第167話:ワイゼンベルグの力
ヨセミナは、ワイゼンベルグが敗れるとは
ドワーフ属にとって、三大流派の中でツクミナーロ流は論外として、それに匹敵するぐらいヴォルトゥーノ流とは相性が悪い。
彼らの特徴として幾つか挙げるなら、
それらを
あえなく
それからというもの、ワイゼンベルグはヨセミナを女神と
何度も
その
「
ワイゼンベルグにとって、ヨセミナの言葉はどのような内容でも至上だ。
「我が女神よ。万に一つも、そのような姿をお見せすることはございません」
背を向けたままの
(ほうほう、なかなかの膂力ではないか。衝撃を完全に殺しきれなかった。
後退していたワイゼンベルグが、すかさず距離を詰める。
豪速の風が走る。
行った。勢いを
結果として、
「やるな、お主。
ワイゼンベルグの
「ほうほう、先ほどの一撃といい、お見事ですよ。食うには適しませんが、その腕前だけは欲しくなりました」
戦いの
「互角だと思うなよ」
片手持ちから両手持ちへ。ワイゼンベルグは戦斧に左手も添えた。勢いのままに、噛み合った二本の剣を弾き飛ばす。
(随分と剣術に慣れているな。相応の剣士を複数食ったか。あの二刀使い、どこかで見た記憶が)
ヨセミナは二人の戦いを注視している。今のところ、ほぼ互角だ。どちらも本来の力は見せていない。
人と
それでも、ヨセミナはワイゼンベルグの勝利を
(見せてみろ。お前の真骨頂をな)
後方へ飛んだ
「少しばかり本気を見せましょう。貴男一人に時間を割くわけにもいきませんのでね」
空気が突如として変わった。
大地に転がる様々な岩石が浮かび上がり、それらが
「俺も
売り言葉に買い言葉の応酬だ。
「
嫌な予感がする。ワイゼンベルグは
腹にめり込んだ二本の剣を引き抜き、振りかぶる。剣身に隙間なく岩石が
「終わりです。
大小様々な岩石が思い思いの方向から飛来する。空中のワイゼンベルグに逃げ場はない。
「甘い。その程度の攻撃、俺には通用せぬ」
振りかざした両刃戦斧を身体を
戦斧と岩石、勝ったのは戦斧だ。岩石を
ワイゼンベルグが手にする両刃戦斧は、ただの戦斧ではない。ドワーフ属の鍛冶匠が最高技術の
二つの刃の根本には小さな穴が一つずつあり、美しい鉱石がはめ込まれている。魔鉱石だ。ドワーフ属の中でも、ごく一部の優れた魔術付与師のみが生成できる魔鉱石には様々な魔術が付与されている。
今、ワイゼンベルグの戦斧には
「毒にまみれた岩石を武器にしたところで無駄だ。俺を誰だと思っているのだ」
二撃目、三撃目と立て続けに同様の攻撃が来るも、結果は明白だ。解き放たれた岩石の全てが撃ち落とされ、破砕されていく。
大地に降り立ったワイゼンベルグの手には両刃戦斧が握られている。迎撃を終え、持ち主のもとへと戻ってきたのだ。
「ほうほう、面白い武具をお持ちですね。この程度では通用しませんか。いささか見誤っていましたね。
いつの間にか、立場が逆転しつつある。互いに余裕があるように思わせている。実のところ、ワイゼンベルグは全く底を見せていない。一方で、
「私のこの姿を見て生き残った者は、
岩石に
(さて、どうするのだ、ワイゼンベルグ。お前に見破れるのか)
大地に静かに立つワイゼンベルグは、岩石に擬態、いや同化した
ヨセミナが、ワイゼンベルグを連れて来た理由はただ一つだ。直弟子だからではない。ヴォルトゥーノ流序列筆頭だからでもない。彼がドワーフ属だからだ。
ワイゼンベルグにとっての本番もここからなのだ。
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