第250話:ヨルネジェアの想い
妖精王女の
七つの色で
その光景を前にして、
「何だ、この
ダリニディー森林でのあの時とは様相が異なる。妖精王女がその力を直接行使すれば、
今は状況がそれを許さない。だからこそ、七色に織られた光の束の力をもって栗色の身体を覆い、人化への再構成を
全身を覆う栗色の体毛が失せ、その代わりに彼女の
深い呼吸を一つ、細くも優美な右腕を天に向けて
全身を包んでいた七色の光の束が右腕に導かれるかのごとく一点に集約、
光珠が織り成す幻想的な光景は、緊迫した戦いの場とは思えないほどの
"Preji-si, abykze. Udielmi sílluvasosti."
ヨルネジェアの言霊が光珠と反応、七色の光が
最初に
次いで
左右の羽の両端に
さらに
すなわち、これこそが妖精の弓、銘を
ヨルネジェアには最も重要な、最後の仕上げが残っている。弓だけあっても、矢がなければ意味がないのだ。弓と矢は切っても切り離せない。
ルブルコスは
≪妖精王女殿よ、
≪貴男の疑問は当然ね。
ルブルコスの疑問は即座に
ヨルネジェア同様、彼女もまた強く願ったのだ。ヨルネジェアのために、イプセミッシュのために。かつて力を貸し与えた者を見守るためにだ。
弓と矢、二つのものを構成するに際して最適な色を選び出す。それが弓に七色、矢に一色という配分だった。
妖精王女は七色を用いて妖精の弓を創り上げ、
ヨルネジェアには誰よりも強い想いがある。それを理解している妖精王女からの
最後の一色たる
まさしく
"Zdeye manask vzecno pireziostt. Pojyd kerene, osviet zllatisy."
ヨルネジェアの発する音が
ヨルネジェアは
右腕は一直線に大地と平行、左脚を引いて完全に半身の状態だ。二度の深呼吸、つがえた矢の矢尻を軽くつまむとともに
全ての
それらを手にして構えるヨルネジェアの何と美しいことか。ルブルコスでさえ思わず
≪ヨルネジェア、上出来よ。今こそ貴女の想いを載せて、
妖精王女の声はヨルネジェアに届いている。胸が熱くなる。
あの時の恐怖は今なお消えず、心の奥底に
ダリニディー森林の最深部、妖精王女のもとまで
彼もまた記憶の魔女としての妖精王女に会うがため、辿り着いた一人だった。身なりや口調から、彼が貴族だとすぐに分かった。自身を傷つけたのも貴族、それ
最初は全く意識もしていなかった。突き放すような口調で必要最低限の会話しかしなかった。おろおろしながらも丁寧に礼を述べ、頭を何度も下げてくる彼を見て、何とも不思議に、また面白くも感じたことを覚えている。
妖精王女の
そこにあったのは深く痛ましいまでの悲しみだった。これほどの悲しみを抱えていては、いずれ心が
≪イプセミッシュ、貴男はこうして生きている。心に宿った深い悲しみは癒されたのかしら。今こそ私の想いを届けるわ≫
ヨルネジェアが両の瞳をゆっくり閉じる。心を
"Srileejta-krojez."
≪早く私のもとに帰ってきなさいよ、イプセミッシュ≫
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