第135話:セレネイアの将来
≪違うわよ、ヴェレージャ。セレネイアが持つ
厳密に言えば、レスティーが創り上げた剣ではない。フィアには
≪それ
ヴェレージャにしてみれば、いささか信じ
≪少々理解に苦しみます。私が
フィアはヴェレージャを一度視ている。だからこそ、彼女の力量も把握できている。
≪そのとおりよ。よく視ているわね。ならば、ヴェレージャ、貴女なら
一瞬、考え込む。
ヴェレージャの有する魔力量なら、完璧にとはいかないものの、十分に使いこなせる可能性はある。問題は剣技だ。剣を振るう以上、扱ううえでの最低限の基本動作が必要となる。ヴェレージャはその剣技が無残なまでに駄目なのだ。
≪魔力面だけなら、問題ないかと。私は剣技が全く
レスティーが、セレネイアをはじめとする三姉妹に
≪よく理解できているわ。だからこそ、
ヴェレージャに対するフィアの言葉はそこで終わりを告げる。続けてビュルクヴィストに直接話しかける。
「ビュルクヴィスト、もうよいわね。勝手に連れ出してきた手前、セレネイアをファルディム宮まで連れ帰るわ」
ビュルクヴィストは
「次はアーケゲドーラ大渓谷よ。貴方たち、分かっているでしょうね。その非力さのままでは、
フィアの最後の言葉が
セレネイアが三人の表情を
「フィア様、何もそこまで
フィアの言葉は、辛辣かつ容赦がない。決して相手を
「構わないわ。人は弱い生き物なの。あの程度のことで精神的に駄目になるようなら、
フィアの言いたいことも分かる。もう少し言葉を選んでもよいのではないか。それが、
「貴女もよく覚えておきなさい。どれほど逆境に立たされようとも、跳ね返すだけの
フィアの
(この娘は、こういうところが
フィアは内心で苦笑を浮かべつつ、さらに言葉を
「セレネイア、私の愛しのレスティーから
僅かに頭を下げるフィアの姿が何とも新鮮に映る。セレネイアは驚きの表情をもって見つめている。不機嫌そうに顔を
「何よ、その顔は。まあ、よいわ。貴女がアーケゲドーラ大渓谷の戦いで
今回、セレネイアはフィアとビュルクヴィストの手助けを受けて、
「貴女が放った威力は、本来の威力に比べて、どの程度のものだと思うかしら」
小首を
「およそ」
そこまで答えたところで、フィアが機先を制した。
「後にしましょう。そろそろ戻らないと。行くわよ」
なぜ、最後まで聞かなかったのか。セレネイアには分からない。不安げな表情でフィアを見つめる。答えは返ってこない。
お構いなしに、フィアの姿が次第に薄れていく。セレネイアの周囲に風が集い、優しく包み込んでいく。セレネイアは慌ててビュルクヴィストたちに視線を向けた。
「皆様、アーケゲドーラ大渓谷でお会いいたしましょう。では、お先に失礼いたします」
今度は王族らしからぬ、セレネイアが誰にでも見せる気さくな態度で別れの言葉を発した。
「セレネイア殿、第一王女たる貴女がアーケゲドーラ大渓谷の戦いに赴くというのですか」
驚きの
王族の者は、ややもすれば安全地帯に真っ先に逃げ込みがちだ。ゼンディニア王国だけは、例外中の例外と言えるだろう。
ヴェレージャからしてみれば、
しかも、
「はい、もちろんです。王族たる私が行かずして、誰が行くというのでしょう。民を守ることこそ、王族の務めです。もはや、
セレネイアの言いたいことは、二人にも即座に理解できた。
敵はジリニエイユ、パレデュカル、そして
「両王国とも、
強い瞳をしている。ヴェレージャも横で聞いているディリニッツも、ようやくにして確信できた。
(これがラディック王国が誇るセレネイア第一王女なのね。他の王族とは、明らかに一線を画しているわ)
すかさず、横から口を
「セレネイア殿、貴女は王族、しかも重要な地位におられる。アーケゲドーラ大渓谷に
問いかけに、迷いなく
「微力に過ぎないことは、私自身が重々承知しています。それでも、私には赴く義務があるのです」
セレネイアの決意を前に、問うたディリニッツはもちろん、ヴェレージャでさえ言葉を失っている。
「時間よ、セレネイア。戻るわよ」
フィアの言葉とともに姿が消えていく。完全に消え去る寸前だ。こちらに向かって頭を下げるセレネイアの姿が何とも印象的だった。
「どうでしたかな、セレネイア第一王女は」
「どうにも
妹とは決定的に違う部分がある。ヴェレージャから見ても、セレネイアはいかにも
「十五歳という
ディリニッツが疑問を感じたのか、ヴェレージャに尋ねた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます