第319話:藍碧の輝きがもたらすもの
姉弟の
ゼーランディアもガドルヴロワも、うつ伏せで倒れたまま微動だにしない。ただ一ヶ所、視覚を除いて、全ての機能が停止している。
姉弟の目だけが何かを求めて
「
モレイネーメにしか見えないクヌエリューゾが姉弟の眼前に、右手人差し指を突きつける。
「今から十ハフブルの
無情にも十ハフブルが経過する。
完全なる死に
「心配は
上位になればなるほど、扱いは困難になる。さらに、同位でも優劣が存在する。
「貴女は実験対象外でした。持ち合わせが
ジリニエイユは
ジリニエイユが
二体目と三体目は実験途上で、ゼーランディアとガドルヴロワ姉弟が四体目と五体目になる。実験を着実に重ね、一刻も早く数十体の
「当初の計画より遅れています。あの二人は資質が高そうで先々が楽しみですよ。さて、貴女の
愛する二人を助けるために、辛うじて
埋め込まれているのは
「まもなく、心臓部分に核が定着します。そうなれば、晴れて
ジリニエイユの
「もう生きる意味もないわ。だから、ここで殺して。お願いよ」
モレイネーメの
「ええ、ええ、殺して差し上げますとも。ただし、ここではありません。そして、貴女を殺すのは私ではありません」
モレイネーメの瞳の奥を
「実験が完成した
ここでの用事は全て終わった。ジリニエイユの全身から、再び
「モレイネーメ、これが私の
右手が
(こうなることが私の運命だったのね。ゼーランディア、ガドルヴロワ、こんな母を許して)
長方形は漆黒を
ジリニエイユによる魔術転移門だ。
「先に入りなさい」
命令を
あと数歩で魔術転移門に吸い込まれてしまう。モレイネーメは絶望の中、もはや最後かもしれない、二人の顔を思い浮かべた。
(ゼーランディア、ガドルヴロワ、心から愛していたわ)
≪諦めるのはまだ早い。我が子よ、力を貸そう≫
全く聞き覚えのない声が、突如として心の中に響き渡る。
モレイネーメの足元を中心にして、爆発的な魔力が
「何だ、この異様なまでの魔力の高まりは。この私より、いや、そのようなことはあり
ジリニエイユは無意識のうちに
凍気の波は魔術陣を覆い尽くし、藍碧の
最初にぶつかるのは、ジリニエイユが創り出した漆黒の魔術転移門だ。
「馬鹿な。この私よりも優れていると言うのか」
強弱よりも優劣を気にする。ジリニエイユにとっては、魔力よりも断然知力なのだ。知の優劣こそが重要であり、ジリニエイユの論理の
その証拠に、ジリニエイユの目は魔力ではなく、魔術の構築要素だけを
「私の知らぬ魔術論理によって構築されている。何と言うことだ」
あまりの衝撃にジリニエイユは気づいていない。
藍碧の光と漆黒の闇が衝突、勝敗は一瞬で決した。
光の
「
ジリニエイユは一度
今、眼前で展開されている
スフィーリアの賢者たるビュルクヴィストは、モレイネーメのかつての師でもある。モレイネーメの知らないところで、魔力的な細工をしていたとしても何ら不思議ではない。
錯覚しそうになったものの、すぐさま彼の力ではないと気づくあたり、やはりジリニエイユは優秀だ。
「この私が、
もはや、何人たりとも手出しできない状況だ。
足元に描き出された藍碧の魔術陣が美しい輝きを散らす。魔力が波打ち、陣内に
ジリニエイユは何もできないながら、
己の知らない新たな知を前に、
さすがに
ジリニエイユを除く、あらゆるものが
≪この子は
結界で身を
ジリニエイユは歯ぎしりしながら、魔力の
≪仕方がありません。その者は
少なくとも、現段階では相手が一枚も二枚も上手だ。知力も魔力も遠く及ばない。ここまでの相手に
己を高めるためなら、何だってしよう。そして、手段も選ばない。
≪賢明なその方だ。
≪ま、待たれよ≫
藍碧の魔力はさざ波となり、次第に小さくなっていく。
ジリニエイユは
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