第285話:二人の駆け引き 後編
オントワーヌもジリニエイユに負けず
相手の話術に
そのためには、口から
「私の過去など、
口調から分かる。平然としているようで、この話題から無意識のうちに遠ざけようとしている。触れられたくない部分があるのだろう。
オントワーヌは
「そうですね。ここにはシュリシェヒリの皆さんも
しばしの沈黙、ジリニエイユが明らかに
同胞であろうと、賢者であろうと殺すことにいささかの
今のジリニエイユの力をもってすれば、相手が誰であろうと負ける気はしない。先代賢者であろうとも、
「ジリニエイユ殿、言うなればここまでは序章にすぎません。本当の戦いは、まさにこれからです」
天を指差すオントワーヌの意味するところを誰もが理解している。当然、ジリニエイユも同じだ。彼の狙いの一つがそこにある。
「その幕を貴男と私の戦いをもって開けてもよいのですよ」
オントワーヌの言葉に刺激されたか。ジリニエイユの中にいる
それをも見越していたか、本能が制御を上回る前にオントワーヌは動いた。
「私が真っ先に何をすると思いますか」
パレデュカルを封じている白い箱を右手のひらの上に
「私が一言
あれほどまでに高まっていた
「それは私も困りますね。オントワーヌ殿、どうかその白い箱を私に
ジリニエイユから感じられる口調は平静そのものだ。大きな
「ええ、構いませんよ」
キィリイェーロを筆頭に、誰もが
それから一呼吸、ジリニエイユに口を
「ただし、条件があります」
「条件、ですか。私が
叶えられない条件などないだろう。そもそも、聞いたところでジリニエイユには
「何、簡単なことですよ。貴男がフィヌソワロの里で封印して連れ去ったものを返してほしいのですよ。それと引き換えなら喜んで」
即答で返ってくる。
「それは無理というものですね。あれは私にとって必要不可欠なものです。おめおめと渡すわけにはいきません」
分かっていたことだ。交渉は決裂した。
これにより、白い箱に封印されたパレデュカルはオントワーヌのもとに、黒き
「残念ですね。仕方がありません。この白い箱は」
右手のひらの上の白い箱がオントワーヌの魔力で包まれていく。ジリニエイユでさえ動く余裕はなかった。
"Perrva-sdiynus."
オントワーヌの
「してやられましたね。やはり貴男は
すぐさま気配を
「
オントワーヌに対する口調とは全く異なる。そこには
「そこの愚弟同様、お前たちはオントワーヌ殿に救われただけだ。一時的にな。次はない。
冷酷無比に
(完全に離れましたね。それにしても、あの感情だけは残されているのですね)
「さて、これでこの場も安全です。と言っても、残念ながら戦いはいささかも待ってくれません。皆さんはできうる限り回復に務め、
「オントワーヌ様、我らのためにご
頭を下げてくるトゥルデューロとプルシェヴィアに
「それで、あの白い箱は、いったい」
聞いてよいものかと思いつつ、聞かずにはいられない。
「急ぎ行かなければならない場所があります。その話はまた後ほどに」
告げるなり、オントワーヌの姿は失せていた。この地に来た時と同様、魔術の
「俺たちなど本当にまだまだだな。あまりに非力すぎる。パレデュカル一人相手にこのざまだ。もっと力をつけなければ」
確かに、この戦いは完全にシュリシェヒリの敗北だった。オントワーヌがいなければ全滅
その中で唯一の
プルシェヴィアはラナージットを抱き締めながら、この
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