィーエットに向けられる。お互いの
「ニミエパルド、ケーレディエズ、核を制御しなさい。愛し合う二人ならできるはずよ。二人で過ごした幸せな時を思い出しなさい」
ヒオレディーリナは至って冷静に言葉を投げかける。それでいて心に強く響く。言葉は
言霊に魔力を乗せる魔術は本来、生者にこそ効果を発揮するものだ。果たして
(二人は
駄目だった場合はどうするのか。ヒオレディーリナの中では結論が出ている。
制御できず、どちらか一方が核を標的に攻撃を仕かける前に、
二人を覆う
そこに声が届く。
「お、お願い、ヒオレディーリナ、私を、私たちを殺して」
ケーレディエズが
それを許すヒオレディーリナではない。
強力な邪気で構築された肉体は
「に、逃げろ、ケーレディエズ。このままでは、私は。早く、ヒオレディーリナのもとへ、早く」
ニミエパルドは浸食に
「私はどこにも行かないわ。ニミエパルド、もう終わりにしましょう。一緒に死んで。ここまで邪気が強まれば、もはやできることはないわ」
既に自らの意思をもって核を破壊することも
ケーレディエズが残された自制心の全てを
「今よ。二人一緒に。頼めるのは貴女しかいないの」
「人である部分が残っているうちに、一緒に死なせて。お願い、お姉ちゃん」
「まずい、ディーナ」
≪馬鹿、何やってるのよ≫
ルシィーエットとフィアの叫びが重なる。二人の声すら今のヒオレディーリナには届かない。
ケーレディエズの両腕に縫い止めらたニミエパルドの邪気がなおも活性化していく。振り払わんと
ケーレディエズの両腕が
≪そこで
この状況で動けるのはフィアだけであり、フィアが動かなければ間に合わない。
標的をケーレディエズからヒオレディーリナに切り替えたニミエパルドが素早く立ち上がる。いつの間にか、
ニミエパルドは深紅の瞳を
ヒオレディーリナは
問題は
遅滞の分だけニミエパルドの攻撃が先に届く。ヒオレディーリナの胸を貫通せんと、両の指先が
≪らしくないわね。
フィアの声が脳裏に響く。
(水滴、ニミエパルド、お前は)
直後、上空より凄まじい雷撃が
着地と同時、上空を
≪フィア、私ごと殺すつもり≫
雷撃の正体は、もちろん
はるか上位の存在たるフィアの意思は全てにおいて優先される。
≪フィア様の意思はそれの動きを封じ、貴女を
(余計な真似をしてくれる)
ヒオレディーリナはフィアの好意そのものに、フィアは
反目し、毛嫌いしている二人は
「ごめん。待たせたわね、ニミエパルド。すぐに楽にしてあげる」
いつしかケーレディエズがニミエパルドの背後に立っている。その右腕がニミエパルドの心臓部分、すなわち核を
ヒオレディーリナとケーレディエズの視線が交差する。ケーレディエズの瞳にも光るものが浮かんでいる。
「お姉ちゃん、有り難う」
「ディズ、ごめんね」
二人の発した言葉が空に消えていく。フィアは黙したまま見つめるだけだ。
ヒオレディーリナが
(あの構えは。そう、あれをやるつもりなのね。哀しいわね、ヒオレディーリナ)
フィアの感情はそのまま
≪なぜ頼まないのよ。これが貴女の望む結末だとでも言うの。そうではないでしょう≫
ヒオレディーリナの右手がおもむろに振り下ろされる。
音もなく、色もなく、匂いもなく、さらには感情もなく、
ヒオレディーリナの秘奥義の一つ、
光が天空から大地へと抜けていく。
(これしかしてあげられない。お姉ちゃんを許してね)
切っ先が最下段に到達するその
「レスティー様」
ニミエパルドとケーレディエズもまた同じく、完全に硬直した状態で、動きそのものが封じられていた。
「ど、どうして、ここに」
「私は言っておいたはずだ。そなたが望むなら、いかなる時であろうとも力を貸そうと」
レスティーは振り返らず、上空のフィアに視線を
フィアの手から
≪主様、主様、お逢いしたかったです≫
歓喜、興奮、
「ディーナ、
右手で
真の主の手に収まった
「私は、私は」
言葉が喉につかえて出てこない。フィアから
(まるで泣いている子供ね。私の愛しのレスティーの前だもの。貴女も私と同じ、仕方がないわね)
フィアの感情がヒオレディーリナに向けられている。
レスティーは眼前に立ったまま微動だにしない二人の
「その方らは何を望む」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます